教えてくれたのは……小林 弘幸先生
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上の指導に携わる。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『整える習慣』(日経BP日本経済新聞出版本部)、『捨てる勇気100』(宝島社)など、著書・監修書多数。
『腸から生まれ変わるカラダ』
著者:小林 弘幸
価格:1,540円(税込)
発行:宝島社
全身のトラブルの原因になりうる「ゾンビ腸」
バランスの悪い食生活やストレスなどのさまざまな要素によって腸内フローラのバランスが乱れ、腸のバリア機能が衰えた状態のことを、小林先生は「ゾンビ腸」と命名しています。
ゾンビ腸になると、腸内で悪玉菌が増えて本来排出されるべき老廃物が腐敗し、毒素が発生することに。この毒素が血管を通じて全身に広がってしまうことで、多くの健康問題を引き起こす可能性があるそうなのです。
腸内の悪化が引き起こす「5つのトラブル」
“腸のゾンビ化”がもたらす具体的な悪影響について、小林先生が挙げられている全身のトラブルの一部をピックアップしてご紹介します。
1.肌荒れ、シワ、シミなどの肌トラブル、髪のハリやコシの低下
肌トラブルには、腸内環境が大きく影響していることが、多くの研究によって示されています。
腸内環境が悪化すると、本来であれば腸内にとどまっているはずの物質や細菌が腸から血管内へ侵入し、体内に悪影響を与える物質が増えることで皮膚の炎症が引き起こされることに。これが肌トラブルの原因になるのです。
また、肌だけでなく、髪の毛に栄養を運ぶのも血液の役目のため、ゾンビ腸は髪の毛のハリやコシにも影響を及ぼすこともあります。
2.カラダに冷えを感じる
ゾンビ腸による影響で血液がドロドロの状態になると、心疾患などの大病につながるほか、冷えの症状が出るなどの血流関係のトラブルが出ることもあります。
腸と自律神経は血流にも影響を与えているため、暖かい日中でも指先が冷えてしまう人は、この3つのバランスが崩れているのかもしれません。
3.加齢臭、口臭が気になる
洗っても消えない体臭にも、腸内環境が関わっています。
食事後に分解される物質には、アンモニアをはじめとする嫌なニオイのものが多く存在しており、通常は肝臓や腸が、悪臭のもととなる物質がカラダの外に出るのを防ぎます。しかし、肝臓や腸の機能が低下すると防ぎきれず、血流に乗って皮膚から分泌されることに。これが体臭の原因です。
また、便秘が長く続くと便が腐敗して有害物質が発生し、血液に溶け出し全身に回り悪臭の原因に。さらに腸と口は一つの道で繋がっているため、便秘による悪臭が口から漏れ、口臭につながることもあります。
4.不安な気持ちになりやすい
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸の状態が脳の調子に影響を及ぼすこともわかってきています。腹痛や便秘、下痢などが続く過敏性腸症候群を発症している人は高い確率で、不安症状やうつの症状が出ているとのこと。
「セロトニン」や「ドーパミン」といった幸せを感じる物質は、約95%が腸壁でつくられているため、腸内環境が悪化するとこの働きも鈍り、落ち込むことが増えてしまうのです。
5.朝起きたときに熟睡できた気がしない
腸内環境のバランスが崩れると、カラダと脳の働きが抑えられている「ノンレム睡眠」の時間が減り、カラダは休めているけれど脳は活発に活動している状態の「レム睡眠」の時間が増加することが、マウスによる実験でもわかっています。眠っていても脳が十分に休めないため、これが続くと寝つきや寝起きの悪さにもつながってくると考えられているのです。
また、睡眠時間の短い人は腸から分泌される抗菌物質が少なくなり、腸内環境のバランスが崩れやすくなるため、睡眠不足にさらに拍車がかかることに。「腸内環境を整えること」と「十分な睡眠時間を確保する」ことは、良質な睡眠のためにどちらも欠かせないポイントです。
生活習慣を見直して「ゾンビ腸」を改善することが大切
これらの全身のトラブルの原因には腸内環境が関わっているため、食生活や運動などの生活習慣を見直すことで、ゾンビ腸は簡単に回復できるのだと、小林先生は言います。
次回の記事では「ゾンビ腸の改善に効果的な食品」について、ご紹介します。