「お金の貸し借りは良くない」と知っていても……
「お金の貸し借りは良くないことだよ」とお子さんに教えたことがある親御さんは意外と多いのではないでしょうか。
しかし、子どもの時にお金の貸し借りについてしっかり教えてもらってきたはずの大人でも、大人になってからお金のトラブルに巻き込まれてしまう人も……。
実は、大人でもはまりやすい「お金の貸し借りによるトラブル」。実際にあった怖い話と一緒に、ぜひお子さんと一緒に改めて「お金の貸し借り」について考えてみてください。
お金の貸し借りは「優しさ」と「弱み」から
これまでたくさんの家計相談をお引き受けしてきましたが、大人になってから「お金の貸し借り」でトラブルを起こしてしまう人には大きな特徴があります。
それは「優しさ」と「弱み」につけこまれているということ。
「私たち友達だよね?」
「本当に困っているんだ」
「大丈夫。悪いようにはしないよ」
「本当にありがとう。おかげで助かったよ」
「お金の貸し借りは良くないこと」と知っていながら、友達や親類にお金をつい貸してしまう人は、言葉巧みに「この人にならお金を貸しても大丈夫ではないか」と思わせられ、相手を安易に信用してしまうのです。
人を疑うことのない、困っている人を見捨てられない優しい人、友達から必要とされることで役に立てたと喜びを感じてしまう人、頼まれたら断れない人は要注意。
相手を信用してお金を貸したとたん、手のひらを返したような冷たい仕打ちをされ、つらい思いをしてしまう人を私は数多く見てきました。
お金の貸し借りに「例外」を作らない
お金の貸し借りによるトラブルに巻き込まれてしまう人は、「この人なら」とお金の貸し借りに「例外」をつくってしまう傾向があります。
「今までお金のトラブルとは無縁だった」という人でも、生涯でたった一人、信用してお金を貸してしまったことにより、取り返しのつかないような額の借金を背負わせられて一生を台無しにしてしまう人も。
会うたびに「1万円貸して」というような友達なら、信用できないと警戒する人も多いでしょうが、いつも自分を友達として大切にしてくれて、人間的にも信用できそうな人から言葉巧みに声をかけられたがために、だまされていることに気づかず、断れなかったという人も多いのです。
「お金の貸し借りは良くない」以外にも伝えるべきこと
お金の貸し借りについて子どもに教えるなら、ただ「貸し借りは良くないこと」と伝えるだけでなく、「その結果どのような怖いことが起こるのか」「大切な友達のふりをしてお願いされたらどうするか」ということも一緒に伝えなければ意味がないと私は考えています。
「だまされていることに気づかなかった」というほどに、相手は巧みに声をかけてきます。
辛い経験をした人や友達が少ない人、自己肯定感の低い人は、自分の話を親身になって聞いてくれる人に心を開きやすく、誤解を恐れずに言えばまさに「コロッと」だまされてしまいます。
あとからだまされたと気づいても時すでに遅し、ということも多く、もっと早く誰かに相談していればと後悔することになるのです。
子どもにも「お金を貸して」と言われたら、貸す・貸さないを判断する前に、必ず親や専門家に相談するように伝えておきましょう。貸した後から相談するのでは遅いということを念押ししておいてください。
「立て替え」と「貸し借り」を混同しない
遊びに行ったときに思ったより費用がかかり手持ちのお金が足りなくなった友人に、やむを得ず数千円を貸したというようなお金の貸し借りは、「一時的な立て替え」です。後日すぐに回収すれば大きな問題になりませんし、万が一返してもらえなくても生活できなくなるほど大きな額が動くことは、まずありえません。
このような立て替えとお金の貸し借りを混同して、一時的な立て替えさえ渋る必要はありません。
しかし、立て替え以外のお金の貸し借りについては、友達を信じる優しさとお金を貸す優しさは全く別のものであることを親子でぜひ再確認してください。
大切だと思っていた友達とも、お金の貸し借りをすることで仲たがいをすることになってしまったら、本末転倒です。
お金に困っている友達がいたら、専門家を紹介する、貸し借りなしでどう工面するか一緒に考えるなど、お金を貸さずにできる手助けについても子どもと共有しておくと、お友達を安易に見捨てるということにもならず、上手に断ることができるのではないでしょうか。