お話しを伺ったのは、弁護士の佐野英史さん
東大寺学園、京都大学出身。
検察官として正義を追及する父の背中を見て、小学校のころから法律の道を志す。
京都大学で飛び級し、司法試験に現役合格。父と同じ街で弁護士として活躍中。
趣味は銭湯めぐり、バックパッカー、お菓子作り。
HP:https://xn--3kqu8hjf958bcjdkxv7na.jp/
肖像権・プライバシー権って?
ーーまずは、SNSで写真を公開することに関係し得る法律について教えてください。
佐野さん:SNSへの写真のアップは、肖像権、プライバシー侵害という2つの権利にかかわる可能性があります。おおざっぱにいうと、肖像権は「自分の姿を勝手に撮影・公表されない権利」、プライバシー権は「私生活上の情報を無断で公表されない権利」です。
子どもの写真を公開したら「訴訟を起こす」と…
佐野さんに「SNSでの子どもの写真公開」に関する事例についてお話を伺いました。
◆相談◆
公園で仲良く遊ぶ我が子と3人の友だちの様子をスマホで撮影し、とても可愛らしく撮れたのでSNSで公開しました。後にそのうちのひとりの親から「無断で写真を公開されるのは困る」と言われました。すぐに謝罪して削除したのですが「訴訟を起こす」と言われ、許してもらえません。どのような罪にあたり、どんな罰を受けることになりますか?
◆回答◆
まず「どのような罪にあたり、どんな罰を受けることになるのか」ということですが、実は肖像権やプライバシー権の侵害を罰する法律はありません。ですから、逮捕されて刑務所に入ったり、罰金を課せられたりするなど、罰を受けることもありません。
しかし、何の責任も負わなくていいという訳ではありません。こじれてしまうと慰謝料など損害賠償の支払いや写真の削除を請求されることもあります。
公園は誰でも入れる公共の場所ですので、よほどのことがなければ撮影自体が問題となることはないでしょう。ですが、写真を撮ることと、その写真をアップロードすることは別です。撮影自体は問題がなくても、誰のものかがわかる写真を誰でも見られる場所にアップすると、肖像権の侵害にあたると判断される可能性があるんです。
写真に位置情報が 含まれていたり、写真から容易に日時や場所が 特定できたりすると、そこから子どもの住所や学校が明らかになってしまう おそれもあります。その結果 、写真のアップロードがプライバシー侵害にあたると判断される可能性があるということです。特に、今回の場合は未成年の子どもの安全に関わる問題だということを考慮しなければいけません。
今回の事例は、他人の子のみならず自分の子といえども自分ではありません。不用意な写真の公開は、個人情報を広めかねないだけでなく、子ども本人の意思によらずその生命や身体に危険をもたらしてしまいかねないことを理解しておきましょう。
トラブルにならないために…
肖像権・プライバシー権には罰則が無いとは言え、思わぬトラブルを回避するためには、スマホの設定を確認して、写真の位置情報をオフにしたり、SNSの公開範囲を友だちのみに限定するなどの対策も必要です。
画像加工アプリの活用を!
また、我が子以外の子どもだちの顔にスタンプやぼかしなどの加工を施すことで、特定できないようにするのも1つの手段です。写真を表示して指でなぞるだけでカンタンに顔部分をぼかすことができるので、卒・入学式での我が子の晴れ姿をSNSで公開したい場合は手に入れておくといいですね。
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.pointblur.android.app.quick
iPhone: https://apps.apple.com/jp/app/id964220645
大切な思い出に傷をつけないために…
これからの卒・入学シーズンに向けて、大切な思い出を思わぬトラブルで傷つけてしまわないように…写真の公開には充分に配慮しておくことをオススメします。罰則が無いとは言え、個人情報の保護は情報時代の大切なお付き合いのマナー。子どもが関係するテリトリーで関わる人たちは、お互い住む地域を同じくする人たちばかりなので、特に配慮が必要です。