お話を伺ったのは……代表取締役社長 黒川由朗(くろかわ よしお)さん
予約開始から2ヵ月足らずで完売のランドセルを作る、明治28年(西暦1895年)創業の有限会社黒川鞄5代目代表取締役。革の選定からデザイン、工程、販売まで鞄に関わる全てに対して管理監督し、時には実際に製作も行うという総合的な視野に立った鞄職人。
まるで工芸品!ランドセルを少量限定で作る理由
――黒川鞄では、ランドセルを今も手縫いで作られているとのことですが、工場など機械で生産する場合に比べ、どのような違いがあるのでしょうか?
ランドセルの材料が人工皮革のクラリーノの場合、材質が均一であるため機械でも問題なく縫うことができます。しかし牛革やコードバンは同じ革でも自然素材ですので、厚さや素材は1つ1つ違い、状態も異なります。
機械で対応ができる場所はミシンを使いますが、革をじっくりと見聞きすることが必要な場所は、素材特性を熟知した職人が革と会話しながら製作しています。
その中でも、黒川鞄工房「はばたく®ランドセル」は「手縫い、手作り、天然素材」にこだわり、まるで工芸品のように仕上げています。これは大変手間のかかることなので、少量限定で制作しています。
――手縫いとミシンとを組み合わせることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ミシンでの縫い合わせは上糸と下糸が走っており、糸が1本切れると紐が取れやすいかもしれません。
手縫いの場合は針を2本使い、上下にしっかりと絡めながら縫います。その際に、黒川鞄では蜜ろうを糸に含ませて縫います。縫う際に蜜ろうが潤滑油となり厚い革に針を通し、縫った後はその蜜ろうが固まり、接着剤の役割をして、糸のほぐれ防止と強度を高めてくれます。
また手縫いする際に大切な蜜ろうにもこだわっており、銀座ミツバチの高級蜜ろうを使って手縫いを行っています。
子どものことを考え抜いたランドセル
――6年間も使うことになるランドセルに対して、黒川鞄さんが行っていることはありますか?
私共が提供する黒川鞄のランドセルには、シリアルナンバー、ギャランティーカードとともに地球儀柄の専用ギフトボックスでお届けしています。これはランドセル1つ1つにしっかりと命を吹き込んで提供しているからこそできることであると考えています。
また、黒川鞄の素材である牛革は撥水加工となっており、しっかりとした作りなのはもちろんですが、卒業までの6年間無料メンテナンスを行っています。何かあった際にも安心してお使いいただけますよ。
――ランドセル作りで、以前と比べて改良された点があれば教えてください。
ランドセルの形というものは実はほとんど変わっていません。ただ、黒川鞄のランドセルの金具は自動ロックに変更されています。自動ロックの金具を使うことで、お子さんのランドセルの締め忘れを防ぐことができます。お子さんが礼をしたときに教科書がすべて落ちてしまうなどの悲劇から守ってくれますよ。
また、ベルトの付け根に軽量メタル製のスライド背カンを標準装備しているので、成長に合わせて両ベルトがベストな位置にスライドします。冬にコートやダウンを着ても、無理なく自然に背負うこともできます。
昨今のラン活事情の変化
――最近はいつ頃にランドセルを購入する方が多いのでしょうか。
昔は4月入学に向けて購入されるので、入学式の前年であるクリスマスでも間に合っていました。しかしながら、最近は、どんどんランドセルを注文する時期が早まってきています。
今では年中さんの夏頃に下見を開始し、その年の12月の末にはランドセルを注文される方が増えてきました。その需要に合わせて、黒川鞄でも2021年12月頃には、2023年入学のお子様向けのランドセルのモデルを並べる予定で準備を急いでいます。
黒川鞄もおかげ様で毎年多くのご予約をいただくことから、年長さんのGWにはすでに完売となっているランドセルもあります。
今年はさらに早まることが想定されますので、黒川鞄のランドセルであれば年長に進級する前の3月には何を購入するかを決めいただくといいかもしれません。
――希望のランドセルを購入するにはいつ頃見に行くとよいですか?
黒川鞄のランドセルは、銀座のショールームと富山本店で12月の下旬頃に「新作発表会」としてご覧いただける予定です。
北海道から九州まではポップアップストアも毎年開催しておりますが、今年の開催予定地も決まり次第ホームページでお知らせしていく予定です。また銀座ショールームやポップアップストア入場には、予約が必要となっていますのでご注意ください。
――上のお子さんがいる方は、上の子のときよりもラン活の時期が早まっていそうですね。
そうですね、特に上にお子さんがいらっしゃるご家庭はご注意ください。先ほどお伝えしたように、年々ランドセル購入の時期は早くなってきているので、上のお子さんが購入された時期よりも早めにラン活をされることをおすすめします。オンラインショップや越中富山黒川鞄総曲輪本店で購入いただけます。
使い終わった後も大切にしてほしい
――使い終わったあとのランドセルを作り直すようなサービスはありますか?
「元気な未来の地球」につなげるために、また子ども達にもったいないを伝えるためにも、役目を終えたランドセルを、有料で絵葉書サイズのミニランドセルやペンケースなどにリメイクを行っています。
大きなランドセルをそのまま保管しておくということは難しいけれど、大切な思い出が詰まったランドセルはなにかの形で残したいというお客様からの要望に応え、このような取り組みを行っています。
リメイクしたミニランドセルは結婚式に贈呈として使ったり、ペンケースは中学高校で使ったりする方が多いです。最後の最後まで大切に使ってもらえればという気持ちを込めて作っています。
「進化するスタンダード」を今後も続けたい
――黒川鞄の今後の展望や目標について教えてください。
最近の日本は元気がないと感じます。そのような中で、今後も新しい世代の方にできる範囲の貢献を行っていきたいと考えています。黒川鞄のランドセルは一見変わらないように見えますが、創業125周年を迎える今も、研究を重ねて進化しています。細部にまで計算しつくされた「進化するスタンダード」を今後も続け、これからも子どもと一緒に成長できるものを提供できたら嬉しいです。
ランドセルは入学されるお子さんだけではなく、そのご家族の気持ちも込められています。黒川鞄では、職人さんが革と向き合い1つ1つ手作りでランドセルに命を吹き込んで作っていることを今回の取材で伺うことができました。6年間使うランドセルは、このようなメーカーの想いなども参考にするといいかもしれませんね。黒川社長、ありがとうございました。
黒川鞄では、2023年4月入学用のランドセルラインナップ発表会が開催予定。また、カタログ請求も受付中です。小学校入学を控えるお子さんが身近にいらっしゃる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。