男性が育休を取れても取れなくても。赤ちゃんを産む前に整えておきたい「夫婦の子育て体制」

家族・人間関係

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2022.05.23

臨床心理士・公認心理師のyukoです。新しく命を迎えるご家庭では、夫が育児休業を取るか否か話し合う機会も多くなってきたのでは。男性の育児休業取得にあたって障壁となるのが「パタニティハラスメント」。仕事と家庭の両立は女性だけの問題ではなく、男性側の課題にもなりつつあります。男性の育児休業取得についてどのように向き合っていけばよいのか。折り合いのつけ方を考えていきます。

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男性の育休、現状は?

女性の社会進出促進に伴い、男性の育児参加を求める声も年々大きくなってきたように感じます。
ただ、2020年に実施された厚労省の調査によると、男性の育児休業取得率は12.65%に留まっているのが現状。
男性の育児参加が社会に認められ始めたのはよい傾向かもしれませんが、まだまだ働く女性の育児負担は大きいですよね。

働きながら子育てをするママ出典:stock.adobe.com

一部の男性が育休を取得するようになったことで、「育休を取った夫」と「育休を取ってくれない夫」が比較される風潮も生まれています。
育休を取る男性・取らない男性の間にはどんな違いがあるのでしょうか。

「取らない」のではなく「取れない」

育休を取得できない男性からは、こんな声があがってます。

「部署の雰囲気的に育休制度を利用できない」
「男性の上司から理解が得られない」
「残業が多い、繁忙期だから休めない」
「自分にしかできない仕事、担当している仕事がある」
「昇給や昇格など、キャリアに悪影響がありそう」

ケンカ 夫婦出典:stock.adobe.com

仕事を頑張っている方は、「自分にしかできない仕事は女性側にだってある」「キャリアを諦めなきゃいけないのは私だけ?」とも感じるのではないでしょうか。
ですがここでポイントになるのは、「男性側は10人に1人程度に留まっている」事実です。取得できているのは少数派に過ぎないのが現状。

「取りたくても、取れない。」言い訳ととるか、事実ととるか。
それもまた難しいところです。実際、「パタニティハラスメント」という言葉も生まれてきました。

「パタニティハラスメント」とは、男性が育休や時短勤務を希望した際に、同僚や上司から妨害されたり、脅しや嫌がらせを受けることです。
少数派を異端と毛嫌いする日本文化の根強さは、すぐに変わるものではありません。
ハラスメントとして声をあげられる方もいれば、職場や上司の圧力を飲み込む方もいると思います。

上司に怒られる男性出典:stock.adobe.com

ただ、ここで伝えたいのは、声をあげるべき、とか、長い物には巻かれろ、とかではありません。
家庭の事情も、夫婦それぞれの考え方も、会社との付き合い方も各々の事情があると思います。
家庭内で必要なのはどんな話し合いなのか、考えていきます。

話し合いのゴールは「協力的な子育て体制を作っていくこと」

妻には妻の事情があるように、夫にも夫の事情があるようです。
話し合いのゴールを「育休を取ってもらう」に据え置くと、要望が通ったとしても、「育休を取ったんだからいいじゃないか」という考えが生まれてしまう可能性も。

必要なのは、「協力的な子育て体制を作っていくこと」ではないでしょうか。

話し合いに必要な3ステップは、以下の手順です。

1.夫がどんな理由で育休を取得できないのかを知る

話し合いが上手く行かないとき、陥ってしまいがちなのが「性格に原因を持っていく」です。
相手の性格や考え方に原因をもっていくパターンと、自分側に原因をもっていく2パターンがあるかと思います。

  • 「あなたは私に甘えてる。どうせ私が育児も家事も全部すると思ってるから仕事を休まないんでしょ?」「(相手に責任を持っていく)
  • 「こんなことを求める私が間違っていた。諦めて子どもの面倒を一人で見るしかないんだ」(自分に責任を持っていく

夫婦喧嘩出典:www.photo-ac.com

やりきれない気持ちを解消するために、結論を急ぐ気持ちはよくわかります。
ですが、建設的に話し合うためにはお互いの考え・要望を言い合うだけでなく、職場環境や会社でのポジションも含めて理解しあうのが必要です。

2.父親として何ができるのか、「折り合い点」を見つける

「育休を取って!」「取れない!」の攻防戦では、子育て参加への動機が育ちません。 
長い目で見たときに必要なのは、夫が子育てに「協力し続ける姿勢」です。
父親として何ならできるのか、どうしていきたいのか。具体的に話し合い続けるのが大切です。

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スモールステップで目標や約束を作っていくのがおすすめです。
お互いに譲れない点、歩み寄れそうな点を見つけ、折り合いをつけられるといいですよね。

3.約束は記録し、アップデートしていく。

お互いの「記憶」では、振り返ったときに齟齬が生じる可能性があります。
物理的な「記録」に残し、認識の共有をしていくのが大切です。

そして、協働に必要なのは、「約束のアップデート」です。
実際に赤ちゃんが生まれると、当初考えていた予想通りにことが進まないものです。

「あのとき、こうやって言ってたじゃん!」とお互いに責めても、前に進めなくなります。
「あのとき一緒にこう考えたけど、今の状況では難しそうだね。どうしていこうか」と、その都度話し合い、約束をアップデートしていくのがおすすめです。

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夫婦の関係性にも「更新」が必要

今年の10月からは、男性版産休制度(出生時育児休業)の施行が開始される予定です。
子どもの出生後に、男性が産休を取っていく制度です。

一歩ずつ、徐々に社会は変わっていくのだとも感じます。

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「相手のせい」で終わらせず、「生まれてくる子のために」どうしていくのか。
「夫婦」から、「両親」へ。関係性のアップデートも必要ですよね。
 

【参考資料】
厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000687802.pdf
厚生労働省 「令和2年度雇用均等基本調査」結果
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r02/06.pdf

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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