老後資金2000万円問題
「新型コロナウイルスが世間を騒がせる少し前の2019年に『老後資金2000万円問題』が話題になったことを覚えていますか?
これは、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告が発端だったのですが、このことがきっかけとなり老後資金について考える人が増えました。データによると、高齢夫婦無職世帯でも毎月、54,519円の赤字となり30年では約2000万円が不足するという計算になります。しかも、この数字はあくまでも持ち家の夫婦を対象にした数字なので賃貸の夫婦であれば、これ以上の金額がかさむことになります」
では、いったいいくら貯蓄があれば安心して老後を過ごすことができるのでしょうか。
その答えは定年後の収支バランスにあると長尾さんはいいます。
老後資金=毎月の不足分×12か月×30年!
「自分が何歳まで生きるかということは、誰にもわかりません。ですから、老後資金を計算するときは平均寿命に長めの年数をプラスした、95歳で算出をします。65歳まで働くとすると、95歳までは30年間ですね。とすると老後資金=毎月の不足分×12か月×30年です。そして、自分の老後資金を出すためにはキャッシュフロー表を作ることをおすすめします。要するに、自分のお金の流れを『見える化』するということです。収入から支出を差し引いてお金がどのくらい残っているか? という収支を表にするのです」
確かにお金の流れが見えていれば、ある日突然使えるお金がないということにはなりませんね。
そして長尾さんはこのキャッシュフロー表を作成する際に
- 老後の収入 給与年収、公的年金、企業年金
- 老後の支出 生活費など
- 老後の資産 退職金、老後資金、運用している有権証券の評価額など
の3つが必要だとも教えてくれました。
固定費の見直しは効果絶大
次に老後資金の寿命を延ばすためにはどうしたらよいのかを伺いました。それは、ズバリ暮らしのダウンサイジングだそうです。簡単に説明すると、生活を見直して支出を抑えるということです。では、具体的にどんなことを心がければいいのでしょうか。
「節約のポイントは、小さな金額にテコ入れをするのではなく、大きな部分にメスを入れることです。たとえば、保険や住宅ローン、携帯電話の支払いなどの見直しです。また、車を所持している方であれば、ガソリン代や駐車場代、自動車保険料に車検費用、税金なども見直しの対象になります。こうした大きな支出を見直すことで暮らしのダウンサイジングができますよ」見直しも最初は大変かもしれませんが思い切ってやってしまえば持続可能な節約となります。この機会に、家族でどの部分にテコ入れが必要か話し合ってはみませんか?」
キャッシュレス化やポイ活も強い味方
ここまでは定年になる前、もしくは定年になってからの見直し方法についてお話してきました。ここからは、定年までもう少し時間のあるsaita世代が、今日からできるお金の見直し方法について教えてもらいました。皆さんは普段、スーパーでお買い物をする際に現金でお支払いをしますか? よく行くお店のポイントは貯めていますか? 最近、よく耳にするポイ活も塵も積もればと長尾さんはいいます。
「これからの時代はキャッシュレス化に徹底し、なおかつポイントを貯めることをおすすめします。貯まったポイントで商品を購入することは当然できますし、お店によっては現金化されるところも。マイルに移行したり、運用に使ったりもできます。また、このコロナ禍において『地域経済応援券』を発行している地域も多いので、お住まいの地域でも発行されていないか確認してみてください。知らなければなにも得はしませんが、知っていればかなり得になることがあります。新しい情報にも耳を傾けてください。そして日々の買い物で楽しみながら得をしてください」
住宅ローン、教育費、老後資金3つの苦労も備えておけば大丈夫
「一般的に40代中盤から後半の人たちには人生の3大支出がのしかかってきます。それは、住宅ローン、教育費、老後資金です。老後資金はまだ意識しなくてもいいと思うかもしれませんが、近年では晩婚化が進んでいるのでこの3大支出が一気に押し寄せてきます。また、若くして結婚した方でも住宅ローンと教育費に関して、しっかり計画をたてて行動しなければいずれ老後資金にしわ寄せがきてしまいます。ですから、家族でお金のことについて普段から話し合っておくことが大切です。そして働けるうちは働くことを強くおすすめします。60歳から10年働くことで老後資金を貯めることも十分可能です。そのためにも普段から自分にとって有益になる情報に耳を傾け、健康でいることが大切です」
いかがでしたか?定年後も健やかに生活するためには今からお金の見直しが必要だということがわかっていただけたのではないでしょうか。そのためには「いまから」家族で将来について話し合っていくのがオススメです。
【教えてくれたのは】長尾義弘さん
ファイナンシャルプランナー
AFP、日本年金学会会員。大学卒業後、いくつかの出版社勤務を経て1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆している。『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)他、監修本の『NEWよい保険・悪い保険2021年版』(徳間書店)も発売中。
家族で話し合いのきっかけになる「定年の教科書」
著者:長尾 義弘、福岡 武彦
出版社名:河出書房新社