家族で「タブーになりやすい話題」をそのままにする危うさ

家族・人間関係

stock.adobe.com

2024.06.27

臨床心理士・公認心理師のyukoです。職場や友人の間で、なんとなく触れてはいけない「タブー」はありませんか? 実は家庭にも「タブー」は隠れており、暗黙の了解として避けられているもの。中にはそのタブーによって、息苦しさを感じている子もいます。大事だからこそ踏み込みにくい、家族中での「タブー」との付き合い方を考えていきます。

広告

うちは会話が多いから問題ない?

子育てをしている中で、関わり方が合っているのかどうか、うちの家族は普通かどうか、心配になるときはありませんか?

何をもって「大丈夫」と判断するかは難しいですが、「会話が多いから、なんでも話せているから大丈夫」とは限りません。
いくら会話を重ねていても、避けている話題があったり、表面的に留まっていたら、子どもが話したいことを話しきれていない可能性があるからです。

親が無意識に避けてしまいがちな話題、話しにくい「タブー」との付き合い方について考えてみます。

家族の中で「タブー」になりがちな話題について

親族付き合いに関するタブー

母方祖父母や父方祖父母、おじ・おば、いとこなど。関係の良し悪しは各家庭それぞれであり、親子関係、血縁の繋がり特有の複雑性もはらんでいます。

夫婦同士では暗黙に共有されていたり、夫婦の間だけの秘密があるかもしれません。

子どもが物心ついてからは、「なぜママの方のおばあちゃんには頻繁に会うのに、パパの方にはあまり行かないのか」「友だちはいとこ同士でよく遊んでるみたいだけど、うちは会えないの?」などの疑問がわいてくるときがあります。

悩む子ども出典:stock.adobe.com

大人同士の複雑な関係性を子どもに伝えるのは不適切な場合も多いです。ただ、なんとなくひた隠しにされている、話題に触れたら不穏になる状況はあまりおすすめできません。

また、避けたいのは親以外の口から曖昧な情報や噂が伝わること。その場しのぎの対応でなく「子どもにどう説明するか」も含めて、大人同士で話し合っておけるとよいでしょう。

宗教に関するタブー

宗教に関しては、日本特有の歴史的背景や文化、価値観があり、学校教育も含めてタブー視されやすいテーマ。
思想、信仰、家系的な歴史など複雑な事情が絡み合うものなので、他人が踏み込むべきではない領域であり、タブー視される必要性もあるのかもしれません。

ただ、子どもが大人になる過程においては、様々な出会いがあり、宗教観に触れていく可能性があります。

日本では今、6割以上の方が特定の宗教を信仰していないとしており、「なんだかわからないけど避けたほうがいいもの」というイメージを持たれている方も多いよう。
しかしそれも日本特有の文化であり、世界に視野を広げると常識とは限りません。

宗教に関するタブー出典:stock.adobe.com

話せる範囲で、自分の家のことについて、関わりのない宗教に対する捉え方について、考えてみる機会も大切なのではないでしょうか。

性別・性的指向に関するタブー

小学校中学年あたりから特に、自身の性について悩みを抱える子は増え、戸籍上の性とは異なる感じ方をする子も少なくありません。

ただ、性別や性的指向に関しても、個人にとってとても大切な領域であり、家族であっても侵害されるべきものではありません。
仮に子どもが悩んでいたとしても、親が悩みを想定できていたとしても、本人のタイミングを待つのも必要です。

性別・性的指向に関するタブー出典:stock.adobe.com

中には、親が想像もしていなかった悩みを子どもが抱えている場合もあります。
日常会話の中では、「もしかしたら~」という考えを片隅に置きながら、強い偏見は避けて会話するのがベターではないでしょうか。

家族の「普通」と社会の「普通」

家族とは不思議なもので、毎日一緒にいても、知らず知らずのうちに秘密や隠し事、タブーが存在しているもの。
どんな家族であっても、互いの全てを知るのは不可能ですし、明け透けにするのがよいとは限りません。

家族出典:stock.adobe.com

家族の中での「普通」は社会における「普通」とは限りません。しかし、子どもは家族から離れて、社会の「普通」に触れざるを得ないのが現実。
そしてときに、親は何が「普通」なのかわからなくなるのが、家族における危うさといえるのかもしれません。

今回挙げたテーマ以外にも、親の仕事や家の経済状況、祖父母の介護など、家庭によって様々な話しにくい話題はあるかと思います。
現状を変えたいとき、「普通」がわからなくなったときには、家族内の話せる相手と話し合ったり、気の許せる友人、もしくは第三者(専門家)に相談してみるのもひとつです。

広告

著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

気になるタグをチェック!

saitaとは
広告