障がいを抱える子の兄弟、「きょうだい児」
自分の兄弟姉妹に障がいや病気を抱えた子をもつ「きょうだい児」。
彼らの胸の内には人に話しにくい悩みを抱えている子も多いんです。
- 兄弟のことを相談しても「仕方ない」と言われる
- 姉妹のことを悪く言いたいわけではないけど、募った不満のやり場がない
- 友達に心ない言葉をかけられても、両親に言ったら傷つけてしまうから言えない
どうしても、家庭での比較対象が障がいを抱えた兄弟になってしまうと、身をひかざるをえないのが「きょうだい児」の辛さなんです。
まずは彼らの内に秘められた辛さを知ることが大切です。
きょうだい児の抱える悩みとは?
知らず知らずのうちに自ら課しているプレッシャー
特別な環境で育つ彼らは、一見するとあまりわがままを言わず、聞き分けのよい優等生に見えます。
その理由はいくつかあります。
- 「できて当たり前」に応える姿勢が身についている
- 両親の苦労する背中を見ていると自分まで負担をかけられない
- ケアしない自分、兄弟をないがしろにする自分に対する罪悪感がある
「まず前提として、優等生でいなければ自分の居場所はない」
幼少期を子どもらしく過ごせないまま大人になっていく方は多いようです。
兄弟の障がい特性への我慢は当然
障がいや病気の種類・程度によって内容は様々ですが、「周りの同級生はできているのに我が家では叶わないこと」に対する我慢を抱える子は多いよう。
例えば、
- 感情コントロールが難しい子の場合、かんしゃくで物を壊されてしまう
- 過敏性やこだわりが強い子の場合、行く場所・食べるものに制限がある
- 時間をかけたケアが必要な子の場合、両親にじっくり話を聞いてもらえない
障がいを抱えている子中心で家庭がまわっていると「当然できないこと」でも、きょうだい児側から見ると「周りは当然できていること」であるのが難しいところです。
結婚、出産、その後はどうなるの?
思春期以降気にかかってくるのが将来について。
特に、結婚を考える際には、相手方の家にどう思われるか不安で言い出しづらかったり、遺伝の関係性についてパートナーに打ち明けにくいなどの悩みをよく聞きます。
そして、言い出せないけど気にかかるのが「将来サポートするのは私?」という不安。
両親はきょうだい児となっている子自身の将来をきちんと見据えていても、周囲の大人が「両親もあなたがいれば安心だね」などと声をかけているケースもあります。
家族や兄弟を大事にしたい気持ちと、自分の人生を歩んでいきたい気持ちの葛藤に悩む方は多いようです。
きょうだい児にも、子どもらしくいられるためのサポートを
障がいを抱える子の親御さんであれば、なかなか余裕が作れないのももっともです。
過去を責めるのではなく、気づいたそのときに外部の力も頼りながらきょうだい児側のサポートにも目を向けるのが大切であると感じます。
- 両親どちらかと一日出かけるなど、子どもらしくいられる時間を作る
- 将来の話を個別にし、不安に思っていることを話し合う。
- 本人のために考えていることや準備していること(金銭面や将来など)を伝える
「あなたに注目している」という姿勢をわかりやすく伝えるのが肝心です。
特別な立場だからこそ得られる経験も
ここまで、きょうだい児と呼ばれる子が抱える難しさを考えてきました。
ですが、難しい特性を抱えている子が兄弟にいる経験から得られるものも大きいのもまた一つの事実です。
実際お聞きした中では、「他の人は知らない知識を身につけられる」「様々な境遇の人への配慮が自然と身についている」「家族で同じ方向を向き続けてこれた」など、前向きに捉えている方も多くいました。
どんなに不自由のない境遇にあっても不満が溢れる方がいる一方、周囲から見ると複雑な境遇であっても、受け入れて肯定できる方もいます。
障がいを抱えながらも毎日頑張っている兄弟、そんな兄弟を支えるため懸命に努力している両親。
その姿を一番近くで見ている「きょうだい」だからこそ、抱えてしまう悩みもあれば、他の何にも替えられない経験もあるんだと思います。
少し余裕がでてきたとき、小さなヘルプに気づいたときから、「きょうだい児」の子が抱えているものに目を向けてみて下さい。