教えてくれたのは……北村 貴子さん
「夫婦関係カウンセリング すまいる相談室」代表カウンセラー。
夫婦問題・離婚カウンセラーの資格保有。プラットフォーム型カウンセリングの登録カウンセラーとして離婚相談やDV問題に従事。その経験を経て2019年独立。 メンタルケア心理士として精神医療の研究にも取り組む。現在は横浜市を拠点に、オンラインでは国内のみならず海外からも依頼多数。
「モラハラ」を受けやすい人の特徴
――前回「モラハラをする人の特徴」についてお話しいただきましたが、“モラハラをされる側”にも特徴はあるのでしょうか?
モラハラを受ける側に見られる傾向はあまりなく、誰でも受ける可能性があると言えます。しかし、「相手を怒らせたのは自分のせいだ」と自責しやすく、やさしい人ほど深みにはまってしまうことはあるかもしれません。
前回お話したように、モラハラをする人は表面上ではわからないことが多く、結婚後にはじめてわかるケースも珍しくないことです。経済的不安やお子さんがいることなどもあり、結婚してからではその環境から抜けづらくなってしまう方も多いです。
モラハラを悪化させないための適切な対応方法
――さまざまな理由があり、その環境から抜けられないとなると、適切な対応方法を知りたいと思う方も多いと思います。モラハラをするパートナーに対して、どのような対応をするのがよいのでしょうか?
相手の怒りを抑えたいがために、すぐに謝ったり言いなりになったりする方もたくさんいらっしゃるのですが、その対応がモラハラをエスカレートさせてしまうケースが多く見られます。
そのため、相談者の方には「自分に非がないのであれば、毅然とした態度でいてよい」とアドバイスさせていただいています。ただ、やはり話し合いが成立しないケースも多くあるので、受け流し方は模索しなくてはなりません。
――毅然とした態度をとりつつ、受け流すこともマスターしていくのですね。難しいですね……。
相手に合わせてどのように受け流すのがよいのか、さまざまな方法でトライしていくしかないところはあります。モラハラをする人は自分を気にかけてほしい「依存心が高い人」だったり、「ストレスに弱い人」だったりする人も多いので、気にかけてあげることも対応策のひとつです。
一筋縄ではいかないことも多いのが現状なのですが、カウンセラーの働きかけで治るものではないので、夫婦として過ごしていくのであれば割りきることも必要になってしまうかもしれません。
――言いなりにならずに自分の意思を相手に伝える必要があるということは、モラハラをしている人に「モラハラだ」と指摘するのは効果的なのでしょうか?
パートナーに「モラハラだ」と言われたことで不安になり、カウンセリングに来られる方もいらっしゃるので、指摘することが一歩になる場合もあります。相手次第ではどうにもならない場合もあるのですが、考えるきっかけになることは確かです。向き合えた人だけが改善できていると思います。
離婚宣告をきっかけに「変わる」ことを決意した男性
――実際に、モラハラが改善されたケースはありますか?
あります。私が代表を務める「すまいる相談室」には、認知の偏りを正して行動を変えることを目的とした「DV・モラハラ加害者カウンセリング」というセッションがあります。ある男性が、奥さんから離婚宣告を受けたことをきっかけに、ご自身で探して来られて、このカウンセリングを積極的に受けられていました。
その後、さらにNPOの「DV更正プログラム」も受けられたそうです。奥さんとも後日面談させていただいたのですが、今までは怖くてなにも言えなかったけれど、相手の考え方が変わってきたことで自分の意見を言えるような関係になったそうです。
モラハラをしている人が自覚がない場合は、こちら側の努力だけで解決することはまずないのですが、自覚をして改善する意識があれば、変わっていくことができるのだと感じます。
自分らしく生きられる選択を
――モラハラをしている側も、されながら我慢している側も、自分から変えていこうとするのが大切なのですね。
モラハラの自覚がない、認めてもくれない、問題意識ももっていない男性もたくさんいらっしゃるので、辛くて離れる選択をとる女性ももちろんいらっしゃいます。離婚後に本当に自分らしく生きられるようになったという声もたくさんいただくので、離れることで解決する方法もよいと思います。
修復、離婚、どちらを選んでも、大切なのは「自分のことを変えるのは自分」なのではないでしょうか。
4記事にわたって、夫婦問題・離婚カウンセラーの北村さんにお話を伺いました。
つらい思いを抱えて我慢し続けるのではなく、カウンセラーや周囲に相談してみるなどの“一歩目”を踏み出してみると、自分自身も環境も変えていけるかもしれません。悩んでいる方が自分らしく生きる人生を選択できることを願っています。