“思い通りに育てたい”のウラにある「親自身のコンプレックス」とは?

家族・人間関係

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2024.05.03

臨床心理士・公認心理師のyukoです。子どもの成績が伸びない、他の子より劣って見える、どうしてもっと頑張れないの? そう感じてもやもやするときってありますよね。子育てにつまずいたとき、背景には親自身のコンプレックスが隠れているケースが多いんです。子育てに反映されやすい親のコンプレックスについて考えていきます。

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なんで思い通りに育ってくれないの?

多くは望まないけど、なんとなく子どもはこんな風に育つんだろうな、あんな風に育ってくれたらな、と感じる親御さんは多いかと思います。

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ただ、年を重ねていくたびに予想とは違う方向に進んだり、思わぬ挫折があったり。全てが思い通りに進む親子はほとんどいないでしょう。

その中には「まあ、子どもの人生だから」と割り切ったり、前向きに考えられる方もいれば、折り合いをつけるのが難しい方もいます。
折り合いをつけられないとき、背景には親自身のコンプレックスが隠れているかもしれません。

子育ての中で表れやすい親自身のコンプレックスについて考えていきます。

子どもには自分が選べなかった選択肢を選んでほしい

小さい頃は医師になりたかったAさん。しかし親の勧めや金銭的な理由もあり、看護師の道に進んだ。あと一歩あそこで踏ん張って勉強をしていたら、もし家計にもう少し余裕があれば。自身が親になった今、子どもに対して、その「もし」を全て叶えてあげられる。近くで医師という職業を見ているからこそ、医師の待遇のよさや安定性も実感している。子どもには絶対医師になってほしい。

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自身が憧れていた職業、手が届かなかった望みを子どもに託す方は多いです。

特に、子どもが勉強好き、成績が悪くないなどの条件が揃うと、その夢に手が届くかもしれないと感じるんですね。

自分が得られなかったからこそ「わが子にとって一番よい選択に違いない」と思いやすいのかもしれません。

子どもには自分と同じ苦労を味わってほしくない

夫の転勤で子育てをなじみのない地方で一人頑張ってきたBさん。地元で親の力を借りながら子育てをしていた同級生が羨ましかった。だからこそ県外の大学に進学したいという娘の選択にイエスと言えない。近くにいたら大変なときにすぐ助けてあげられるし、ゆくゆくは子育ても手伝ってあげられるのに...

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自分が経験してきた苦労を味わってほしくないから、子どもを似た道に送り出したくないというケースもあります。

この場合、「自身の親に孫と過ごす時間を作ってあげられなかった」「近くにいればもっと親孝行できたのに」などの後悔も含まれているかもしれません。

自身の思いに加え、自身の親(子どもにとっての祖父母)の想いも背負い、わが子に託しているのかもしれませんね。

子どもに自分が感じてきた悔しさを乗り越えてほしい

小さい頃はピアノやスイミング、絵画教室などの習い事を頑張っていたCさん。しかしそのどれも、1つ下の妹の方が要領よくこなし、誰に比べられたわけではないけど劣等感を感じていた。わが子は今10歳、妹にも9歳の子どもがおり、わが子の従妹として仲が良い。不器用なわが子と器用に立ち振る舞う妹の子どもを見ていて、ついもどかしくイライラしてしまう。ひとつでもその子に勝てるような何かを身に着けてほしい。

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親自身が幼少期に感じた劣等感や悔しさが、わが子に反映されるケースもあります。過去の自分を見ているようで、イライラしたり、もどかしく思う方は多いです。

そして、自身が感じていたような悔しさを晴らしてほしい、乗り越えてほしいと感じやすいんですね。

「自分が得られなかったもの」を把握しておく

子育てには親の価値観だけではなく、親自身が辿ってきた成育歴やコンプレックスが反映されやすいもの。特に、辛さや悲しさなど「負の感情」や「得られなかったもの」は表れやすいんです。

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もちろんそれは悪いことばかりではなく、親自身の経験が子育てに役立ったり、子どもの支えになるときも多いでしょう。

しかし、「子どもとの関係が悪くなってきた」、「こんなはずじゃなかったのにとイライラする」などの問題が生じたときは親自身の課題が隠れているかもしれません。

何を「負」と感じてきたか、何を得られなかったか、何を諦めてきたか。親自身で把握し、気持ちを整理しておくことが大切なんですね。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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