どうして不安になるの?
そもそも、私たちはなぜ不安になるのでしょう。
「不安」は、危険を知らせてくれるアラームのような機能を持っています。「危険がくるかも」と察知することで、回避するための対応(戦うか、逃げるか)ができるように体と心を準備する。自分を守るために必要な機能として備わっているんですね。
とはいえ、「漠然とした不安」という言葉もあるように、明確でないことに対する「大切なものが脅かされてしまいそうな怖さ」から抱きやすいのが「不安」という感情。誰もが抱く感情ではありますが、どんなことにどのくらい「不安」を感じるかは、物事の捉え方などの思考パターンによるところも大きいのです。
では、どんな思考を多く使っていると「不安」にとらわれやすくなるのでしょう。ひとつひとつ見ていきましょう。
1.「良い」と「悪い」に分ける思考
「白か黒か」「善か悪か」など二つのうちのどちらかに当てはめる思考を二分法的思考と呼びます。
物事を「良い」か「悪い」かで捉えるとき、私たちは、つい「悪い」と捉えたほうを排除したくなるもの。そのため、誰かの行動を見て「悪い」と捉えると責めたくなりやすいですし、逆に自分が「悪い」と思う行動をした時には「責められる」不安を感じやすくなります。
「悪い」を排除しようとするあまりに、完璧主義になりやすいのも、この思考の特徴。「完璧でないこと=悪いこと」と捉えてしまうと、危険を知らせるアラームが作動しやすくなってしまうんですね。
また「不安=悪いもの」と捉えると「無くさなくちゃ」と思ってしまいますが、「不安」って、なくそうとすればするほど強くなってしまいがち。
もしも、何かを「悪いもの」と捉える思考が強いかも?と気づいたら、その背景にある事情を想像してみましょう。「そんな時もあるよね。仕方ないよね」そう思える心の余裕が生まれ、不安がやわらいでくるはずです。
2.過去を基準にする思考
「不安」とは、「まだ起きていないことに心がとらわれている状態」とも言えます。つまり、心が「今」を通り過ぎて、「未来に悪いことが起きるのでは?」と想像している状態なんですね。
何が起こるかまだわからないのに、いったい何を根拠に「悪いことが起こるのでは?」と私たちは想像しているのでしょうか。
実は、その根拠になっているのが過去の経験。「昔、こういう思いをしたから、またそれが起きるのでは?」と想像し、備えることで、もう二度と嫌な思いをしないよう自分を守ろうとしているんです。
「また嫌な思いをするのでは?」と不安になっている自分に気づいたら、「過去」と「今」を切り離して、「本当はどうなりたい?」と、「不安」の裏側にある「なりたい未来」に目を向けてみて。そのために必要な具体的な行動をとることで、不安は落ち着いてくるでしょう。
3.他人の言動や世間を基準に自分自身を評価する思考
調和を大切にするのは素敵なことなのですが、まわりに合わせることに意識が向きすぎてしまうと、いつの間にか、まるで他人や世間が「正解」で、それに合わせられない自分を「不正解」かのように捉えてしまうことがあります。
その結果、知らず知らずのうちに、他人の言動や世間を基準に自分自身を評価している、なんてことに。
「あの人が〇〇してくれないのは、私が嫌われているから」
「まわりの人ができていることができないなんて、私はダメ」
そんな思考が強くなると、常にまわりを見ながら自分の言動を決めていくことに。「相手を不快にしていないかな?」「嫌われないかな?」「おかしくないかな?」などなど、まわりを「正解」にして、それに合わせようとすればするほど、「自分が間違っていないか」という不安が大きくなってしまいます。
「人は人。私は私」。そう切り離して、基準を自分に戻していきましょう。他人の言動と自分の評価をつなげなくていいんです。「あなたはそう思うのね。私はそうは思わないけど、どっちもあっていいよね」とそれぞれの違いを認めていくことで、不安にふりまわされにくくなっていきます。
いかがでしょうか。
研究によると、「心配事の9割は実現しない」という結果が出ているとか。「実際に起こったら、その時に考えよう」くらいに思えると、今に集中しやすくなりますね。
そうはいってもいろんな考えが浮かんで不安になってしまう……。そんな時は自分の思考パターンに気づいてみましょう。「絶対にこうなるはず」と不安いっぱいになっていた気持ちが、「あれ?妄想かも?」と思えたら、もう大丈夫。「私を守ろうとしてくれてありがとう」と不安にお礼を言って手放していきましょう。