教えてくれたのは……中澤佑介(なかざわゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2023年6月、JR金沢駅前にメンズヘルスクリニック(Gran Clinic)を開院。
「過活動膀胱」のセルフチェック
まわりの人が思っている以上に、本人はつらい思いをしていると言われる「過活動膀胱」。どのような症状があると「過活動膀胱」と診断されるのでしょうか?
中澤先生「過活動膀胱は『急に我慢できないような尿意が起こる』『トイレが近い(頻尿)』『急にトイレに行きたくなり、我慢できずに尿が漏れてしまうことがある(尿失禁)』などの症状を呈する疾患です。
過活動膀胱の診断や重症度を評価するために、下記の質問票「過活動膀胱症状質問票」を用います。この質問票は患者さん自身が記入するものなので、自己診断にも使うことができます。」
それでは、こちらの質問票を使い、さっそくセルフチェックしてみましょう。
中澤先生「質問3の点数が2点以上で、全質問の総合点数が3点以上であれば過活動膀胱と診断されます。
総合点数が5点以下であれば軽症、6〜11点であれば中等症、12点以上であれば重症と、重症度判定に用いる場合もあります。
尿検査や超音波検査などの検査によって、膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍などの膀胱の特殊な病気の存在が除外されれば、過活動膀胱と診断して治療を始めます。」
過活動膀胱は、さまざまな原因が考えられる
デリケートな問題なので、人に相談できずに悩んでいる女性も多いと思います。過活動膀胱の症状が出る原因には、どのようなことが考えられるのでしょうか?
中澤先生「過活動膀胱は40歳以上の男女の14.1%、すなわち約1,040万人の方が過活動膀胱に罹患していることが示されています。また、その約半数が尿失禁(切迫性尿失禁)を伴うことも示されています。
過活動膀胱の病因はさまざまです。
加齢により発症するケースが多いほか、脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、認知症などの脳や、脊髄損傷、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脊髄腫瘍、頸椎症、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症などの脊髄の神経疾患が過活動膀胱の原因になることもあります。
しかし、神経疾患がなくても、前立腺肥大症に合併することもあり、さらに明らかな原因疾患のない(特発性)の場合もあります。」
過活動膀胱の症状を改善するためにできること
「日常生活に関わることなのでQOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)を低下させると考えます」と、中澤先生はおっしゃいます。
では、どのようなことに気をつけるとよいのでしょうか? 日常生活の中で気をつけるとよいポイントと、治療方法について教えていただきました。
中澤先生「日常生活では、かんきつ類や塩分・香辛料などの刺激物を控えるようにするとよいと思います。
過活動膀胱の治療は、下記の方法が挙げられます。
- 薬物療法……主に膀胱の収縮を抑えて尿意切迫感も改善する「抗コリン薬」と、蓄尿時の膀胱の拡張を促進する「β3受容体作動薬」があります。
- 薬を使わない行動療法……膀胱訓練、骨盤底筋体操などがあります。
上記の治療を行っても改善が得られない難治性過活動膀胱の場合は、ボツリヌス毒素の膀胱壁注入治療や電気刺激治療・磁気刺激治療、仙骨刺激治療が行われることがあります。
これらの治療は、施設基準や資格が必要な場合があるので、泌尿器科専門医のいる施設に相談されたほうがよいと思います。」
過活動膀胱の症状に悩んでいる方、セルフチェックで点数が高かった方は、一度受診して相談するとよいかもしれません。一人で抱え込まずに、改善するためにできることから始めてみてはいかがでしょうか。