教えてくれたのは……マインドトレーナー 田中よしこさん
株式会社コレット代表取締役。心理学・脳科学、コーチングの知見を取り入れ、「自分を本当に知る」ことをメソッド化。個人セッションやセミナーなどを中心に、潜在意識を整え、本心と「未来の理想の思考」を引き出す方法を伝えている。著書に『自分の気持ちがわからない沼から抜け出したい』(KADOKAWA)がある。
「押しに弱い人」と「断れる人」の考え方の違い
他人からの頼みごとや要求を断るのが「難しい」と感じることはありませんか?
私のクライアントの中には、職場で同僚から頼まれた追加の仕事を断れずに引き受けて自分の仕事が滞ってしまったり、会社が嫌になってしまったりする人がいらっしゃいます。その反対に、気持ちよく断って、快適なライフスタイルを楽しんでいる人もいます。
「押しに弱い人」と「断れる人」は、どのような違いがあるのでしょうか。考え方の違いを見ていきましょう。
1. 自分の価値に対する認識
押しに弱い人は、自分の価値を過小評価しているケースがあります。
自己評価が低い人は他人からの評価に依存する傾向があり、他人の要求を断ることで自分の評価が下がると感じやすいことが研究で分かっています。このような考え方をする人は、日常生活で精神的な疲労を感じる可能性が高いかもしれません。
一方で、断れる人は自己評価が高く、自分の価値をしっかりと認識できています。「断っても大丈夫」「自分の人生に影響することはない」と思えているのです。
この考え方の違いが、他人からの要求への対応方法に差をもたらしています。評価と自分の感情を切り離して考える習慣を身につけましょう。
2. 罪悪感をコントロールできるかどうか
押しに弱い人は、他人の要求を断ることに対して罪悪感を持ちやすい傾向があります。そもそも“断ること=良くないこと”だと捉えているので、相手から強く通そうとされると、罪悪感に耐えられずに引き受けてしまうのです。
自分の意見を尊重した経験が少ないため、適切なコミュニケーションや対応がわからず、我慢するか爆発するかの二択になりがちです。
その反対に、断れる人は罪悪感を適切にコントロールし、自分の意思を尊重する方法を知っています。
押しに弱いと自覚がある人は、過去のパターンに縛られず、他人から意見を強く通そうとされたときに「自分はどうしたいのか」を考えることから始めてみましょう。
3. すぐに決めることが苦手
押しに弱い人は、「決断」が苦手です。そのため、周囲からの影響を受けて流されて過ごしてきている人も少なくありません。そして、相手の主張のほうが正しいような気がすると、ますます自分で決められなくなることも。
決断しにくい人は、すぐに反応するのが得意ではないことが多く見られます。しかし、ゆっくりと丁寧にコミュニケーションをとってみると、実は自分の意見を持っていることがわかることも多いのです。
時間をかけて考える、落ち着いて考えるなどして、自分で決断する練習を積んでいくことが大切です。
「自分」と「他人」をわけて考え、自分の選択を楽しんでいく
押しに弱い人は、「〇〇しなければ自分の印象が悪くなる」「人間関係に波風を立ててしまう」「自分の評価が下がる」といった固定観念に縛られがち。
一方で、断れる人は自己評価が高く、柔軟性があります。自分と他人との健全な境界線を引きながら罪悪感をコントロールし、よりよい関係を築くコミュニケーションスキルも備えているのです。
私たちにはそれぞれの人生の時間があり、自分なりの選択を楽しむ生き方があります。押しに弱くて困っている人は、断れる人の長所を上手に取り入れながら過ごしてみてくださいね。