教えてくれたのは……石原 新菜(いしはら にいな)先生
イシハラクリニック副院長。クリニックで漢方薬処方を中心とする診療を行うかたわら、テレビ・ラジオへの出演や、執筆、講演活動なども積極的に行い、「腹巻」や「生姜」などによる美容と健康増進の効果を広めることに尽力している。二児の母、また女性としての視点からアドバイスにも定評がある。
暑さ対策の3か条とは?
熱中症予防の基本の対策といえば「水分補給」と「栄養補給」ですが、暑さによる不快感を解消して快適に過ごすためにはそれだけでなく「クールダウン」も重要なのだと石原先生はおっしゃいます。
石原先生 「体温が高いと体力が奪われるだけでなく、水分や栄養の補給効率が悪くなってしまいます。せっかく補給した水分や栄養を無駄にしないように、深部体温(内臓など身体内部の温度)と体感温度(人間の肌が感じる温度)を下げる「クールダウン」も積極的に行いましょう」
【暑さ対策・1】水分補給
夏は汗だけでなく皮膚から蒸発する水分(不感蒸泄)も多くなるので、水分補給は大切です。屋外にいる時は、深部体温も下げてクールダウンできる冷たい飲み物でよいですが、クーラーの効いた環境では内臓を冷やしすぎないように常温のものを飲むのがおすすめです。
【暑さ対策・2】栄養補給
汗で失われるミネラルは塩分だけではなくカリウムや鉄なども含まれるので、スポーツドリンクやお味噌汁など塩分も含まれる飲み物を飲むようにしたり、野菜やタンパク質をしっかり摂れるようなバランスのよい食事も大事です。
【暑さ対策・3】クールダウン
暑い環境にいることで深部体温が上がり脈拍が速くなったり、汗を大量にかいてしまう状況は、体にとって負担がかかり、熱中症になるリスクも上がります。深部体温を速やかに下げるには、水分をたくさん飲むよりも氷を利用する方が有効です。
暑さ対策でやってはいけない【NG行動】とは?
【NG行為・1】冷却シートをおでこに貼る
冷却シートは水分をたくさん含んだジェルが熱を取り込みつつ蒸発する仕組みで、貼った部分を一時的に冷却するに留まります。
冷えた血液を全身に巡らせ、体温を下げることを考えると、ネッククーラーや保冷剤で首や脇の下、鼠径部といった太い血管がある部位を冷やすほうが効果的です。特に、首元は皮膚が薄いため涼しさを感じやすい箇所です。
【NG行為・2】帽子やアームカバーを長時間着用する
直射日光から頭部や肌を守るための便利アイテムである帽子やアームカバーですが、実は長時間着用していると熱と湿気が内側にこもってしまい、逆効果になることも。通気性のよい素材を選んだり、こまめに着脱を行って汗を拭きとりましょう。
【NG行為・3】スポーツドリンクをゴクゴク飲む
スポーツドリンクは塩分補給に有効である一方で、糖を多く含んでいるため摂取しすぎると急激な血糖値の上昇により引き起こされる急性の糖尿病合併症(ペットボトル症候群)を発症する恐れがあります。
体温が高いままだと水分や塩分の補給効率が悪くなってしまうため、クールダウンを行い深部体温を下げた上で効率よく水分補給を行うことが大切です。
効率的なクールダウンの方法
クールダウンには氷菓などの冷たいものを喫食して、身体を内側から冷やすのがおすすめです。
サウナを暑い日に見立てて常温水を飲んだ場合と氷菓を喫食した場合の深部温度の変化を比較した実験では、グラフ(下記)のような結果が出ました。
身体の内部まで速やかに冷やされ深部温度が下がっていることから、氷菓の喫食がクールダウンに有効なことがわかります。
この先も日本各地で、熱中症リスクの高い危険な暑さが続きます。
油断をせず、石原先生に教えていただいた適切な暑さ対策を行って猛暑の夏を安全にお過ごしください。