陰部のかゆみやおりもののニオイは「膣の乾燥」が原因!?皮膚科医が教える不快症状の5つの対策

心と体

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2021.03.09

陰部のトラブルはなかなか人に相談しにくいものですが、陰部のかゆみや乾燥にお悩みの方はいないでしょうか? 陰部はムレやすく、下着がこすれやすい部分であるため、ムレやこすれによる皮膚トラブルが多いですが、更年期の陰部のトラブルは原因が異なります。とくに、「膣の乾燥」によるトラブルは、更年期女性に多い悩みです。そこでこの記事では、膣が乾燥する原因や症状を解説し、更年期に起こる膣の乾燥への対処方法をご紹介します。

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膣や膣周辺部にこんな不快症状ありませんか?それは乾燥が原因かも

花

膣が乾燥することで起こる症状には、次のようなものがあります。もし当てはまるものが複数ある場合は、膣の乾燥への対策をとることをおすすめします。

  • 陰部がかゆい
  • 陰部が熱っぽい感じがする
  • 黄色や膿のようなおりものがある
  • おりものに臭いがある
  • 性交痛がある
  • 排尿時の痛みがある

更年期に減少する女性ホルモン「エストロゲン」の変化が原因

更年期の膣の乾燥の原因には、ホルモンバランスの変化が関係しています。
とくに、膣の乾燥を引き起こす原因となるのが、更年期に減少する女性ホルモンの「エストロゲン」の変化です。

エストロゲンは膣の粘膜を厚くしてうるおいを与える働きがあります。本来、このエストロゲンのはたらきによって、膣の粘膜は常在菌が活動しやすい環境となり、常在菌が膣を弱酸性に保つことで膣での雑菌の繁殖を防いでいます(膣の自浄作用)。

しかし、更年期になりエストロゲンが減少すると、膣の粘膜が薄くなり乾燥しやすくなります(萎縮)。そして、膣の環境の変化により、膣の常在菌が減少して膣の自浄作用が低下していくのです。

このように、ホルモンバランスが大きく変化する更年期には、「膣の乾燥」と「自浄作用の低下」により、膣の粘膜は傷つきやすくなり、雑菌が繁殖しやすくなります。その結果、痛みやかゆみ、臭いといった不快な症状が現れやすくなるのです。

医学的にはこのような状態を「萎縮性膣炎(いしゅくせいちつえん)」といいます。

ホルモンバランスを整える方法は?

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更年期における膣の不快な症状は、ホルモンバランスの変化が関係していることをお伝えしてきました。つまり、更年期の膣のトラブルを改善するには、ホルモンバランスを整えていくことが近道になります。そこでここからは、ホルモンバランスを整える方法をご紹介します。

生活習慣の工夫によって、ホルモンバランスの乱れを改善させることができます。以下に、身近でできる工夫をいくつかご紹介します。

ストレスをためない

ストレスがたまると、からだのさまざまな調節を行っている自律神経の働きが乱れることで、ホルモンバランスの乱れにつながることがあります。とくに、ホルモンバランスが崩れやすい更年期の女性にとって、ストレスは大敵です。

現代社会の中でストレスを受けない生活をすることは難しいですが、ストレスを受けたと感じたときには、こまめに解消できる方法を見つけておきましょう。

ストレス解消法は人によってさまざまですが、たとえば、休養をとること、趣味のための時間を作ること、運動すること、人と交流することなど、ご自身に合った方法を試してみてください。

適度な睡眠をとる

睡眠不足、睡眠が浅い、睡眠時間が日によって違うなど、質の良い睡眠がとれていないと、自律神経が乱れてホルモンバランスの乱れが起こりやすくなります。できるだけ「夜間」に「最低6時間」は睡眠をとるようにしましょう。

就寝前にテレビやスマホを見ていると脳が刺激を受けて深い睡眠がとりにくくなります。質の良い睡眠をとるため、就寝前はテレビやスマホは避けるようにしましょう。
また、運動するなどをして日中に十分体を動かすと、夜間に深い睡眠がとりやすくなります。

膣トラブルによる症状がつらいときは

ホルモンバランスとの直接の関わりはありませんが、陰部を清潔にすることも、雑菌の繁殖を抑えるのに大切です。

ただし、膣内を石鹸で洗うと、膣内の弱酸性の環境を変えてしまうことがあるので注意しましょう。また、ごしごし強く洗うと膣内を傷つけてしまうことがあります。

そのため、陰部を洗う際は石鹸を使用しすぎず、流水でやさしく洗うことをおすすめします。

病院(婦人科)に行く

病院

膣の乾燥の症状が続く場合は、我慢せずに病院の婦人科を受診しましょう。
必要に応じて、以下のような薬の処方や治療が行われます。

  • ホルモン剤の膣坐薬、飲み薬、塗り薬
  • 雑菌の感染に対する抗生剤の塗り薬、飲み薬
  • かゆみ止めの飲み薬
  • 漢方薬


また、膣の乾燥による症状だと思っていたものが、子宮体がん、子宮頸がんの症状であったということもあります。黄色いおりものや不正出血などがある場合は、早めに婦人科で診てもらうことをおすすめします。

漢方で体質改善

漢方

「膣の乾燥やかゆみを根本から改善したい」
そんな方には漢方薬がおすすめです。

漢方薬は、症状と体質にあったものを飲むことでずっと抱えていた不調に、とても良い効果をもたらします。

現代の症状の多くは、心身のバランスが乱れてしまったために起こっています。漢方薬は、全体のアンバランスをうまく調整し、症状の根本改善と体質改善を同時に目指すものです。

体質の改善のためにバランスの取れた食生活や運動習慣を継続するのは大変という方でも、漢方薬なら症状や体質に合うものを飲むだけなので、手軽に毎日続けられそうですよね。

さっそく始めてみたいと感じた方のために、以下に、膣の乾燥に悩む方におすすめの漢方薬をご紹介します。

〈膣の乾燥に悩む方におすすめの漢方薬〉

桂枝茯苓丸
比較的体力があり、肩こり、のぼせ、足の冷えなどがある方の更年期障害の症状を改善する効果があります。

加味逍遙散
体力が中等度以下で、のぼせ、肩こり、疲れ、イライラなどがある方の更年期障害の症状を改善する効果があります。

当帰芍薬散
体力があまりなく、足腰の冷えがあり、貧血、生理不順がある方の更年期障害の症状を改善する効果があります。

ただ、からだにやさしい漢方薬とはいえ、自分の体質に合っていなければ、良い効果が見込めないだけでなく、副作用がおこることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、購入時には、できる限り漢方に詳しい医師、薬剤師等にご相談ください。

 

「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、スマホで気軽に専門家に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスもおすすめです。AI(人工知能)を活用し、漢方のプロが効く漢方を見極めて、お手頃価格で自宅に郵送してくれる「オンライン個別相談」が話題です。

ホルモンバランスを整えて更年期の陰部のトラブルを解消!

更年期の膣の乾燥が起こるメカニズムを解説しました。更年期の膣の乾燥による不快な症状には、ホルモンバランスの変化が深く関わっています。自分でできる対処法として、まずはホルモンバランスを整える生活習慣を心がけてみましょう。
更年期の不調には、からだに優しくはたらく漢方薬を取り入れるのもひとつです。
また、症状が続く場合は婦人系の病気が隠れている可能性もあります。ひとりで悩まず、勇気を出して病院で相談しましょう。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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著者

金城 里美

金城 里美

東京大学薬学部卒業後、医師を目指して、東京医科歯科大学医学部に入学。 体、精神とも関わって多様に現れる皮膚の病態に興味を持ち、皮膚科医の道を選ぶ。卒業後、大学病院、総合病院、クリニックでの皮膚科勤務を経て、一般皮膚科から美容皮膚科まで皮膚科領域の診療を幅広く行う。 現在、総合病院の皮膚科常勤医として勤務。3児の母。 皮膚がより良くなることで、その人の毎日がより明るくなることを目指して日々診療を行う。

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