「乳がんのリアル」連載を振り返って
ーーくま子さんとは、別案件でお話をお伺いする予定で、2021年3月にオンラインが「はじめまして」でしたね。1日の日課だとかマイブーム、お子さんの話をお聞きしている途中で、くま子さんが「ちょっと去年から実は色々あって……」と、病気の話をされたときには、心の底から驚きました。
くま子:手術が終わって1ヵ月経つか経たないかの頃だったと思います。乳がんが分かってから、ずっと「病気を治すこと」が自分の中で1番大切だったので、このタイミングで「自分のこと」を話す機会が巡ってきたということは「今、話すべきだ」と思いました。
ーーくま子さんから「しこりを見つけていたわけでも、胸が痛かったわけでもなく、健康診断にたまたま行ったら見つかった。」というお話を聞いて、オンラインで会ってから30分間ほどで(笑)「がん検診の大切さをひとりでも多くの人に知ってもらおう!」という、この連載のテーマが決まりました。
くま子:自分の体験から「検査に行って!」と、ひとりでも多くの人に伝えたかったんです。告知のころからブログで記録はしていましたが、おそらく読みに来てくれている人は、同じ病気の人や家族にがん患者がいる人など、「がんの周りにいる人」が多いように感じていました。検査に行く人を増やしたかったので、「全くがんと関わりの無い人」に見てもらうにはどうしたら……と考えていたところだったんです。
「検査の予約をしました」というDMが!
ーーたまたま私も、自覚がないままエコー検査で「腫瘍があります」と専門医に言われたことがあり、検査の重要性を理解していたので、どんどん話が進みましたね。
くま子:ブログでもそうですが、「事実をきちんと伝えること」に視点を置いています。この連載が始まってからは、それまで1日に200とか300だったブログのアクセス数が急に40000とかスゴイ数字になって驚きましたが(笑)読んでくださった方から「検査の予約を入れました。」とメッセージが来たときには「自分の思いが届いた!」と実感でき、嬉しかったです。
ーーこの回では、乳がん治療に必要な医療費について、くま子さんのリアルな状況を例にして数字を挙げています。もちろん治療は病状によって異なります。
くま子さんの世帯は自営業のため、国民健康保険に加入されており、また医療保険、がん保険にも加入されていました。
それぞれ個人の経済状況や加入している保険の条件などにより、金額は異なりますが、この機会に保険を見直す方は、参考にしてみてください。
乳がん治療お金のリアル
発覚から抗がん剤治療まで
<外来>全て3割負担での支払い額
2020年8月~2021年2月 約420,000円
ー内訳ー
・点滴(抗がん剤) 約10,000円~15,000円 × 8回
・注射 約33,000円 × 8回
※ 点滴後に白血球の数値が下がるのを抑制するもの(ジーラスタ)
その他、採血、CT、MRI、エコー、マンモなどの検査、毎回診察
入院、手術、処方された薬
<入院>全て3割負担での支払い額
2021年2月 約280,000円
ー内訳ー
・手術治療 約250,000円
・保険外 約27,000円
<薬>全て3割負担での支払額
約14,000円
【ここまでの合計】
合計 約714,000円
放射線治療
1回約6,000円(3割負担)×25回=150,000円
くま子:もしも公的な保険(私の場合は国民健康保険3割負担)に加入せず、全額支払いになっていたら、通院+入院費だけでも、およそ2,800,000円程度になりますが、私の場合は3割負担なので金額は840,000円ほど。実際は高額療養費制度で限度額申請をしていたので、支払い額はこの数字よりもさらに少なくなりました。ほとんどの方は公的な保険に加入していると思いますが、やはり家計への影響はありました。
高額療養費限度額は予め申請することができます。治療が決まった時点で病院で案内があり、住民票のある役所で申請をします。(※限度額は世帯収入により異なります。)
こんなとき、民間の医療保険が下りればとても助かります。もしもの時の備えは、検査と同様に大切です。
保険のこと
くま子:2020年の3月に保険を見直し、4月に新規加入をしました。業者さんには依頼せず、自分で比較検討して決めました。
見直しのきっかけは、夫が加入していた保険が、死亡保険は手厚いものの、若いうちに何かあっても十分な金額が受け取れず、また40歳になると5年ごとに値上がりするプランだったからです。
子どもの教育費が増えていく時期を迎えますし、毎月の掛け金が高すぎず、今もし何かあっても保障が手厚い保険を検討することにして、その際に私の保険も入りなおしました。
保険の掛け替えで注意することは、変更する際に解約日と加入日を確認することです。未加入の期間ができてしまったり(そういう時に限って何かあったり!)がんの保障の場合は、新規で加入しても保険が実際に適用されるのが数か月後になっていることもありますし、解約した後に新たに保険の申し込みをした場合は、健康状態によっては保険に加入出来なくなってしまう可能性もあります。
ですので、まとまった時間があるときに、納得するまで研究することをオススメします。
ウィッグのこと
くま子:抗がん剤による脱毛のため、ウィッグを購入する人も多いと思います。通販などで見かける数千円のおしゃれ用のものから、数十万円の値段の付いた高価な医療用ウィッグもあります。通気性や材質に気を配っているのが医療用とされているようですが、付けやすくて気に入ったスタイルのものであれば、医療用でなくてもいいと思います。自治体によって補助が出る場合もあるので、購入の際は調べることをオススメします。私の場合は、1万円の補助が市から出たので助かりました。通販ではなく試着のできるお店で購入し、行きつけの美容院で似合うようにカットしてもらいました。
くま子さんの失敗談あれこれ
くま子:病気が発覚して、すぐに手術をするものと思い込み、入院中に着るパジャマを早々に購入しましたが、実際は、抗がん剤治療が先で入院は半年先。入院中のパジャマは病院指定でレンタルでした……あとは、保険を入り直した際に「通院保障」を外してしまった事です。がんは放射線や抗がん剤での通院回数が多いので、1日1,000円でも通院費が保証されていると大きいです。あともう1つ、住宅ローンにがんにも対応の団体信用生命保険という保険が付いている事を忘れていました。我が家が契約した保険には、名義人だけでなく配偶者にも適用されるものがありました。(名義人ががんと診断されると住宅ローンの残債が保険から支払われ、配偶者の場合は一時金支給。)
私の場合は、契約時のみ加入可能で、その分金利は上がるシステムのものに加入していました。その保険があること自体、忘れていたのですが、友だちに存在を教えてもらい、書類を確認したら……名義人である夫は加入していたものの、私の方は入っていなくてショックでした。
くま子さんからのメッセージ
最後までお読み頂きありがとうございました。
がん告知を受けたとき、最初に頭によぎった不安は「お金」「家族」「仕事」でした。きっとそれが気がかりで、がん検診を避けている方も少なくないと思います。
でも治療が始まったら、先生や看護師さんをはじめ周囲の方の助けや様々な制度があり、その都度、不安を解消する手段がたくさんあることが分かりました。そして、当初の不安はいつの間にかなくなっていました。
自分がこの病気を経験して、一番怖いと思ったことは、治療よりも何よりも「発見が遅れること」です。
幸い、私は早めの発見だったので、今こう言える人生を送ることができています。これからは、ひとりでも多くの人に「最低でも年に1度のがん検診」を受診してもらえるよう、その思いを伝えていきます。それが私が考えた「がんサバイバーとしての使命」だと思っています。
今後は治療中に出会ったYOGAを通じて、多くの方とつながりをもち、自分なりに使命を果たしてゆくつもりです。
そして、「一度きりの人生を楽しく過ごす」ため、笑顔の絶えない日々を送ります!
くま子さんプロフィール
ショートヘア(ウィッグ!)が似合う、キュートな笑顔と真っすぐな瞳が印象的な1女のママ。
1980年生まれ 東京都出身 神奈川在住 2011年に結婚、2015年には長女を出産。
夫とともに鍼灸院を経営 趣味は朝ランニング、料理、食べる事。フットケアセラピスト、ネイリスト、食育アドバイザー、スポーツフードアドバイザーなどの資格を持つ傍ら、ヨガインストラクターになるべく現在勉強中!
がん治療のあれこれを綴ったブログには、子育て中のエピソードや家族の話題、大好きな「おいしいもの」の写真がずらりと並ぶ。
医療保険監修/吉野裕一さん
FP事務所MoneySmith代表。金融機関とは関係のない前職から家の購入を考えた事を機にFPという資格を知り、一念発起で資格取得。資格取得後は、住宅ローンアドバイザーやDCプランナーなどの資格を取得しながら、FP事務所MoneySmithを設立。「人生100年時代を安心して過ごせるプランニング」をモットーに、相談される方に寄り添える提案を行っている。