世界初の炭酸ガス入り入浴剤『バブ』花王担当者が語る“ヒットの裏側”

家のこと

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2021.12.15

温かいお風呂が心地よい季節になりました。お気に入りの入浴剤を入れたお湯につかるのは、何よりのリフレッシュですよね。家庭用入浴剤としておなじみの花王の『バブ』は、昨年、過去最高の売り上げを達成しています。『バブ』誕生秘話から、人気商品の傾向、意外と知られていない正しい使い方まで、花王株式会社の担当者に教えてもらいました。

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教えてくれた人

花王株式会社 シニアマーケター・羽部俊之さん

化粧品、スキンケア・ヘアケア、ヒューマンヘルスケア、ファブリック&ホームケアと、消費者向けに4つの事業分野で“きれい”を満たすものづくりを展開。創業以来、消費者の立場にたった“よきモノづくり”を通じて、人々の豊かな生活文化の実現に貢献することをめざす。

『バブ』は世界初の炭酸ガス入り入浴剤

――バブは昨年、1983年の発売以来、過去最高の売り上げを記録したそうですね。バブにもさまざまな種類がありますが、最近とくに人気のものはありますか?

最近とくに人気が高いのが、『バブ メディキュア』シリーズの4商品です。

バブ メディキュアシリーズ出典:www.kao.co.jp

こちらのラインナップは、《足腰などのつらい疲労・肩こり》《手足のつらい冷え》《スポーツなどの身体疲労》《スカッと汗をかいて疲労回復》と、お客様の個別ニーズにあわせて展開しています。なかでもとくに人気なのが、肩こり・腰痛がつらい方向けの『バブ メディキュア ほぐ軽スッキリ』。コロナ禍に入って、自分の身は自分で守る、セルフメンテナンスの意識が高まっているなか、よりからだに効果がありそうな高付加価値の商品が売れています。

――改めて、バブ最大の特徴とは?

炭酸ガスによる温浴効果です。入浴剤に炭酸ガスを配合したパイオニアとして、炭酸ガスにはこだわって商品設計しています。

――バブが発売された1983年当時、ほかに炭酸ガスが入った入浴剤はなかったんですか?

そうですね。入浴剤の歴史は意外と古く、明治中期から、生薬を配合して布袋に入れたものがあったといわれています。1987年に日本初の入浴剤が生まれ、その後、家庭での入浴習慣が根付くとともに、入浴剤でお湯に色や香りをつけて楽しむものとして普及しました。
 当社が入浴剤市場に参入したのは、1983年です。「炭酸ガス入浴剤」という新しいアイデアのもとに『バブ』が誕生しました。じつは、炭酸ガス入りの入浴剤は、『バブ』が世界初なんですよ。

発泡イメージ出典:www.kao.co.jp

――世界初! とても画期的なアイデアだったんですね。どんなことにヒントを得て開発が始まったのですか?

医薬品の研究員が研究テーマを考えているときに、たまたま「炭酸泉の効用」についての論文を読んだことがきっかけです。論文には、「炭酸ガスが皮膚から吸収され、血行が促進されて健康によい」ということが書かれていました。ちょうど私たちが入浴剤開発に取り組んでいた時期だったこともあり、この仕組みを入浴剤に活かせないかということで開発が始まりました。

――開発はスムーズに進んだのですか?

当初は炭酸泉の効用について、「本当に効果があるの?」という声が社内にもあったそうです。そこで研究員は、上層部にプレゼンを行いました。さら湯を入れたビーカーと、炭酸ガスを溶かしたお湯を入れたビーカーを用意して、左右それぞれの手をお湯につけてみせたところ、炭酸ガスを溶かしたお湯に入れた手は赤くなったのです。それで上層部が効果を納得して、発売に踏み切ったと聞いています。

38年間のロングセラー商品も! 『バブ』改良の歴史とは?

――『バブ』誕生の裏には、研究員の熱心なプレゼンがあったんですね。1983年の発売開始から現在まで続いている商品はありますか?

『バブ ゆずの香り』と『バブ 森の香り』です。どちらも38年間お客様から愛されているロングセラーです。

バブ『ゆずの香り」出典:www.kao.co.jp左が1983年発売当初、右が現在の『バブ ゆずの香り』。発売以来、38年間愛され続けているロングセラー。

38年間継続販売していますが、時代のニーズにあわせた細かなリニューアルは行っています。たとえば忙しくて湯船にゆっくり浸かる時間がとれない方に対し、短時間の入浴でも温浴効果がアップするようにしたり、温泉成分を配合したりしています。
『バブ』の形状も、じつは少しずつ変化しているんです。はじめは比較的、扁平な形だったのですが、炭酸ガスをお湯全体に均一に、高濃度に溶け込ませるために、1995年から中央に大きな“くぼみ”をつけました。現在は、より早くお湯に溶けるように、中央に渦巻き状のくぼみがついています。

『バブ』形状の変遷出典:www.kao.co.jp左が2017年改良前までの、右が現在の『バブ』の形状。中央のくぼみが渦巻き状になり、より早く、より均一に炭酸ガスがお湯に溶け込むように改良された。

――『バブ』がお湯により早く溶けるように改良されたんですね。ブクブクが早くなくなってしまうのは、少し名残惜しい気もしますが……。

泡が出ているようすを眺めるのが楽しいという声はよくいただきます。じつは、大きなブクブクの泡の何倍もの微細な炭酸ガスがお湯には溶け込んでいて、そのお湯につかることで、からだを温める効果が得られるんです。

――目に見えない細かい泡がポイントなんですね。てっきり、ブクブクした泡に効果があるのかと思っていました。

微細な炭酸ガスは目には見えませんが、お湯にはしっかり溶け込んでいます。炭酸ガスによる温浴効果をもっとも享受するには、『バブ』を溶かしきって、全体を混ぜてから入るのがおすすめです。

――溶かしながら入るよりも、「溶かしきったあと」がいいんですね。

そうなんです。炭酸ガスの温浴効果は、お湯に溶けてから2時間ほど持続します。2時間以内なら、順番に入ってもご家族みんなで効果を楽しんでいただけますよ。

お湯に溶かしながらよりも、お湯に溶かしきってから入浴するほうが、より高い効果が得られるとは驚きですね。羽部さんによれば、コロナ禍に入って家庭での入浴状況に大きな変化があったそうです。次回、気になる最近の入浴事情と冬のおすすめの入浴法について伺います。

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