お話を伺ったのは……沼田晶弘先生
1975年生、東京都出身。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。
子どものやる気を引き出すユニークな取り組みが話題となり、多くのメディアで取り上げられる。『もう「反抗期」で悩まない!親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』(集英社)など著書も多数。
『もう「反抗期」で悩まない!親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』
著者:沼田 晶弘
価格:1,540円(税込)
動かない子ども、動いてしまう親
子どもが思春期頃になれば、自分のことは自分でしてもらいたいもの。何度言ってもやらない子どもに、親はことさら口を出してしまいがちです。
「食べたら片付けなさい!」
「脱いだものは洗濯機に入れて!」
「鞄から水筒を出して!」
親からのこんな“おねがい”にもこの時期の子どもは「うるさい」、「あとでやる」と一蹴。一言あればいいほうで“華麗にスルー”される場合もあるかもしれません。
結局はブツブツ言いながら、親御さんが食器を片付けていませんか? 洋服を洗濯機に入れていませんか? 鞄から水筒や学校からの手紙を出してあげてはいませんか?
これが日常という家庭もあるかもしれませんが、このままでいいのでしょうか?
先回りしすぎてはいませんか?
「お子さんが自主的に動くのを待っているよりも、自分で先回りしたほうが早いし楽だという親御さんがほとんどかと思います。お子さんは毎日、小言を言われつつも、結局は親が片付けてくれるものだと認識すると自分からは行動しません。これでは何の解決にもならないのです。
そこで、『片付けなさい』と言ったのであれば、親御さんが先回りしてはいけません。そこは、あくまでもお子さんに片付けさせましょう。水筒を出さずに次の日の朝を迎えたならば、その日は水筒なし。もしくは、朝から自分で洗って用意をさせてください。『サッカーのユニフォームは?』と聞かれても、自分が洗濯機に入れていなければ自己責任です。汚れたままで行くか、別のものを持っていくかを自分で考えさせましょう。
親はどうしても、子どもが困らないようにと先回りをしてしまいますが、それでは『自分事化』する機会を失ってしまいます。自分のことは自分でする、という基本的なことをこの時期にしっかり身に付けてもらいましょう」
周りの人に迷惑をかけてしまいそうなときは?
自分だけが困ることならば自己責任で終わりますが、お友達や周りに迷惑をかけてしまうような状況のときも「先回り」は禁物なのでしょうか? ぬまっち先生に伺ってみました。
「たとえば、お子さんがなにかを忘れたことによってクラス全体やチームに迷惑をかけてしまうような場合は、出かける前に『〇〇は持ったの?』、『〇〇は大丈夫?』と一声かけることは必要です。しかし、お友達との約束でちょっと遅れるくらいならば親が先回りせず、自分で判断させましょう。
そこで約束の場所に送れては〇〇さんに迷惑がかかると、親が車を出して間に合わせてしまっては先ほどの話と同じです。いつまでたっても『自分事化』することができません。その子が社会人になっても一生ついて回るならば話は別ですが、そんなわけはありませんよね。周りの人に迷惑をかけてしまったら、次はそんなことのないよう気を付けるでしょう」
親というものは、どうしてもわが子が失敗しないように、周りに迷惑をかけないようにと、手を出してしまいがち。
しかし、ぬまっち先生の言うように、子どもが「自分事化」して考えられるきっかけを作ることも一つの教育だと感じました。