『定年の教科書』の著者であり、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは定年後に「やることがない」状態はお金や健康の不安よりも大きな問題だといいます。私たちsaita世代にも何十年後かには確実に老後が訪れます。その時に生き生きと生活するためには、普段からどんなことに気を付けておけばいいのでしょうか。
定年後の時間は働いていた時間よりも長いって知っていますか?
定年後、今までにできなかった〇〇をはじめてみたい、学校に通って学び直したいなど、意欲にあふれている人ならば問題はありません。さらには、生活をしていく上での十分な貯蓄があればなお安心でしょう。しかし、ただ漠然と「ゆっくりしたい」と思っているだけであればちょっと心配です。
実は定年後の時間は働いていた時間よりも長いことに気付いていますか?
22歳から65歳までの43年間、働いていた時間は8万6,000時間。それに対して、定年後から85歳までの20年間の時間は10万2,200時間なのです。圧倒的に定年後は時間があることがわかるかと思います。では、約10万時間もの時間を「ゆっくりする」だけでいいのでしょうか。
「実はお金と健康、生きがいはリンクしています。生きがいが見つからないと、人は精神的に不安定になります。いずれ健康問題に発展しかねません。健康が維持できなくなると、通院や介護が必要になってくるでしょう。そうなると、お金の心配にもつながってしまうのです。ですからお金、健康、生きがいのバランスが崩れないように過ごすことが大事なのです」
定年後も働くということ
「老後資金が不足している人は、定年をしたからといってものんびりしているわけにはいきません。資産寿命をのばすためには、否応なしに働いてお金を稼ぐ必要があります。老後資金に余裕がある人も、できるだけ働いた方がいいと私は考えています。しばらくはこれまでの貯蓄で幸せな時間を送ることができるでしょう。しかし、そんな生活も数が月くらいしか続きません。段々と楽しみや生きがいを感じなくなっていくと思います。ですから定年後、再雇用の道があるのならば、その道を選択することをおすすめします。もしくは、これまでの仕事とまったく違う仕事も良い刺激になるかもしれません。お金のためだけではなく、社会と接点を持つということです。大事なことは自分が社会から必要とされているという生きがいを感じることです。毎日でなくても週に3日だけの出勤でもいいと思います。外に出れば気分も晴れますし、働くことで健康も維持できます」
第二の人生は「きょういく」と「きょうよう」
「前述したとおり、就労し、賃金を得ることは将来の蓄えにもなりますし、健康維持にもつながります。しかし、仕事をする以外にも生きがいは見つけることができます。たとえば、地域のボランティア活動や、カルチャースクールやDIY、もしくは学び直しもいいでしょう。とにかく、第二の人生にはきょういくときょうようが大事です。これは教育と教養ではありません。『今日いくところ』と『今日、用事がある』の今日行くと今日用です。毎日、ただなんとなく生活するのではなく、自分のスケジュール帳に予定が入っているということです」
なるほど、きょういくときょうようはとても大事ですね。目的を持って生活をすることは、何歳になっても大事なことがわかります。定年や老後なんてまだまだ先のこと—
40代であればそう考えてしまうことも無理はありません。しかし、いずれ自分の身にもお金、健康、生きがいの問題は訪れます。もしくは現在、両親や人生の先輩がこの問題に直面しているかもしれません。定年前の人が知っておくべき知識が凝縮されている一冊です。
40代からでも早すぎることはありません。ライフプランニングを立てるために強い味方になってくれるでしょう。人生の教本としておすすめします。
【教えてくれたのは】長尾 義弘さん
ファイナンシャルプランナー
AFP、日本年金学会会員。大学卒業後、いくつかの出版社勤務を経て1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆している。『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)他、監修本の『NEWよい保険・悪い保険2021年版 』(徳間書店)も発売中。
「定年の教科書」は一読の価値あり!
長尾 義弘 福岡 武彦
出版社名:河出書房新社
定年後の生活の悩みのタネとなる「お金」「健康」「生きがい」。この3つの問題点を三位一体で捉え、解決の要点を教授。安心・安全の「第2の人生」を送るために必要な知恵と方法がわかる!