教えてくれたのは……抗菌博士 梶浦義浩さん
1985年、株式会社シナネンゼオミックに入社。以来、抗菌剤「ゼオミック」の研究・開発に従事。現在は同社プロジェクト担当として、市場開拓も担当。抗菌試験管理士、臭気判定士の資格も有する。イベント等では抗菌博士として講師を務める。
菌とウイルスの違いは増殖の仕方にあり!
皆さんは菌とウイルスの違いをご存じでしょうか。菌は、栄養、水分、温度が菌にとって最適な環境になった場合、自ら増殖します。
一方で、ウイルスは自分で増殖することはできません。人や動物の細胞に入り込んで、細胞内のDNAやRNAを利用しコピーを作って増殖します。
季節によっても注意!菌やウイルスに潜む危険性
<夏場の危険性>
夏は食中毒菌が増殖しやすい季節です。ウイルスが環境中にばら撒かれることで、発熱、下痢、嘔吐等の症状を発症する可能性があります。災害で疲弊している体に一層のダメージを与えてしまいます。
<冬場の危険性>
避難所などに人が密集することで温度差が生まれ、窓などに結露が発生しカビが生えやすくなります。
カビの胞子は喘息・アレルギー反応を引き起こし、その咳が原因でウイルスが拡散され感染リスクが高まります。
災害時は菌が増殖する3つの条件が揃ってしまう
菌は、温度・水分・栄養分が揃うことで増殖します。
災害時のような洗浄が十分にできない環境では、この3つの条件が揃いやすくなってしまうため、菌が増殖してしまうのです。
<温度>
35度前後になると菌が増殖しやすくなります。
<水分>
夏季は湿度が高く、冬季は結露が発生しやすくなります。
また、豪雨などによる床上・床下浸水では家の中が湿った状態になりカビが発生します。このカビの胞子は、アレルギーなどの疾患を引き起こしてしまいます。
<栄養分>
災害時に食物残渣などを適切に処分できない場合、これがら栄養源となって菌が増殖してしまいます。
災害時に菌が増殖しやすい「場所」と「対策」
1. 食事場所・ゴミ捨て場
災害時は冷蔵庫など低温で食品を保管できなくなります。そのため、食中毒菌(カンピロバクター、O-157など)が増殖し、食中毒の危険性が高まります。
<対策>
- 食品は調理前に必ず洗い、加熱を徹底しましょう。
- 非常食はレトルトや、パッキングされているものを使うものが好ましいです。
- 調理などして残った食べ物は廃棄するようにしましょう。猛暑の際は菌が繁殖しやすくなります。
- 数日分のゴミが溜まっているゴミ捨て場は、栄養分となる食糧残渣等があり、水分があることですぐに菌が増殖しやすい環境です。ゴミ捨て場は、可能な限り雨があたらないような場所に設置し、できるだけ乾燥した状態にしておきます。
2. トイレ
災害時は、排泄物の処理や清掃などが困難な状況です。避難所での衛生状態を保つことは非常に難しく、菌の増殖や異臭を引き起こしてしまう可能性があります。
<対策>
- トイレにSAP(樹脂)とおがくずを混ぜたものを入れましょう。排泄物の水分を吸収し、においも抑えてくれます。
- 排泄物は抗菌性や消臭性のある袋に入れて捨てましょう。菌から発生する二次災害を防ぐことができます。
3. 衣類や寝具
災害時は洗濯の頻度が減り、入浴も困難な状況になります。そのため、衣類や寝具には汗や垢が付着し、体温や湿気で菌が増殖します。
<対策>
- 衣類や寝具は天日干しによる紫外線殺菌を行うことがおすすめです。洗剤による洗濯ができない場合でも菌の増殖を抑えることができます。
- 豪雨や台風などの季節は、湿度と気温が高くなります。できるだけ湿気がたまらないように、窓などを開放して換気を十分行うように心がけましょう。
地震などの災害時には、菌やウイルスが増殖しやすい環境になります。災害時に自分や家族の体を守るためにも、今回伺ったお話をぜひ覚えておきたいですね。