教えてくれたのは……仲吉 信人(なかよし まこと) 先生

2018年東京理科大学理工学部土木工学科准教授、2022年同創域理工学部社会基盤工学科准教授を経て2025年より現職。専門は水工学 (水文気象学、生気象学、環境・生理センサ開発)。独自開発した人体熱収支モデルを使った、個人の属性・状態、および暑さ対策の効果を定量評価できる新たな熱中症リスク評価手法の開発に取り組んでいる。
「体の奥にこもった熱」に要注意
気象庁は2026年4月17日、最高気温40℃以上の日の名称を「酷暑日」と定め、今後、気象庁の発信する情報などで利用すると発表しました。近年は、40℃以上の気温が毎年のように観測される状況になっています。ここまで暑さが厳しくなると、エアコンの効いた部屋で「涼しい」と感じていても、体の奥の熱まで十分に逃げているとは限りません。
体の奥にたまった熱を逃がすには、涼しい場所にいても時間がかかることを意識しておきたいところです。
※参照:40度以上の日は「酷暑日」に 「超猛暑日」「炎暑日」など退け採用:朝日新聞
自分では気づきにくい「体の奥の温度」
東京理科大学・仲吉信人教授による「人体熱収支シミュレーション」では、35℃を超える猛暑日に日なたを20分早歩きすると、体の奥の温度(深部体温)は38.5℃くらいまで上がる可能性があることが示されています。体の奥の温度は、日中は37℃くらいですが、専門家によると38℃を超えると体に負担がかかり始めると言われています。
しかも、体の奥の温度変化は自分では分かりにくく、気づかないうちに上がっていることがあります。
出典:www.daikin.co.jpシミュレーションデータ提供と可視化監修:東京理科大学 仲吉信人教授(データ&グラフ作成:ダイキン)
このシミュレーションでは、体の奥の温度が38.5℃くらいまで上がった状態でエアコンの効いた室内(28℃・湿度60%)に入っても、すぐには元に戻らないことが示されています。10分後は38.4℃、20分後は38.0℃、30分後は37.7℃と、ゆるやかに下がり、40分ほど休んでようやく37.5℃くらいになるという結果に。
つまり、エアコンの効いた室内で体の表面では「涼しい」と感じていても、体の奥にはまだ熱がこもっている可能性があります。暑い屋外から帰ってきたら、すぐに家事や用事を再開するのではなく、エアコンの効いた部屋でしばらく体を休めることが大切です。
「熱あたり」は、世代を問わず起こりうる夏の不調
ダイキンが2025年3月に全国47都道府県に住む20歳以上の男女14,100人を対象に実施した「夏場の熱による体調不良に関する全国調査」では、熱中症と診断されるような症状から軽い不調までを含めた「熱あたり」の症状を、2024年夏に経験した可能性がある人は64.6%にのぼりました。おおよそ3人に2人という結果です。
また、この調査では「熱あたり」症状の経験者が全世代で6割を超えています。熱による不調は、高齢者だけでなく、健康に自信がある人や若い世代にとっても身近な問題といえそうです。
帰宅後は「水分補給+エアコンの効いた部屋で休む」
暑い日に外から帰ってきたら、まず水分をとり、エアコンの効いた部屋で体を休めましょう。少し休憩して「涼しくなった」と感じても、体の奥にはまだ熱が残っている可能性があります。
時間に余裕がある場合は、40分ほどかけて一度しっかり体を休ませ、体の奥の熱を逃がすことを意識するとよいでしょう。暑さで汗がなかなか引かない、だるさが強いなど違和感がある場合は、無理をせず、早めに医療機関に相談してください。
エアコンは室内を快適にするだけでなく、体にたまった熱を逃がしやすい環境をつくるためにも役立ちます。暑い日こそ、我慢せず上手に活用したいですね。
暑い屋外にいるときの「身を守る工夫」
外出中は、体の奥の温度が上がりすぎる前に休むことも大切です。仲吉教授の屋外歩行時のシミュレーションでは、日なたを早足で歩く場合、日なたをゆっくり歩く場合、日陰または日傘をさしてゆっくり歩く場合の「体の奥の温度(深部体温)の変化」を比較しています。
出典:www.daikin.co.jpシミュレーションデータ提供と可視化監修:東京理科大学 仲吉信人教授(データ:仲吉教授/グラフ作成:ダイキン)
夏の昼間に屋外を早足で歩くと、約20分で体の奥の温度が1.0℃以上上がる可能性があることが示されています。一方、ゆっくり歩く、日陰を選ぶ、日傘を使うといった工夫によって、体の奥の温度が上がりにくくなる可能性があります。
仲吉教授がすすめる4つの対策法
1.体の奥の温度が上がりすぎる前に、涼しい場所で休息をとる。
2.こまめな水分補給を心がける。
3.日傘や帽子、冷却グッズなどを上手に取り入れる。
4.商業施設や自治体などが開放している「涼める場所(クーリングシェルター)を活用する。
仲吉教授は、暑い屋外に出る場合は、体の奥の温度が上がりすぎる前に、エアコンのきいた場所に入って体を休めることがとても大切だとしています。40℃を超える酷暑日は、不要不急の外出はできるだけ控えましょう。どうしても外出しなければならない場合は、こまめな水分補給をしながら日傘や冷却グッズを活用し、涼しい商業施設や自治体が開放している場所なども利用してください。
これから本格的に暑さが増す時期。体の奥にたまった熱は、一度上がるとすぐには下がらないことを意識し、外出後は涼しい場所でゆっくり過ごす時間をつくることが大切です。水分補給、日差し対策、エアコンの活用を組み合わせて、夏を健やかに過ごしましょう。
【出典・参照元】
・ダイキン工業株式会社「夏の疲れと暑さ対策 ー 今年の夏も熱を逃がそう!」
https://www.daikin.co.jp/air/life/heat
・ダイキン工業株式会社「夏場の熱による体調不良に関する全国調査」(2025年5月9日)
https://www.daikin.co.jp/press/2025/2025050902
・気象庁「最高気温が40℃以上の日の名称を『酷暑日』に決定」(2026年4月17日)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2604/17a/40degree_name.html




