教えてくれたのは……吉田 美智子先生
臨床心理士、公認心理師。はこにわサロン東京・代表。
スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年はこにわサロン東京を開室。主な技法は、ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析。子育ての相談、親子関係、トラウマケア、ストレスケア、アンガーマネジメントなどの相談に携わる。
『声かけで伸ばす 内向的な子のすごい力』(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)
著者:吉田 美智子
定価:1,760円(税込)
よくあるシーン1.「友だちの輪の中に入れない」
たとえば、子どもがみんなで遊んでいるときに、わが子だけが輪の中に入ろうとしない……。こんなときは、どうするのが適切なのでしょうか。
吉田先生「子どものためを思い、背中を押して励まそうと声をかける親も多いですが、内向的な子どもにとっては励ましの言葉が逆効果になってしまうこともあります。
勇気づけようとしてアドバイスをたくさんしても、子どもは不安な気持ちをもっている状態です。それが解消されないまま、がんばらせてしまうのは適切ではありません。」
励ましの言葉、共感の言葉の具体例は以下のとおりとのこと。内向的な子どもには、励ましの言葉よりも共感の言葉に変えて伝えてあげるとよいのだそうです。
<NG:励ましの言葉>
- 「こわくないよ」
- 「やってごらん」
- 「みんなもやっているよ」
<OK:共感の言葉>
- 「入りにくいよね」
- 「緊張しちゃうよね」
- 「待っててみようか」
吉田先生「共感の言葉をかけることで、子どもにとって親が安心できる場所になります。子どもの安心を優先してあげて、自分でいけるタイミングを待ってあげられるといいですね。
内向的な子どもは自分のペースで友だちづくりをするので、基本的に心配しなくていいと思います。ただ、子どもが困ったり悩んだりしているときには、気になる友だちに話しかけるアイデアを一緒に考えるなどしてサポートしてあげられるといいですよ。」
よくあるシーン2.「喧嘩をしてしまった」
子ども同士でよくあるのが、使っていたおもちゃを取られてしまったり、意地悪されてしまったりなどのトラブル。輪の中に入ろうとしないケースと同じように、共感の言葉をかけるのが適切なのだと、吉田先生はおっしゃいます。
吉田先生「良かれと思って『なんで嫌だって言わないの』『ちゃんと取り返しなさい』と言う親も多いと思います。『嫌だって言っていいんだよ』と伝えることは必要なときもあるのですが、『なんでしないの』『こうしなさい』という言葉は、子どもをコントロールしようとしていることになるので望ましくありません。
先ほどと同じように『悔しかったね』『困ったね』『どうしたらいいかな』など、共感の言葉に置き換えた伝え方にするといいですよ。」
大人が「短所」だと思っていることは、実は「長所」にもなる
吉田先生によると、大人から見て「直したほうがよい」と思うことも、実は子どものかけがえのない長所であり、尊重してあげることも大切なのだそうです。
吉田先生「中には、おもちゃを取られるなどの意地悪をされたときに、嫌だと感じなかったり、すんなり『いいよ』と譲れたりする子どももいます。
大人の目線からだと『自分の権利を守れないなんて』と考えがちなのですが、その子の性質として、こだわらずに譲ってあげられる力があるのなら、『それも才能のひとつ』だと捉えてあげてほしいかなと思うんです。
トラブルでにらみ合っているような人たちがいる場面などで、その子が持っているやさしい気持ちや視点が役に立つ日がきっとあります。短所だと捉えて指摘して、“親が思う良い方向”にひっくり返さなくてもいいと思いますよ。
短所と長所は表裏のセットです。子どものいいところを見つけて認めてあげられるといいですね。」