進学先を親主体で決めていたら要注意。自分では気づけない「愛情」と「過保護」の境界線

家族・人間関係

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 進学先を親主体で決めていたら要注意。自分では気づけない「愛情」と「過保護」の境界線

2023.03.16

臨床心理士・公認心理師のyukoです。思春期の頃、親に「放っておいて」と言って喧嘩をした経験はありませんか?保護者として求められる「愛情」と、子どもから疎ましがられる「過保護」の線引きはどこにあるのでしょうか。手の出し方と引き方の塩梅を考えてみます。

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もくじ

自分では気づけない「愛情」と「過保護」の境界
交友関係に口を出す
進学先を親主体で決める
SNSをのぞく、携帯をチェックする
フィードバックは10年後に返ってくる

自分では気づけない「愛情」と「過保護」の境界

「愛情」と「過保護」は紙一重。
同じ対応であっても、発信の仕方や受け止め方によってどちらにも転じます。

例えば

  • 近所の公園で遊ぶとき、心配なので近くで見守っている。
  • お菓子を買わなければ子どもが拗ねるので、スーパーでお菓子を買う。
  • 明日は体育の授業があるから体操服を準備して机の上に置いておいてあげる。

子どもを見守る親出典:stock.adobe.com

どれも親切な愛情とも思える一方、過保護にも見えますよね。
結論から言うと、いずれも正解・不正解と決めきれません。

ですが一つ考えたいのは、背景に「コントロール」が隠れているかどうか

ニュースで物騒な事件を見ると子どもだけで遊ばせるのはたしかに心配かもしれません。
しかし、子どもの遊び方にまで口を出したり、交友関係に干渉したりするのは「コントロール」に繋がりますよね。

子どもの笑顔を見たいからお菓子を買うのは愛情と言えそうですが、毎回欲しいだけ買っていると「我慢する力」を身につけにくくなってしまいます。
転ぶ前に石をよけてあげるのも、「転ばせないためのコントロール」になりうるんです。

他にも、ついやってしまいがちな「過保護」について考えてみましょう。

交友関係に口を出す

親が思う「よい友達」と、子どもが思う「よい友達」は必ずしも一緒ではありません。

  • あの家庭はよい噂を聞かないから子どもも一緒にいるべきではない。
  • ゲームばかりしている子たちより勉強をしっかりしているグループに入りなさい。

親同士の相性や価値観の違いから子ども同士を引き離したり、友達のタイプを制限するのはおすすめできません。
子どもには子どもの世界があり、大切にしている感覚はまったく異なるものだからです。

進学先を親主体で決める

中学・高校・大学、どの段階でも親主体で進学先を決めるのは要注意です。

なんでもいい、やりたいことがない、と話している子であっても、調べ方を教えて、子どもの興味を育んでいくのが大切。
「なんでもいい」と話す子は、もしかしたら「(自分が何を言ってもどうせ聞いてもらえないから)なんでもいい」と言っているのかもしれません。

悲しむ子ども出典:stock.adobe.com

子どもの頃から、衣服や習い事、食べるものなど、生活を親の意向に沿わせていたら、子どもは「何か言ってもどうせ無駄」と感じるようになります。

何に興味があるのか、どんな学生生活を送りたいのか、「子どもの本音を聞く」のが第一です。

SNSをのぞく、携帯をチェックする

子どもの年齢に合わせて、ネットの閲覧制限をかけたり、使用時間を管理するのは大切です。

ですが、友達とのやりとりをのぞいたり、SNSをチェックして子どもの発言やコミュニティを管理するのはどうでしょうか。

勘が鋭く、インターネットの扱いに長けている子ども世代は、見られているかもしれないと感じたら、親にばれない方法で網をかいくぐるもの。
アカウントを複数作ったり、友達との連絡方法を変えたり、検索履歴を消すなど、余計に秘密を守るようになっていきます。

スマホを見る子ども出典:stock.adobe.com

そして、プライバシーを守ってくれないと親に不信感を抱くと、家でのコミュニケーションを避けるようになります。

日常会話ができる関係性を維持し、どんな友達と仲がよいのか教えてもらったり、一緒にニュースを見ながら「SNSで危険な目に合う子もいるから十分に気をつけてほしい」と伝えるのが、一番の抑止力になると思います。

フィードバックは10年後に返ってくる

カウンセリングでは、10代の子はもちろん、20代から70代くらいまでの方が親との関係に悩み、相談に来られます。
その中で印象的なのは、幼少期、親に印象を抱けなかった20代から40代くらいの若い世代の方は、働き始めると連絡を取らなくなり、できるかぎりの距離を取る点です。
自らの足で歩む人生がよしとされ、女性であっても親に頼らず生きていける、令和時代の特徴かもしれません。

子どもが親の理想に沿い、期待通りの道を進んでくれれば、短期的に見れば幸せなのかもしれません。

子どもを𠮟る親出典:stock.adobe.com

しかし、10代の子どもの話に耳を傾けなければ、10年後、20代になった子どもが親の話に耳を傾けることはきっとありません。

子育ての結果は、10年後に子どもから返ってくるのではないでしょうか。

「子どもは子どもなりの道を歩くんだろう」、「どんな風になっていくのかな」と少し離れた場所から見守っていくのがおすすめです。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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