5年ぶりの健康診断、7年ぶりのマンモグラフィー
前回、くま子さんのお話をお聞きして「がんが見つかったら怖いから検査には行かない」という選択が一番恐ろしい!と感じました。今回は、がんが見つかるきっかけになった、健康診断のことから詳しく伺います。
ーー検査時のことで言えば、服装のアドバイスが的確でしたね。マンモグラフィーやエコーだけではなく、例えば婦人科の内診、子宮がん検診のときも服のことを意識しないで病院に行くと「あっ!しまった」と思ったことがあります。
くま子:乳がん検査では上半身だけ検査着に着替えるんです。着替えても2分後くらいに「はい、検査着を脱いでください。」って言われるんですけどね(笑)で、その時にうっかりワンピースとかチュニックにレギンスという服装だと上はパジャマ系の短め検査着、下はおしりぴったりレギンスになってしまって(笑)ちょっと気分がもうそこでなんとなく……なので、シャツにジーンズとかブラウスにスカートとか、トップスを脱いでも大丈夫なスタイルがいいですね。
ーー検査が未経験の人にとっては、こういう情報がありがたいです。精密検査を受けるきっかけになったのは、健康診断のマンモグラフィーということでしたね。以前検査をした時から少し期間が開いてしまったと。
くま子:健康診断では40歳以上の女性にはマンモグラフィーを追加できました。7年ぶりでした。その後、夫の検査結果はすぐに届いたのに、私のは1か月後まで届かなかったんです。結果を知らせる書類を見て初めて目にしたのが「不均一高濃度または高濃度」という言葉です。知らない言葉だったので、すぐに検索をしましたが、乳房の構成の一部または全部が高濃度ということで、つまりは「マンモグラフィーではがんが発見しにくい」らしく「ご希望の方にはエコー検査をお勧めします」と書かれていました。
ーーこれは「必ず受けてください」ではなく「おすすめ」レベルなんですね。
くま子:この時点では「病的な所見ではない」と書かれているので「エコー検査は受けない」という選択もアリなんです。でも私は受けてよかった。受けていなければ全ての治療が遅れたわけですから。
検査中はモニターをガン見!
ーーエコー検査のときにご自身でも腫瘍らしきものをモニターで見て確認したそうですね。その時にいわゆる覚悟というか、気持ちは固まるものなんでしょうか……恐怖感や不安に襲われる人も多いのでは、と想像しますが。
くま子:もちろんそんな感情もありましたし、今もあります。でも、そこは頭で考えて結論が出たり、考えることで病気が良くなることはないので、「事実を知って、次にできることを準備しよう」と思えました。前回にも言いましたが「考えることと考えないこと」はきちんと区別しておくべきですね。そうすると、ぐるぐると同じところで回っているようなストレスからは逃れられます。次の治療の準備や、治療中の仕事や子どものことなどを考えてスケジュールを調整するなど、考えることはいっぱいあるので、頭はそちらに集中させて(笑)とは言うものの、弱音を吐きたい時もあるので、病院に夫が一緒に来てくれるととても心強いし、落ち着きます。それにやはり子どものことを考えると「前だけを向こう!」と強い心を持つことができましたね。
思いもよらない「電話告知」
ーーMRIや針で細胞を取って行う検査も「人から聞くほど大変ではなかった」とコメントをされていましたよね。その後、病院から電話があったと……。
くま子:幼稚園のお迎えの時でした。いつもは着信があっても気にしないで(笑)かけ直さないこともあるんですが、仲良しのママ友と幼稚園で会えたので「実は検査を受けていて、知らない番号の着信が今あって。」なんて話をしたら「すぐにかけて。」って。このタイミングで友だちが近くにいてくれたのも、本当に助かったんです。かけてみるとやはり病院でした。先生からあっさりと「やっぱり陽性反応が出たんだよね。」と言われて、その電話で病院に行く日を決め、結果は夫と聞きに行きました。
「明後日からやります」と即決した抗がん剤治療
ーー正式に病名を聞いたタイミングで治療の話も出たんですか?
くま子:私の場合はトリプルネガティブ乳がんということと、手術の前に抗がん剤投与が必要だという話、そして進行が早いということも聞きました。病気の説明の後、一番早いスケジュールを押さえたくて「明後日からやります。」と即決しました。全部が全部前向きというわけではなかったし、悲しくて辛い瞬間ではあったけど……治療まで日数が空いてしまう方が辛いんじゃないかと思いましたね。治すための行動を1日も早くスタートさせたかったんです。
ーー聞いているだけで胸が締め付けられるのですが……でも、そんな日のブログにはセブンのアイスの写真が(笑)。こんなところが、くま子さんらしいんだと感じます。病気になっても1女のママでおいしいものは大好き!というブレない自分らしさの軸を感じます。「乳がんになった」のは、くま子さんの履歴のひとつではあるけれど、決してそれだけに支配されていない、と気づかされます。
くま子:病気になってもならなくても、子育て中心の今まで通りの生活は大きく変わらないですし、それが治療スケジュール的に言うとタイトだったこともありますけど、それでも「病気以外の自分」を保てたのは家族のおかげだと思います。夫には「私をお母さんにしてくれてありがとう。」と心から感謝しています。
抗がん剤治療スタート
ーー抗がん剤スタートの日のブログには「新しい人生の始まり」と書かれています。そして最初の治療の5回目くらいまでは、ほとんど副作用の様子もなく、ラーメンやお寿司を平らげたり、5キロのウォーキングをするなど普通に過ごされていますね。
くま子:何か大きな課題のために新しい取り組みをしているというか、少し強がりもあるかもだけど(笑)とっても気合が入っていたんだと思います。それが「新しい人生の始まり」という言葉になったのかも。病気そのものよりも具体的に副作用の話を聞くと、眠れなかったり落ち込むこともあったので。
ーーそして、治療の後はほうじ茶なんとか(笑)でひと息つかれていたんですね。
くま子:本当はコーヒーが大好きなんですが、カフェインを控えないといけなくて、馴染みのないものに挑戦してみましたね。そういう意味でも?「新しい人生の始まり」だったのかも(笑)。
マンモグラフィーを受けたくない人へ……
ーーこの連載は「ひとりでも多くの人にマンモグラフィー検査へ!」というテーマでスタートしたんですが、検査の「痛み」がイヤだという人が多いですよね。
くま子:胸を樹脂の板で挟むので、痛みはゼロではありませんが、私は歯医者でビビッと来る痛みの方がよっぽど恐怖ですし(笑)タンスの角に小指をぶつけた時の方が腹が立つ分辛いですよ!
ーーなるほど(笑)わかりやすいです。私は50代なのでもう10回以上は受けていますが、以前よりずっと検査自体がスムーズに行われるようになったと感じています。15年くらい前は病院によっては男性のスタッフさんが担当だったり、検査着も無かったりしました。痛みについては、先月受けた時に時計を見ていましたが「本気で痛いな!」と思ったのは片方で4秒程度(笑)両方で8秒でした。
くま子:ああ、それくらいですよね。両方で10秒もかからないです。あっという間ですものね。
ーーそれとですね……例が変ですけどブラジリアンワックスの脱毛とかもね、結構痛いんですよ(笑)意外とマンモグラフィーよりももっと痛いものってたくさんありそうな気がします。
くま子:ですよね……だから、痛みを「検査を受けない理由」にしないで欲しいです。ほんの数秒で「今年も異常なしでよかった」とホッとしたり、私のように不均一高濃度または高濃度だから、エコーも受けなきゃ、という知識も備わります。ぜひ受けてもらいたいです。
くま子さんプロフィール
ショートヘア(ウィッグ!)が似合う、キュートな笑顔と真っすぐな瞳が印象的な1女のママ。
1980年生まれ 東京都出身 神奈川在住 2011年に結婚、2015年には長女を出産。
夫とともに鍼灸院を経営 趣味は朝ランニング、料理、食べる事。フットケアセラピスト、ネイリスト、食育アドバイザー、スポーツフードアドバイザーなどの資格を持つ傍ら、ヨガインストラクターになるべく現在勉強中!
がん治療のあれこれを綴ったブログには、子育て中のエピソードや家族の話題、大好きな「おいしいもの」の写真がずらりと並ぶ。