愛情曲線から妻の本音を知るのが効果的!?
前田さん:結婚当時は、夫婦2人とも愛情度は高いですよね(ふつうは……笑)。でも、出産後に女性側のパートナーへの愛情はみんな大きく低下して、そのあと戻るかどうかは産後の男性の態度によって二極化する……という話、女性のほうは実感値も伴って有名な話ですけれど、知らない男性も多いですよね。
三木さん:妻の愛情の配分がライフステージごとにどのように変わるのかを表している愛情曲線の話ですよね。
家事シェアの講座の中で話すと、女性側が大きくうなずいてくれます(笑)
そして、その様子をみて男性のほうが慌てたり、苦笑いを浮かべるということが多々あります。
男性側は愛情曲線のグラフや数字を見てマズイと思うよりも、隣に座っている奥さんの生のリアクションを見て、女性の普段の不満を実感するようです。ですから一緒に講座やセミナーを受けることは、非常に効果的だと思います。そして、大きくうなずいているパートナーにその理由を聞いてみてください。そこから『回復グループ』に入ることも可能ですよ!
男性は育休を取得し、妻との信頼関係を築くべし!
前田さん:ある機関が妻側に「産後、離婚を考えたことがありますか?」というアンケートを行ったところ、52%もの人が「ある」と答えたそうです。産後は幸せに包まれているイメージがあるなか、実に半数以上の妻が離婚を考えたことがあるのです。これは、夫側からすると驚きの結果ですよね。
三木さん:悲しい結果ですよね。
前田さん:でも残りの48%は離婚を考えてないんですよ。そっちにいくためにどうすればいいか、それは簡単です。妻の産後に夫は家事・育児に向き合えばいいのです。そのためにも私は男性の育休取得を推奨しています。もちろん、赤ちゃんのお世話も大変でしょうが、何よりもこの時期に奥さんに寄り添ってあげることがその後の長い夫婦生活に大きな影響を与えます。これは断言できますよね。
三木さん:でも難しいのが現実かもしれませんよね。
前田さん:そうですよね、男性の家庭進出を阻んでいるもの、それは実は今からまさにパパになろうとしている男性ではないですから。パートナーの出産時、育児休暇を取得したい男性は今や8割です。男性の家庭進出を阻んでいるものは何と言っても社会構造や会社の評価体制です。長時間労働が常態化していることと、マネジメント層の無理解、つまり職場環境なんです。
だから、女性側もパートナーにイラっとしたらすべてを夫へぶつけるのではなく、社会構造、会社の体質について一緒に話し合えるといいかもしれません。僕自身、長時間労働だった職場をやめて今の認定NPO法人フローレンスに転職しました。
長時間労働が良しとされている会社もまだまだありますし、簡単に転職できないと思います。しかし、夫婦2人で家庭を回すことを考えると、転職により収入は減ったとしても2人で協力できる体制にするための投資だと思えば、その選択肢があっていいと思うんです。
夫婦の定期的なコミュニケーションが大切
すでに子どもが大きくなり、愛情曲線は残念ながら低空飛行のままのパートナーシップを築いてしまった夫婦が、これから良好な関係になっていきたい場合はどうしたらいいのでしょうか。
前田さん:結婚生活が何年目になろうと2人で同じテーブルにつき、話し合うことが大事ですよね。日々の生活のなかで「私はこんなことを感じている」と本音を話し合う時間って、意識しないと絶対とれません。日々いそがしいですから、業務連絡になりがちです。
だからこそ、スケジュールをしっかり押さえて、話し合う時間が必要です。話し合いができるようになったら、それぞれの良いところ、改善してほしいところを書き出し、可視化してみることもおすすめです。一緒にいる時間が長くても、わからないことだらけなはず。そして今はうまくいっていても、しっかりチューニングをしていかないとバランスが崩れるものです。
三木さん:前田さんが仰っている通り、定期的に夫婦の話し合いの場を持つことは非常に重要ですよね。
できるなら普段のコミュニケーションの中に気持ちを入れてしゃべることも大事です。「今日は美味しそうな野菜が買えてうれしかった」とか「仕事で失敗してつらかった」など、その日の感情や悩み事をシェアするんです。
忙しくても夕食後に5分から10分ほどなら話もできたりしますよね。コロナ禍なのでテレワークをしているご夫婦であれば一緒にランチに行くなどもいいでしょう。夫婦で楽しかったことや、悲しかったことを話し合える環境を日ごろから作っておくことも大事だとおもっています。
自分の心身を楽にすることも忘れないで!
話し合いで今後の夫婦生活が前向きなものになればいいですが、そうはいかないこともあるかと思います。家事シェアをしたいけれど、夫となかなか話ができないというご夫婦もいるでしょう。そんなときはどうしたらいいのでしょうか?
三木さん:長年、家事は女性の仕事と思っている男性の意識を変えることは難しいですよね。
「この人はいくら言っても変わらないから」と感じてしまうかもしれませんが、諦めたらそこで終わりです。諦めずに話し続けることが大事です。そして一方で、自分の辛さやパートナーへの不満などの思いを一旦切り離し、家事を外注してみる、やらない家事を増やしてみる、便利な家電を導入するなど、工夫によって自分の心身を楽にすることも大切ですよ!
結婚は人生の墓場ではないということ
コロナ禍により、働く環境や家庭生活の変化に伴い夫婦仲が良くなった方も悪くなった方もいるでしょう。
最後に前田さんが「結婚は人生の墓場ではありません。でも、ずっと良い関係性を保つには常にお手入れをすることが大事です」と仰っていたことがとても印象的でした。
いつも一緒にいる家族には「わかってくれるはず」と甘えてコミュニケーションをさぼってはいませんか?
家族だからこそ、感謝や謝罪を忘れず大切に接していかなければならないですね。
お話を伺った方
前田晃平さん
認定NPO法人フローレンスでマーケティング、事業開発に従事。政府・行政に政策を提案、実現するソーシャルアクションも行っている。2021年5月に「パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!ママの社会進出と家族の幸せのために」(光文社)を発売。
三木智有さん
家事シェア研究家 子育て家庭のモヨウ替えコンサルタント
フリーのインテリアコーディネーターとしての活動後、本当に居心地の良い家庭には家事育児を夫婦で楽しむ事が大切と知り、家事シェアを広めるためNPO法人tadaima!を設立。夫婦での家事分担だけでなく、子どもへの家事教育を地域で担える場作りも行っている。
夫婦で読みたい!『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!ママの社会進出と家族の幸せのために』
子育てしやすい国は、みんなが生きやすい国!今日からできることを考えよう。
「パパの家庭進出なしにママの社会進出はありえない」!必読の1冊です。
「パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!ママの社会進出と家族の幸せのために」
光文社
1540円(税込)