教えてくれたのは……織田 奈央子先生
摂南大学農学部 食品栄養学科助教。専門分野は、栄養学。五大栄養素であるミネラルの中でも特にリンに注目して研究。主な研究には「ミネラル代謝の変動と生体への影響」「食事性リンに着目した病気が出来上がっていく仕組みや予防法」などがある。
「昆布」の食べ過ぎによって起こりうる健康リスクとは
煮物や汁物などに旨みをプラスしてくれる昆布。じつは、昆布を食べ過ぎるとリスクがあり、摂取量には注意が必要なのだそうです。織田先生に、その理由について伺いました。
織田先生:昆布をはじめとする海藻類には「ヨウ素」というミネラルが豊富に含まれており、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料となるミネラルです。
日本は海藻を食べる独自の文化を持っており、世界でもヨウ素の摂取量が多い国のひとつです。しかし、実際に体に必要なヨウ素はわずかで、18歳以上の成人では1日の推奨量は130μg(0.13mg)、耐容上限量は3,000μg(3mg)とされています。(「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」より)
ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るために必要な一方で、食品などから過剰に摂取すると甲状腺ホルモンが次第に作られなくなり、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。そのため、摂取量には注意が必要です。
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適切な摂取量であれば体にうれしいメリットも!「1日の適量」は?
食べ過ぎはNGですが、適切な量の摂取であれば体にとってうれしいメリットがあるとのこと。1日にどのくらいの量が望ましいのでしょうか。
- 1日のヨウ素の推奨量:0.13mg……昆布で換算すると「約65mg」
- 1日のヨウ素の耐容上限量:3mg……昆布で換算すると「約15g」
織田先生:昆布は「1日に15g」を超えないように気をつけるとよいでしょう。
上述したように、昆布はヨウ素をはじめとするミネラルを豊富に含んでいます。100gあたりで比較すると、昆布に含まれるカルシウムはなんと牛乳の約6倍です。また、昆布を煮たときなどに出てくる独特の粘り成分は「アルギン酸」や「フコイダン」といった水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は、血糖値やコレステロール値の上昇を抑制する働きのほか、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を良好に保つ効果があります。
一緒に食べて栄養の吸収アップ!おすすめの食べ方
織田先生によると、昆布の栄養を効率的に摂取するためには、一緒に食べるとよい食材があるのだそうです。おすすめの食べ方を教えていただきました。
織田先生:昆布と大豆の煮物など、大豆と組み合わせて食べることがおすすめです。昆布には血圧を下げる効果が期待できる水溶性食物繊維のアルギン酸やフコイダン、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれています。また、大豆には大豆サポニンやレシチンなど動脈硬化予防に効果が期待できる成分が豊富に含まれています。一緒に食べることで、さらに動脈硬化予防の効果が期待できますよ。
適正量でおいしく健康的に食べよう
昆布をおいしく健康的に食べるためには、1日の適切な摂取量を知っておくことが大切です。組み合わせる食材の工夫もしながら、上手に栄養を摂取してくださいね!