教えてくれたのは……有田玲子先生
伊藤医院副院長。医学博士。ドライアイ、またドライアイの中でも特に『涙のあぶらの専門家』として、 TV・雑誌・講演会・ワークショップ等を通じて精力的に活動。油不足ドライアイ関連の英論文は70本以上発表し、世界一となる。 2021年にYouTubeチャンネル『眼科医 有田玲子先生のドライアイ診察室』をスタート。難しいことをわかりやすく明るく解説することをモットーに、ためになる情報を配信中。
7割以上の大人が目の疲れを感じている!
目が疲れやすい、しょぼしょぼするなどと感じたことはありますか?
眼科医の有田玲子先生が関東在住の500組の親子を対象に行った実態調査によると、大人の7割以上、子どもの約4割が、目の疲れを週1日以上感じていると答えています。
では目の疲れは、どのようなときに起こりやすいのでしょうか? 有田先生は、次のようにお話されています。
有田先生「目を使いすぎると目が疲れることは、よく知られていると思います。しかし、じつは目の疲れの原因はそれだけではありません。ドライアイなどで角膜に傷がある状態だと、角膜の表面がデコボコとしていて目のピントをあわせにくくなり、目が疲れたと感じやすくなるのです」
角膜に傷がつきやすくなる要因とは?
角膜とは、黒目の表面の透明な組織のこと。生きた細胞がむき出しになっているため、非常に傷つきやすいところです。この角膜を守っているのが、「涙の保湿ベール」。まばたきをして涙が角膜に均一に広がることで、角膜を保護する役割を果たしています。
しかし次のような要因があると、涙は乾きやすくなり、ひいては角膜に傷がつくリスクにつながると有田先生は指摘しています。
まばたきの回数・質の低下
有田先生「まばたきをすることで、まぶたがワイパーのように涙を角膜にきれいに塗りつけます。しかし、スマホやタブレットを使用することでまばたきの回数が減ったり、下まぶたがしっかり閉じていない浅いまばたきを続けたりしていることで、涙が角膜に十分にいきわたらず蒸発しやすくなり、角膜の傷のリスクになります」
涙の質の低下
有田先生「涙の約99%は水分ですが、残りの1%ほどは『油』でできています。この油が少なくなったり、質が悪くなったりすることで、涙が不安定になることがわかっています」
乾燥・風などの外的要因
有田先生「湿度が低下したり、目に風があたったりするなど外的な要因も涙が乾く原因になります。最近はマスクをすることで呼気が上がって目を乾かし、ドライアイにつながるという報告もあります」
からだには、皮膚などの傷と同じように、角膜の傷を自己修復する力が備わっています。しかし、加齢により傷が治る周期が遅くなることがあると有田先生は話します。
有田先生「年を重ねるとともに新陳代謝が低下するため、傷が治りにくい状態になっていきます。毎日歯を磨いて虫歯を防ぐのと同じように、目のケア、アイケアも習慣化して目の病気を予防していくことが重要です」
角膜の潤いをキープする「目薬の使い方のコツ」
アイケアといえば、「目薬」をイメージする方も多いのではないでしょうか。前述の実態調査でも、予防のためのケアとして「点眼薬」を使用している人がもっとも多いことがわかっています。
今やドラッグストアやコンビニなどで手軽に購入できる目薬ですが、使い方にはポイントがあると有田先生。たとえば、目薬を際限なく何度も使うのはNG。
有田先生「目薬は、させばさすほどいいわけではありません。涙のなかには、目を守るいい成分がたくさん入っています。目薬をさしすぎることで、その成分が洗い流されてしまうことがあります。目薬は、パッケージに記載されている用量・用法を守って使用しましょう」
ほかにも、以下のポイントに注意して目薬を使うといいそうです。
- 角膜修復機能のある「ビタミンA」入りの点眼薬を使用する
有田先生「角膜の修復機能入りの点眼薬は、角膜が傷つくリスクを改善し、仮に傷がついていたとしても修復する成分が含まれています」
- 「防腐剤無添加」のものを選ぶ
有田先生「防腐剤入りの点眼薬は、涙を不安定化させる可能性があります。できれば入っていないものがおすすめです」
起きているかぎりずっと使い続けている「目」。正しく目薬を使って、目のトラブルを未然に防ぎましょう!