教えてくれたのは……清水 聖童先生
精神科専門医・医療法人社団燈心会ライトメンタルクリニック理事長。心理療法、生活習慣、栄養学など幅広い知識を背景とした精神予防医学を専門とし、病前から介入する精神医療を模索したクリニック「ライトメンタルクリニック」を立ち上げる。メンタルヘルスに関する記事監修や講演、取材対応も積極的に行い、専門的な知見を広く発信している。
「5月病にならない人」が無意識にやっている5つのこと
新年度が始まり、仕事や家庭に新しい変化が加わることが多い5月は、知らず知らずのうちにストレスを抱えやすい時期です。「やる気が出ない」「理由もなく気分が落ち込む」といった状態は、いわゆる「5月病」のサインかもしれません。
清水先生によると、5月病になりにくい人は、心と身体のリズムを整えるための小さな習慣を普段から生活に取り入れているとのこと。今回は、「5月病にならない人」が無意識にやっている行動や習慣について教えていただきました。
1. 感情の小さな変化に気づき、自分で調整している
清水先生:5月病になりにくい人は、「なんだかイライラする」「今日はちょっと気分が沈む」といった小さな心の変化に敏感で、自分なりのリセット方法を持っています。たとえば疲れを感じたら無理せず早く寝る、モヤモヤしたら散歩に出る、人と話して気分を整えるなど、感情のメンテナンスを無意識に行っているのです。この“こまめな調整力”が、心の疲労の蓄積を防ぎます。
2. 完璧を求めず「ま、いっか」で切り替える力がある
清水先生:高い理想や責任感は長所でもありますが、5月病を引き起こす原因にもなり得ます。その点、5月病にならない人は必要以上に自分を追い込まず、ある程度のところで手放す柔軟性を持っています。たとえば「今日は家事が半分しかできなかった。でもそれでOK」と自分を責めず、次に気持ちを切り替える習慣が身についているのです。これは自己肯定感の維持にもつながります。
3. 人とのつながりを自然に持っている
清水先生:孤独や孤立は5月病のリスクを高める要因の一つです。反対に、5月病にならない人は誰かと気軽に話したり、ちょっとした愚痴をこぼせる関係性を日常的に持っている傾向があります。それは家族であったり、友人、職場の仲間であったりと形はさまざまですが、「ひとりじゃない」と思えることが精神的なバッファーとなります。無理に相談するというより、“つながっている安心感”が心を支えているのです。
4. 生活リズムが安定しており、環境の変化にも対応できる基盤がある
清水先生:新年度のように生活環境が変わる時期には、誰しもストレスを感じますが、5月病にならない人は普段から生活リズムが整っており、変化に対する“回復力(レジリエンス)”を持っていることが多いです。規則正しい睡眠、朝の光を浴びる習慣、軽い運動など、無理のない健康習慣が身についていると、心の揺らぎがあっても早期に立て直すことができます。
5. 「できていること」に目を向けるクセがある
清水先生:5月病に陥りやすい人は「できていないこと」にばかり注目し、自分を責めがちです。一方で、心が安定している人は「今日も何とか乗り切れた」「朝ちゃんと起きられた」など、小さな成功や達成に意識を向ける習慣があります。これは意識的にポジティブに考えようとしているわけではなく、無意識に“日常の中で自分を認める視点”を持っている状態です。この姿勢が、ストレスに強い心を育てます。
完璧を目指さず、小さな成功を認めることから始めよう
5月病にならない人は、普段から無理をせず、自分のペースで日々を過ごすことを大切にしているのですね。
今回教えていただいた5つの習慣は、どれも簡単に始められることばかりです。小さなことでも続けることで、自然と心と身体に余裕が生まれます。心身の疲れをため込まない習慣を身につけて、健やかな毎日を過ごしましょう。