教えてくれたのは……徳永 理恵先生
逗子メディスタイルクリニック院長。国立東京医科歯科大学医学部を卒業。同大学病院を経て、横須賀市立市民病院に勤務。2010年、歯科医である夫と共に、逗子メディスタイルクリニックを開院。3人の男の子の母で、乳がん・甲状腺がんの経験者でもある。日本形成外科学会、日本美容皮膚科学会、日本がんサポーティブケア学会に所属。
やけに汗が多い…もしかして「多汗症」?
「汗は体温を調節し、生命を維持するためにとても大切なものです。しかし、汗が多すぎて日常生活に支障をきたしているようでしたら、『多汗症』の可能性もあります」と話すのは、医師の徳永理恵先生。
今回は、徳永先生に「多汗症」の診断ラインやタイプごとの対処法、さらには、汗の臭いが気になるときの対処法を教わります。
「多汗症」の診断のラインとは?
多汗症には、全身に汗をかくタイプと、局所的に汗をかくタイプがあります。
全身の多汗症に関しては、基本的に本人の訴えから診断します。診断のラインは主に、日常生活に支障があるかないかです。
ふつう、運動したり、緊張したりしたときは、汗をかきやすいですよね。でも、シチュエーションに関係なく、常に汗をかいているといった場合は、多汗症を疑います。
また、脇の下から多量の汗が出る原因不明の「腋窩多汗症」の診断については、以下の診断基準があります。
1)最初に症状がでるのが25歳以下であること
2)対称性に発汗がみられること
3)睡眠中は発汗が止まっていること
4)1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
5)家族歴がみられること
6)それらによって日常生活に支障をきたすこと
もし、これらの基準に当てはまる場合は、一度、皮膚科を受診することを検討してもいいかもしれません。
「多汗症」の治療法、対処法とは?
全身性の多汗症については、最近では、保険適応となる塗り薬も増えています。症状がよほどひどければ、飲み薬を使うこともあります。
脇の多汗症については、個包装のシート状の薬やゲル剤があります。脇汗の臭いに悩む方は、手術なども保険適応になります。
手足の多汗症に関しては、ローション剤も出ていますし、ボトックスの注射なども保険適応です。
汗の臭いが気になる…対策は?
汗には、タンパク質や脂質が多く含まれています。この汗を、皮膚の「常在菌」が分解することで、臭いが出ます。
汗の臭い対策には、防臭と消臭があります。
防臭は大きく分けて、汗の量を減らすアプローチと、汗を分解する常在菌を減らすアプローチがあります。
汗の量を減らすには、汗をかかないような生活をしたり、汗の量を抑える薬剤を用いたりする方法があります。特にアポクリン腺を減らすような手術を受けるという選択肢もあります。
常在菌を減らすには、殺菌成分が入った薬剤を使ったり、常在菌の住みかとなる毛を脱毛したりする方法があります。
消臭は、臭いを吸着する繊維を使った下着をつけたり、臭いの原因となる酸やアルカリを中和するような薬剤を用いたりするなどの方法があります。
汗は、体の熱を逃がしてくれる大切なものですが、日常生活に支障があるほど多いのも問題ですよね。自分の症状に合った対策を心がけ、お悩みの場合は、皮膚科を受診してみてくださいね。