輸入物のお手頃な解凍エビでOK!
今回使うのは、スーパーで購入したインド産のバナメイエビです。
【材料】
■天ぷら生地
卵……1個
冷水……300ml
酢……10g
薄力粉……185g
片栗粉……30g
炭酸水……100ml
■海老の天ぷら材料
バナメイエビ……適量
薄力粉……適量
下処理を丁寧にすると、きれいに仕上がり、旨味もアップ!
尻尾の先を切ることで、安心した食べられる! 背ワタ取りもコツをおさえれば簡単!
まずは、軽く水で洗ってから殻をむきます。尻尾の部分の殻だけ、飾りとして残します。
次に、尻尾の先端を、包丁で斜めに切ります。尻尾はかたいので、刃が厚めの包丁を使うといいでしょう。形をきれいにすると同時に、尖った部分を切り落として安全に食べられるようにします。
次に、背ワタを除きます。
背ワタはエビの消化器官で、エビが食べたものや砂などが入っています。頭から尻尾にかけてつながっているので、ちょうど真ん中部分の殻と殻の間の関節部分につまようじを入れます。背ワタは背から2〜3mmのところに入っているので、背ワタの下を狙って、つまようじでを入れ、背ワタと身を持ち上げたら、背ワタだけを引っ張って取り出します。
エビの尻尾には、キチン質という胃酸では消化されにく成分が入っていて、消化不良を起こしやすい性質があります。カルシウムや食物繊維も含まれているためデトックス効果もありますが、体調と相談しながら、食べるか食べないか、判断するようにしてくださいね。
繊維を断ち切ると、仕上がりがきれいに!
このままエビに衣をつけて揚げると、熱で繊維が縮まって、エビが丸まってしまいます。ですので、腹に切り込みを入れ、エビを伸ばしてから、繊維を断ち切っていきます。切り込みを入れるさいは、刃が薄い柳葉包丁を使います。
腹に、深さ2〜3mm程度の切り込みを、4箇所入れます。斜めに切り込みを入れることによって、繊維を斜めに長く切ることができるため、揚げた時に、丸まりにくくなります。
切り込みを境目にエビを逆に伸ばして、繊維を破壊していきます。力を入れすぎると、エビがちぎれてしまうので、丸まっている背中が、まっすぐになるくらいの感覚で伸ばしていきます。
さらに、背を上にして、両手の人差し指と親指で、軽くエビを押しつぶしながら、残った繊維を完全に破壊します。この時、中指もうまく使いながら、エビが広がらないように、繊維を切っていきます。
伸ばす前と、伸ばした後では、ここまで違います。
塩をふって寝かせると余分な水分が抜け、旨味がギュッ
エビの表面に水分が多いと、サクサクに揚げることができないので、軽く塩を振って、浸透圧により余分な水分を抜きます。
キッチンペーパーを敷いてその上にエビを一匹ずつ並べてのせ、さらに上にキッチンペーパーをかぶせます。ラップをたら冷蔵庫に入れて30分寝かせてください。
衣はとにかくグルテンの生成を抑える! かき混ぜるのはNG!
衣にグルテンが多く含まれていると、衣の水分が蒸発しにくくなり、天ぷらがサクサクに揚がりにくくなります。ですので、天ぷらをサクサクに仕上げるには、さまざまな手段で、天ぷらの生地のグルテンの生成を抑えることが重要です。
材料はすべて冷やしておくと、グルテンができにくい
グルテンは、温度が高い(10度以上50度以下くらい)と生成されやすいので、材料は、すべて冷やしておくのがポイントです。
エビ、小麦粉、片栗粉、炭酸水、卵、酢、水、すべて冷えた状態で、生地を作っていきます。
粉類はあらかじめふるっておく! 片栗粉もグルテンの生成を抑えるのに一役!
薄力粉、片栗粉は、水に溶けやすいよう、あらかじめふるっておきます。
小麦粉は強力粉、中力粉、薄力粉の順でグルテンが多いので、グルテンが少ない薄力粉を使います。
片栗粉を少し入れる理由は、片栗粉にグルテンは入っていないので、小麦粉と一緒に入れることで、グルテンの生成を抑えられるからです。ただし、片栗粉の比重を多くすると、小麦粉特有のいい香りがなくなってしまいます。
材料はできるだけ泡だてないように混ぜる! 酢にはグルテンを溶かす働きが!
卵は、できるだけ泡だてないように、ホイッパーをボウルの底につけながら混ぜます。あらかじめ溶いておくことで、水と混ざりやすくなります。
次に水を入れます。もし、水が冷えていない時は、水に氷を入れ、冷やしてから氷を取り出して入れてもOKです。水は、3回くらいに分けて入れると、きれいに混ざります。
次に、酢を加えます。酢を入れるのは、酸によってグルテンの成分を溶かして、グルテンの生成を抑えられるからです。
小麦粉を入れる前に、泡を取り除いておくことによって、天ぷらがフワフワなりにくくなります。
混ぜる回数が少なくてすむ、天ぷら専用の花箸を使うのが理想!
グルテンは、しっかり混ぜたり練ったりすることで生成されるので、ホイッパーは使わずに、花箸という、天ぷらの生地を作る専用の太い箸を使うのがおすすめ。花箸は通常の菜箸の3〜4倍は太いです。箸が太い分、混ぜる回数が少なくてすみ、グルテンができにくくなるんです。
粉類を3回に分けて入れます。
ぐるぐる混ぜるのではなく、箸で粉をたたいて水に落とすようなイメージです。完全にダマがなくなるまで混ぜてしまうと、グルテンが生成されてしまうので、注意しましょう。
炭酸水の働きもすごい!
粉を入れる途中で、炭酸水も加えます。炭酸水の二酸化炭素が油に入れた瞬間一気に熱膨張し、衣を突き破って外に出ようとするため、衣が弾けると同時に、衣の中の水分も蒸発しやすくなります。
連続して天ぷらを揚げる時は、生地の温度が上がってグルテンが生成されるのを防ぐために、ボウルに氷水をはって、その中に生地のボウルをつけて生地を冷やすといいでしょう。
このように、ダマが残って、完全に混ざりきらないくらいでOKです。
最後に、上に浮いてくる泡を取り除いておきます。
天ぷらは、油で揚げる時に衣の水分が多く蒸発するほど、サクサクになります。
天ぷらの生地のグルテンが多いと、タンパク質と水がかたく結びついて、粘り気と弾力が出てしまい、天ぷらの周りに強力な壁ができます。すると、衣の水分が蒸発しにくくなります。
エビの表面にも水分が多いと、さらにサクサクしにくくなります。ですので、エビの表面の水分をしっかり拭くことも大事ですし、特に、冷凍エビは細胞膜が壊れていることが多いので、浸透圧で余分な水分をあらかじめ抜いておくという一手間も必要になります。
エビにも水分が多く、天ぷらの生地にグルテンが多いと、エビと衣の間に蒸発しきれない水分がたまり、衣がベチャベチャになります。
また、衣は、厚いより、薄い方が、水分が蒸発しやすくなり、サクサクになります。
揚げる前にエビの水分をしっかり拭き取ると、サクサクに!
塩をして寝かせたエビの水分を、再度拭き取ります。
天ぷらの生地がはがれにくいよう、またエビの中の水分が保てるように、エビに小麦粉をまぶします。分厚く小麦粉がついていると、天ぷらの生地がはがれやすくなるので、はけを使い、余分な粉を落とします。このくらい薄くつけるのがベストです。
生地は時間が経つと、粉類が沈殿するので、軽く混ぜてから使います。
エビを生地につけ、180度に熱した油に入れていきます。
エビから出ている泡で、水分がしっかり蒸発しているのがわかります。
天かすは油が汚れる原因になるので、早めに取り除いてください。エビから出る泡が小さくなったら、サクサクに揚がった証拠!うっすらと身が見えるくらいが、衣が分厚すぎず、食材の味を楽しむことができます。
天ぷらに「花を咲かす」とサクサク感がさらにアップ!
次に、天ぷらのまわりにさらに衣をつけて、サクサクに揚げる技法をやってみます。天ぷらに「花を咲かす」とも言います。
菜箸に生地をつけて、揚げている最中の天ぷらの衣の上に生地を落とすと、くっついてかたまって「花が咲き」ます。あまり時間差で生地を落とすと、衣の色にムラができたり、衣が揚がる時にはエビの水分が蒸発しすぎたりするので、あまり時間差をつけないようにしてくださいね。
右が花を咲かせた天ぷらです。サクサクの衣がついていて、おいしそうに見えませんか?
処理をした天ぷらと、していない天ぷらの違いにびっくり!
せっかくなので、きちんと処理した天ぷらと、していない天ぷらを比べてみましょう。
左がきちんと処理して花を咲かせた天ぷら、右が処理していない天ぷらです。
処理していない天ぷらは、あえてグルテンが多い生地を作りました。ぬるま湯を使い、材料を混ぜる順番を気にせずに加え、ダマがなくなるまでホイッパーで、思いっきり混ぜました。エビの水分を拭き取らずに、繊維も断ち切っていません。エビに小麦粉をまぶしたら、小麦粉をはたかずに生地をつけ、揚げました。
食べ比べると、味の違いに格段の差が! 1位は処理をして花を咲かせた天ぷらに決定!
処理をしていない天ぷらは、衣がグルテンを多く出しているので、フワフワしていて、エビが曲がっていますし、尻尾の形も整っていません。中に水分が溜まって、中が湿っている感じがします。エビと衣の水分が抜けきれていないので、噛んだ時に、衣の内側がベタベタしていて、フワフワ、ベチャっとした天ぷらになっています。
処理した天ぷらは、尻尾の形が整っていて、衣がサクサクしていますし、繊維を切っているので、エビがまっすぐしています。食感はほどよくサクサクしていています。エビに塩をしているので、余分な水分が抜けて、旨味が凝縮されて、とてもおいしいです。これぞ、素材の味を生かした料理といえます。
処理して花を咲かせた天ぷらは、見た目からして、かなりおいしそうな出来栄えに。噛んだ時に、サクッと音が聞こえるほどサクサクした出来あがりになりますよ。エビがジューシーでプリプリしていて、旨味がしっかり閉じ込められているので、抜群においしいです。
天ぷらを作るときは、ぜひこの方法で作ってみてください!
教えてくれたのは:岩野上幸生さん
YouTubeチャンネル登録者数23万人/料理人歴18年目/飲食店経営者
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