教えてくれたのは……藤野智哉先生
精神科医。産業医。公認心理師。
幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見をメディアやSNSで発信中。
『「誰かのため」に生きすぎない』
著者:藤野智哉
価格:1,650円(税込)
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
自分が「完璧じゃない」ことをまずは受け入れて
すっと心に染みこむゆるゆるとしたメッセージが人気の精神科医・藤野智哉先生。最新刊『「誰かのため」に生きすぎない』では、甘え上手になる第一歩として、「自分が完璧じゃないことを受け入れる」と記しています。
まわりに頼らずがんばり続けてきた人は、どのような気持ちで臨んだらいいのでしょうか?
藤野先生 「パートナーや同僚の前ではカッコつけたり、子どもにはちゃんとしたところを見せたりして、みんな完璧なふりをして生きているけれど、僕らって完璧じゃない。
それを堂々と受け入れて、堂々と主張していくことって、すごく大事だと思うんです。
自分が完璧じゃないことを受け入れるのって、意外と勇気がいりますよね。
でも、ずっと完璧のふりをしていると、生きるのがしんどくなっていきます。
だから、できないこと・自分の弱いところをそろそろ受け入れてみてもいいと思うんです。」
“ポジティブな言い訳”を準備するのがコツ
そうは言っても、「自分はコレができない」、「コレが苦手」と認めることが難しいと感じる方もいますよね。そんなときはどう考えたらいいのでしょうか。
藤野先生 「頼ることは、恥ずかしいことではありません。一人でがんばるために技を磨いているより、まわりを頼った方が早く解決することは、たくさんあります。
『今回は時間がないから』とか、『頼ったほうが早いから』とか、そういう“ポジティブな言い訳”をたくさん準備して、どんどんまわりを頼ってほしいなって思います。」
「僕は掃除ができないんですよね。しないじゃなくて、能力がない」と笑いながら教えてくれた藤野先生。ご自身の体験を振り返ったうえで、頼ることのよさを教えてくれました。
藤野先生 「僕は掃除ができないから、すぐ“ゴミ屋敷”みたいになっちゃうんです。以前住んでいた部屋では、自分の背より高いところまで段ボールを積んだこともありました。
ずっと暮らしづらく過ごしていたけれど、思いきって掃除代行を頼んだら、こんなにスッキリするのかとびっくりしたんです。
人によって、得意・不得意がありますよね。できないところは認めて、得意なところでがんばる。それでいいと思うんです。」
「べき思考」を手放そう
一人でがんばり続けてきた時間が長ければ長いほど、誰かを頼る一歩が踏み出しにくいと感じることがあるかもしれません。そんなときは、自分の「べき思考」を疑ってみて、と藤野先生はおっしゃいます。
藤野先生 「『みんな完璧じゃないでしょ』という話をすると、みなさん『そうだよね』ってうなずきます。それでも現実では、どうしてもちゃんとしなきゃって思ってしまうんですよね。
ただ、『大人ならちゃんとするべき』『母親なら◯◯すべき』といわれていることって、誰かの作ったルールだったり、勝手な期待だったりします。
だから、『べき思考』に縛られず、自分にとって大事なことを優先してほしい。もし自分に「〜するべき」と考えるクセがあると感じたら、今後はそう考える度に疑う習慣をもちたいですね。そうすることで、つながれた鎖をひとつでも外してもらえたらって思います。」
まわりを頼る。助けてと言える。これは、子育てにも通じる大切なヒントですよね。次回は、「子どもの“頼る力”を育むために親ができること」について、藤野先生からアドバイスをいただきます。