50歳目前。読書しようと思ったら集中できなくなっていたことに愕然としたが、そこで新しい発見もあった…という話。

カルチャー

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子どもの頃から、アガサ・クリスティのサスペンスに出てくるミス・マープルのような老婦人の暮らしに憧れていた。ロッキングチェアに座り、日当たりのよい場所で読書をしたり、ゆったりと編み物をしたりしながらゆるりと過ごすのだ。だが、いまの自分の状況からすると、のんびりロッキングチェアに座って読書をしても、集中できないか、あるいはすぐにうたた寝してしまうことになるだろう。本を読むにも体力がいるとは若い頃には気づいてもいないことだった。同じ姿勢で読む筋力、本を読もうという気力、読み続ける集中力。そういうものをひっくるめた体力というものの価値には、失ってみるまで気づかなかった。

つまりは読書ができる老後を迎えるには体力づくりが必要らしいことはわかった。体力づくりは50歳を迎えるにあたってやはり避けられない課題だ。でも、その体力がつく時間を待ってばかりではいられない。どうすればよいのか。

ここで思いついたのがメモ法だ。「読みながら気が散ってしまうのは、きっと、やることが多すぎて頭の中が忙しいからだわ」と前向きに考えて、読書するときは横にメモを置いてみることにしたのだ。感銘を受けた部分を抜き書きする、などという高尚な使い道ではない。「今日のおやつはクッキーが食べたいな」「プランターのバジルを摘まなくちゃ」「冷蔵庫の豚肉を早く使わないと」などなど、本を読みながら頭に浮かんでしまい邪魔をしてくる思考をとりあえずアウトプットして脳から追い出すためのメモだ。

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そうして書き出したことは、本を置いたあと、あるいは翌日などにチェックしなおしてみる。すると、後から見たらどうでもよくなっていることもあれば、おや、すごいことを思いついていたね! と我ながら驚くこともある。27日の引き落とし用にお金を移さなくちゃ、なんて雑務のリマインダーに混ざって、新しい企画や面白いレシピなど、仕事に繋がるアイデアが転がっているのだ。

いったいこれは何の話をしてるのか、と自分でも意味さえわからない思いつきも多いけれど、本を読んでいるときに限って予想外のことがたくさん浮かんでくるのは、きっと脳のいつもと違う部分が刺激されているのだろう。気が散って本が読めなくなってしまったわ、と嘆いていたけれど、普段とは違う思考が流れ込んできているということはきっと脳のトレーニングにはよいに違いない。

これはちょっとした発見だった。日頃、思いついたことも情報が多すぎる暮らしの中ではすぐに流れていってしまう。立ち止まってメモを取る。そんな古典的なことが思考の整理にも役立ち、新しいアイデア源にもなるのだ。本来の本の楽しみ方とは少し違うかもしれないが、本を読むことによって脳の違う部分が動き始めるのを感じることができるメモ法、老化への抵抗で始めたつもりのことが、思いもよらない効果をもたらしてくれた。体力づくりとはまた違うベクトルで、これもアンチエイジングになるかも、と新たな楽しみ方にワクワクしている。ぜひ皆さんにもお試しいただきたい。

こうしてまた少しずつ、読書を自分の暮らしの中にたぐり寄せることができるようになったことには、このメモ法ともうひとつ、体力づくりの一環のごはん改革がある。それについては、次回にまた書こうと思います。

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著者

田内しょうこ

田内しょうこ

「働くママの時短おさんどん料理」「育休復帰のためのキッチンづくり」「忙しいワーキングマザーのための料理」「子育て料理」をテーマに、書籍や雑誌、ウェブサイトで発信。出張教室やセミナーのほか、食と子育て関連の情報発信を行う。著書に『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)、『「今日も、ごはん作らなきゃ」のため息がふっとぶ本』(主婦の友)などがある。

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