教えてくれたのは……佐賀 俊文先生
公立学校共済組合関東中央病院 心臓血管外科部長/二子玉川女性のクリニック。杏林大学医学部卒業。日本外科学会外科専門医、心臓血管外科専門医、脈管専門医・指導医、血管内治療認定医。心臓大動脈の治療から下肢静脈瘤などの末梢血管治療まで幅広くこなす。メスを握る手術とカテーテルによる治療の両刀を使いこなすハイブリッド外科医。
冬場に起こりやすい「ヒートショック」とは
ヒートショックとは、どのような症状が現れる病気なのでしょうか。その引き金となるのは、“急激な温度変化”なのだと、佐賀先生は言います。
佐賀先生:近年頻繁に耳にする「ヒートショック」とは、気温や室温の急激な差が、血圧を大きく変動させることによって引き起こす症状、病気の総称です。ヒートショックは医学用語ではなく、気温の変化によって身近に起こりうることを、メディアなどが伝えやすいように表現した言葉です。
具体的には、入浴中に急に血圧が下がることによる意識障害やめまい、悪心(吐き気)が挙げられます。また、寒い場所に出たときの、急な血圧上昇に伴う頭痛や胸痛、背部痛を伴う血管疾患などを指します。
ヒートショックを起こすリスクが高い人「5つの特徴」
佐賀先生によると、ヒートショックを起こすリスクが高い人には、5つの特徴があるとのこと。以下に当てはまる方は、特に注意が必要なのだそうです。
- 65歳以上の高齢者の方
- 喫煙歴のある方、または現在喫煙している方(家庭内での受動喫煙を含む)
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の治療中の方
- 家族や親族に心臓や大動脈、脳血管障害などの血管病の罹患歴がある方
- 健康診断を受けていない方、または検診で指摘を受けて未受診、未治療の診断項目のある方
佐賀先生:温度差の刺激による血管へのストレスが原因になるため、動脈硬化が強い方は要注意です。生活習慣病や喫煙による動脈硬化は、自覚症状が出現する頃には病気が非常に進行してからのことが多く、容易に見過ごされがちです。そのため、40歳を超えるあたりからは、自分の体や健康状態と日頃からしっかりと向き合う習慣をつけることが何よりも大事になってきます。
また、入浴中の意識障害に関しては飲酒の影響が強く出ることがあります。女性は、生理周期や経血量によって貧血傾向になる時期にも注意しましょう。
起こったときの適切な対処法
ヒートショックには軽症から重篤な状態があり、適した対処法が異なるとのこと。いざというときに正しい判断ができるよう、ポイントを押さえておくことが重要です。
軽症の場合
佐賀先生:入浴中などに起こるような軽症の場合は、一時的な意識障害やめまい、眼前暗黒感(目の前が急に暗くなること)、悪心などの症状が主な症状として挙げられます。これらの症状が現れたときには、まずは安静にすることが第一です。その場で横になり、しばらくしても症状の改善が見られないようであれば、医療機関の受診を検討しましょう。
重篤の場合
佐賀先生:寒い場所に出たときに起こる突然の激しい頭痛、胸背部痛、胸部圧迫感などは、脳血管、心臓大動脈、脳出血、急性大動脈解離、大動脈瘤破裂、急性心筋梗塞など、命にかかわる重篤な疾患を発症している可能性があります。その場合は、直ちに救急車の要請を行なってください。これらの重篤な疾患を発症したときには多くの場合、「冷や汗」や「あぶら汗」を伴います。重篤な状態であるかどうかの一つの指標して、覚えておきましょう。
そこで知っておきたいのが、ヒートショックを起こすリスクを低くするために「日常的にできる予防策」です。次回の記事で詳しくご紹介します。