子どもにとって“性”は謎だらけ……
わたしが小学校6年生のときのこと。「エイズという病気を正しく理解する」を目的として、エイズの授業時間が設けられました。授業を受けるに当たって、まずは書籍などを読んで自分なりにエイズに関する情報をまとめてきましょう、という課題が出され、その夜、初めて聞くエイズという病気について調べることになります。
みなさんもご存じの通り、エイズは性行為による感染、血液を介した感染、母子感染の3つの感染経路があるわけですが、そもそも性行為がなにかわかっていない当時のわたし。ぼんやりとした頭でさらに調べていくと、今度は“コンドーム”という謎の単語が登場します。見慣れぬ・聞き慣れぬ日本語に戸惑いながらも、わたしは翌日の授業に備えました。
大人は一番大事なことを教えてくれない!
さて、授業当日。子どもたちは各々調べてきた内容を発表、先生も真剣に授業を行います。が、しかし。感染経路の1つである性行為や感染リスクを減らすコンドームの説明が超省略されているではありませんか!!
「エイズに感染している人と手を繋いだり、同じお皿の食べ物をつつき合ったりするだけで感染することはありません。だから、もしエイズに感染している人に出会ったとしても不要に恐れてはいけない」
このようなメインメッセージが伝えられ、授業は終了。わかったようなわかっていないような……雲を掴むような感覚はほかの子も同じようでした。授業後、わたしを含めた仲良し4人組が集まると「コンドームってなに?」「性行為ってなに?」と互いに質問し合ったことを記憶しています。
性の質問に答えたがらない大人たち
そのうちの1人、Aちゃんは授業前日、お母さんにコンドームについて質問したそうです。しかし答えたがらないお母さんはお父さんにバトンパス。そしてAちゃんのお父さんは新聞に目を落としながら「知らない……」と呟いたそう。
知らないわけないでしょ!と、するどいツッコミがお母さんから入ったのは言うまでもありません(笑)結局、Aちゃんは両親から明確な回答を得ることができなかったのです。
そして授業後。わたしたち4人は、国語辞典のコンドーム欄を前に悶絶していました。「なんてことを親に質問してしまったんだ……」と両手で顔を覆っていたのはもちろんAちゃんです。
嘘やごまかしはご法度です
これは25年程前の話で、性に関する情報を子どもと共有する親など極稀な時代。じゃあ今はどうか。「コンドームってなに?」と質問してくる子どもに対し「男の人のペニスに被せる袋のことよ」と淡々と答えられる大人はどのくらいいるのでしょうか。
きっと、25年前のAちゃんのお母さんやお父さんと同じ反応をする大人たちがほとんどなのではないかとわたしは想像します。だって、大人って言いにくいことをごまかしたり省略したりすることが得意でしょう?
子どもからの性の質問には淡々と答えればいい
子どもと関わる上でわたしたち大人に必要なのは、本当のことを伝えることではないでしょうか。「コンドームってなに?」という質問をされたらそれがどういうものか淡々と教えたらいい。わたしが友達と国語辞典を使って調べたように、子どもと一緒に国語辞典を開くのもいい。
もしかしたら、コンドームがなにかを知ることで子どもは驚くかもしれない。その時は、親のあなたが「驚くことではないのよ」と一言添えてあげればいい。だって、本当に驚くものではないのだから。
事実を伝えることが性教育の一歩
言いにくいから言わない、言いにくいからごまかす、言いにくいから隠す。これってそもそも教育として、子どもへの対応として問題があると思いませんか?「本当のことを言う」これが性教育の一歩でもあるとわたしは考えています。