総合情報サイトAll Aboutで「食と健康」ガイドを務める食の専門家の南恵子さんに伺った「冬の食養生」の第2回目は「ゆず」を使ったレシピです。
この時期にお店に出回るゆずは、皮を使うことを前提として栽培されているため、輸入レモンなどと違い、防腐剤やワックスがかけられていることもなく、安心して皮から実、そして種までを存分に使えます。お雑煮に皮を削いで入れて吸口にしたり、おひたし、煮物などに添えるとそれだけでおいしさが引き立ち、日本の誇るハーブのひとつと言えそうです。
そのゆずですが、果汁でポン酢を作ってみたり、日本酒や焼酎で化粧水を作るなど、初夏の梅仕事に対して冬の「ゆず仕事」を恒例にしている人も多いようです。南さんが以前に監修された本(じぶんでつくるクスリ箱 ブロンズ新社)の中でも薬酒の1種として「ゆず酒」や、絞ったり皮を使うよりもより成分を摂取しやすい方法として「はちみつ漬け」についても紹介されています。
おなじみの「ゆず茶」をカンタンレシピで!
韓国ブームとともにやってきて、今ではすっかりカフェや家庭にも定着した「ゆず茶」ですが、あのジャムのような瓶詰を「重いなあ」「ちょっとお高いのよね」と思ったことはありませんか? お湯に溶かすだけで手軽においしく贅沢にゆずを楽しめるので、冬でなくても真夏でもソーダで割って飲むのが大好きなのですが、いかんせん常備できるほどの余裕がなく、お土産にいただいたものを使いきったあとは自分で買うことはほとんどありませんでした。
しかし、南さんからこのゆず茶を手軽に楽しめるレシピを伝授いただきました。
カンタンゆず茶レシピ
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よく洗い、絞ったあとのゆずを適当な大きさに切る。
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煮沸して充分殺菌した瓶に1を入れる。
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ゆずがひたひたにかぶるくらいのはちみつを2に入れる。
「どれくらいの時間、漬け込めばいいですか?」ゆず茶の深い味わいから、思わずそう聞いてしまったのですが、南さんは「1時間くらいで皮と残りの果肉から水分が出てくるから、数時間後か次の日にはもう十分おいしくなりますよ。」と、さらりと答えられました。ええっ……そんなに簡単なモノだったの? それにしては市販品はお値段が強気だなぁ、とか色々所帯じみたつぶやきが頭をよぎってしまいましたが……韓国ゆず茶は、作り方としてゆずをつけるだけでなく発酵させるものもあるそうで、また本やネットで公開されているレシピではジャムのように煮込むものがほとんどです。しかし、驚くなかれ!シンプルなこれだけの工程でも充分本格的なゆず茶を味わうことができました。
そして、こちらの写真は5日目のものです。
はちみつを入れた半日後にも飲んでみたのですが、時間が浅いとはちみつの風味が強いままで、どちらかと言えば「ゆずはちみつ」という印象です。ところが4日経つと今度は、ゆずの風味が勝ってくるため、ほとんどはちみつの味は感じません。市販されているゆず茶に近づけるためには4〜5日以上必要かもしれませんが、このあたりは清潔なスプーンで少しずつ味見をしながら「好みのタイミング」を見つけるといいですね。
また、お湯に溶かすだけでなく、有名カフェチェーン店のメニューにあるように、紅茶など好きなお茶に溶かして飲むのもオススメです。
それにしても冬至のゆず湯といい、このゆず茶といい、湯気とともにふんわりと漂うこの香りに包まれると身も心もとても安らぎ、そして温まります。実は、ゆずに含まれる香り成分オーラプテンには免疫効果を高め、ウイルスなどの感染症に対する抵抗力があがることが、報告されています。昔の人は、そのことを自らの経験で知っていたため、冬の暮らしに役立てていたのでしょう。
お茶にお酒に化粧水……人気のゆずの効能は?
ところで、お料理やドリンクだけでなく、入浴剤やコスメにも大人気のゆず。ここでは、その効能についても少しご紹介しましょう。
まず果肉にはビタミンCとクエン酸が豊富。特にクエン酸はみかんの3倍。そして皮にはリモネンが含まれており、抗菌作用、免疫力の強化、リラックス効果などがあるようです。そして、絞ったときに驚くほどたくさん出てくる種には、リモノイドが含まれています。これは、柑橘系に含まれる成分で抗がん、抗アレルギー作用があるとのこと……なるほど!ならば「種を使ったレシピもぜひ知りたい!」と思い、最後に教わったのが「ゆずタネ醤油」です。
とろみと香りがはんなり……ゆずタネ醤油
ゆずタネ醤油レシピ
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よく洗ったゆずの種の水分をペーパーなどでふき取る。
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煮沸して充分殺菌した瓶に1と醤油を入れる。
写真でわかるでしょうか? 少しとろみがついている、こちらが南さんの作られた「お醤油にゆずの種を入れただけ」の「ゆずタネ醤油 」です。カンタンゆず茶と同じくこちらも「すぐにできますよ」とのことだったので、私も実際に試してみたところ、ひと晩でとろりとした趣のある料亭のお醤油? が出来上がっていました。味見をすると、ほんのりゆずの香りはしますが、酸味はありません。ですが、お醤油の塩辛さの角が取れて、まろやかに感じました。こちらの用途は「湯葉とか鯛の昆布〆なんかにちょっと乗せるとおいしいですよ。」とのこと。とにかく簡単に作れるので、最近はやりの「ジェル系調味料」として用途はさまざまに広がりそうです。我が家では、湯豆腐にとろん! とひとさじ乗せていただきましたが、豆腐の大豆の甘みが引き立ち、絶品でした。この「とろみ」成分は、ペクチンという食物繊維だそうです。このとろみとゆずの風味のおかげで、少ない分量でも味わい豊かに楽しむことができました。ゆずタネ醤油を使えば、普通のお醤油を使うよりも塩分量が減らせそうです。
南さんに教わった、日本人が古くから大切に伝えてきた「養生の心」を日々の生活に取り入れて、この冬を元気に乗り越えたいですね。
お話を伺ったのは……南恵子さん
NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、エコ・クッキングナビゲーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演等を中心に活動。
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