教えてくれたのは……五百田達成さん
心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。
東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。サラリーマンとしての実体験と豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。
『話し方で老害になる人尊敬される人』
著者:五百田達成
価格:1,760円(税込)
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
家庭内の“老害”とは
最新刊『話し方で老害になる人尊敬される人』を刊行した“話し方のプロ”五百田達成さんは、「家庭内でも“老害”は起こる」とおっしゃいます。
五百田さん 「『話し方で老害になる人尊敬される人』では、ビジネスシーンやママ友とのあいだ、パート仲間となど、さまざまな場面で“老害にならない”ために役立つコミュニケーション術を紹介していますが、『子どもとの会話に役立ちました』とうれしい声も届いています。老害が起こる原因は、『距離感のバグ』を起こしてしまうこと。子どもに対して『私は親なんだから』と距離を詰めすぎると、子どもから煙たがられてしまいます」
子どもと接するときに気をつけたい「4つのNG行動」
では、家庭内で老害にならないためには、子どもとどのような話し方を心がけたらいいのでしょうか。五百田さんに教えていただいた4つのNG例を紹介します。
《NG例1》「あなたのために」というフレーズを使う
×「あなたが大人になったとき苦労しないように言ってるのよ」
×「こんなこと、お母さんくらいしか言ってあげる人いないんだからね」
このような言い方は、子どもからすれば「大きなお世話」。効果はあまり期待できません。子どもの部屋が散らかっていて片付けてほしいときは、「整理整頓したほうがあなたも気分いいでしょ?」ではなく、「部屋が散らかっていると私がイライラするから片付けて」と伝えましょう。私を主語にして伝える「I(アイ)メッセージ」は親子の会話にも役立つコミュニケーション方法です。
《NG例2》注意するとき「今の若い子は〜」と枕詞をつける
「今の子はゲームばっかりやって……」と子どもの前で嘆いていませんか? 「若い子」という言葉で一般化して決めつけるのは、目の前にいる子どもの人格・個性を認めていないといっているようなもの。世代間のズレ・ギャップを強調することになり、「お母さんにはわからないよ!」と言われることにもなりかねません。世代でくくって納得したい気持ちはグッと堪えて、子ども個人と向き合うような話し方を心がけましょう。
《NG例3》第三者の目の前で、子どもをいじる
親戚やママ友と話しているとき、子どもの目の前で「うちの子は本当にだらしなくて」と話していませんか? たとえ愛情を込めていたとしても、子どもの目の前で、第三者に子どものネガティブな評価を話すのはNG。取引先に部下を紹介するときのようなイメージで、「〇〇なところ(ダメなところ)もあるけど、こういういいところもあるんですよ」と紹介しましょう。
《NG例4》「恋バナ」をする
「いま付き合っている子いるの?」などのストレートな恋バナは、子どもにはふらないようにしましょう。「えっ! 付き合ってる人いないの? お母さんが若いころはね……」なんて話し方は、“ダメ”のコンボです。子どもの好きなことを話題にしたいのなら、「推しの話」がおすすめです。「いまどんな音楽聞いてるの? ちょっと教えてよ」と切り出して、もし子どもが布教してくれたら御の字ととらえましょう。
コミュニケーション方法を変えると、親子関係も変わる!
五百田さん 「『あー、お父さん/お母さん、キモい』などと言われているうちは、親子関係はまだ大丈夫。でも、キモいと言われなくなったら……関係回復は難しくなりますね。子どもが出しているサインを見逃さず、コミュニケーション方法を改めるきっかけにしてみてください」
五百田さん 「親とは、そもそも家庭で老害にならざるを得ない存在です。『うちの親はフェアでフレンドリーなコミュニケーションをしてくれる』と思っている子どもはごくごく稀です。とはいえ、永続的に距離が近い状態だと『毒親』など違う名称がつきかねませんので、距離を詰めすぎたと気づいたら、すぐ微調整する。これを繰り返すことで、関係が徐々に正常化していくケースもあります」
五百田さん 「とても極端な言い方にはなりますが、心の中で『子どもは私の所有物だ』と思っていても、それを表に出さないのならアリだと僕は思っています。ただ、その気持ちを出すのはグッと堪えて、コミュニケーション方法だけは変えてほしい。そうすることで、関係が良くなることはあります。より良い親になろうとすることも素敵なことですが、『コミュニケーション』というテクニックを磨いて、結果的に相手との関係が良くなれば、100万個くらいある悩みごとの1つは解決する。そうした積み重ねで、少しでもハッピーになってもらえたらと思っています」
できることから始めることで、親子関係がより良いものになる可能性があるのですね。五百田さんに教えていただいた子どもへの適切な話し方を、ぜひ試してみてください!