【助産師に教わる性教育①】「性教育は恥ずかい」!?わが子に伝えたくなる命のはなし〜幼児期から思春期まで

家族・人間関係

 【助産師に教わる性教育①】「性教育は恥ずかい」!?わが子に伝えたくなる命のはなし〜幼児期から思春期まで

2020.12.08

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性教育の知識は学校でOK!?家庭でやるべき性教育は

『わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門』P154 より

ーー学校における性教育と家庭における性教育は、内容が同じではないと考えていらっしゃるんですね。

直井先生:はい、わたしはそう考えています。学校で教わる性教育とは、主に「性に関する知識教育」ですよね。教科書があって、テストもある。もちろん一定水準の性の知識を学ぶ場としては、学校が最も適しています。しかし、実際は、地域性や学校の方針によって差があるのが現実です。
わたしは、そのような「性の知識教育」に加えて、子どもの心へ伝える「家庭での性教育」という両輪が叶えば理想的だと考えているんです。

次回で詳しくお話ししますが、日本の学校における性教育にはまだまだ課題があります。でも、家庭での性教育であればすぐに始められる。家庭での性教育と言っても生々しい内容ではありません。

先ほどお伝えしたような「愛のストーリー」を伝えること、そのものが性教育なんです。子どもを守り、「心にフィルターをかける」ようなお話であれば理想だと考えています。

ーー「心にフィルターをかける」ですか?

直井先生:つまり「情報を自らジャッジできる力をつける」ということです。残念な現状として、世の中には性商業などのわいせつ情報が蔓延していますよね。いつか子どもが思春期になれば、男の子も女の子もアダルト動画などの情報に関心を持つ日が来るかもしれません。そのときに性の情報を自らジャッジする力を育むことが大切だと考えています。もちろんパソコンやスマホにフィルターをかけることも大事ですが、子どもの好奇心は物理的なフィルターを超えていくものですから。でも「心のフィルター」をかけることで子どもを守ることができると考えています。

ーー何となくわかる気もしますが…

直井先生:わかりやすく説明するために、「死」を例にあげますね。わたしたちはテレビドラマやアニメなどで、連日のように「殺人」のシーンを目にしています。血が飛び散ったり、残酷な表現を目にすることもあります。でもだからといって、「気に入らないなら殺せばいい」と考える人はいません。それは脳の中で、「テレビの中だけの非現実的なこと」「ありえないこと」だと知っているからです。つまりこれが「心にフィルターがかかっている」ということです。

これと同様に、いつか子どもがアダルト動画で暴力的なシーンや痴漢などの描写を見たとしても、これは「フィクションだ」「実際にはありえないことだ」と自らジャッジできるようになってほしい。この心のフィルターをかけられるのは、家庭やまわりの大人だと考えています。

家庭で「心のフィルター」をかけることが何よりも大事な理由

『わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門』P161 より

ーーどうすれば「心にフィルター」をかけられますか?

直井先生:「あなたが生れたときに嬉しかったよ」「未来を楽しみにしているよ」「元気に大きくなって嬉しい」……。
そういう言葉をかけ続けることの積み重ねが、心にフィルターをかけるということだと考えています。そして、いつか性的な行為に関心をもったときにも「自分だけではなくて相手も同じように大切な存在なんだ」と思うようになってほしい。さらに「性行為は命を授かる行為で、無責任な行動はしないようにしよう」とか、「自分や相手を傷つける行動はやめよう」というストッパーにもなることが、家庭でできる性教育なのだと思っています。

ーー「心のフィルター」が間違った性行動の最強の「ストッパー」になる。それが親から伝えられる最強の性教育、ということですね。

直井先生:私は「心のフィルター」をかけることは性教育だけでなくて、すべてに通じていると思っています。自分も友だちも、まわりの人たちすべてに「誕生したときに喜んだ家族」がいて、「成長を見守っている人」がいて、「未来を楽しみにしている人」がいる…と、そのような想像力を持つことで、いじめや性暴力もなくなるといいなと思っています。

しかし残念ながら、親やまわりの大人からポジティブな言葉をかけられないままで育つ子どももいます。そのような子にはわたしたち大人から、「気にかけているよ」という言葉をかけ続けてあげたいですね。わが子のまわりにいる地域の子どもたちへ、「がんばってるね」とか「今日もかわいいね」とか、そんなちょっとした言葉の日々の積み重ねで、子どもたちが「たくさんの大人に守られている」と感じ、自分を守れるようになったらいいなと思っています。

***

いかがでしたか? 「恥ずかしい」「話しにくい」という「性教育」のイメージがすーっと消えて、むしろ、進んで子どもに語りたくなったのではないでしょうか?

次回は、今どきの子どもたちの性事情、学校における性教育と、それを家庭でフォローする方法についてお伝えします。

教えてくれたのは、直井亜紀さん

直井亜紀さん

助産師。一般社団法人ベビケア推進協会代表理事。2児の母。
2010年より中学3年生対象「いのちの授業」が埼玉県八潮市の必修授業に取り入れられる。関東地方を中心に、小・中・高校で命や性をテーマとした講演活動を精力的に行うほか、企業や専門職向けセミナーの講師も多数務める。第39回母子保健奨励賞受賞。令和元年度内閣府特命担当大臣表彰受賞。自身が企画、歌手を務めたCD「あかちゃんのうた」が童謡ランキング1位を獲得。

2020年9月には『わが子に伝えたい お母さんのための性教育入門』(実務教育出版)が出版され、大きな反響を呼んでいる。

 

マンガ:ゆむい
『わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門』より

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