お話を伺ったのは……代表取締役社長 黒川由朗(くろかわよしお)さん
予約開始から2ヵ月足らずで完売のランドセルを作る、明治28年(西暦1895年)創業の有限会社黒川鞄5代目代表取締役。革の選定からデザイン、工程、販売まで鞄に関わる全てに対して管理監督し、時には実際に製作も行うという総合的な視野に立った鞄職人。
ランドセルは富裕層が使う高級品だった
――ランドセルは昔から今の形で作られていたのでしょうか?
現在は多くの小学生が使っているランドセルですが、その昔は皇族や富裕層の方が学校に通う際に使うような高級品でした。オランダからきた、リュックのような布製のかばんである背嚢(はいのう)の形をまねて作り始めたのがランドセルの始まりといわれています。そして戦後に牛皮を使う形で全国に広まったといわれています。その頃から現在に至るまで、ランドセル自体の形はあまり変わっていませんね。
――黒川鞄ではランドセルのみ作っていらっしゃるのでしょうか?
黒川鞄は、メンズやレディースの商品も扱っています。富山本店には、ランドセル以外の商品も多数展示しています。しかしお客様からはランドセルのご要望が多いため、現在はランドセルをメインに取り扱っています。
創業125年の老舗メーカー黒川鞄。5代目の黒川社長の覚悟
――初代の方はどのような経緯で黒川鞄をはじめられたのでしょうか?
初代が創業した明治の中頃は洋物雑貨が人気で、これらを作り始めたのが黒川鞄の始まりです。当初はアメリカやヨーロッパなどの製品をまねた形で販売していたのですが、それが大ヒットしました。そこで北陸の富山県で、デパートの元祖と言われる「勧工場」の一区画を借りて創業したのが始まりです。
――現在5代目でいらっしゃる黒川社長はどのような経緯で継承することを決められたのですか?
子どもの頃から鞄やランドセルを作る職人が身近にいたことや、お店に買い物に来るお客さまを長年間近で見てきたことが決め手かもしれません。代々続く老舗を継承したいという想いもあり、先代に続き黒川鞄を背負っていくことを決めました。
3世代の夢が込められているランドセルを、1つ1つ心を込めて作りたい
――ご自身も職人として鞄作りに携わっていらっしゃいますね。経営者兼職人として大切にしていることは何ですか?
現在SDGsが話題になっていますが、日本の商人はその昔より「売り手と買い手と世間」の三方よしとして活動してきました。言い方を変えると、「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと。社会に貢献できてこそよい商売といえる」ということです。
黒川鞄は天然素材の牛皮を使って製品を作っていますが、もともと牛革を使うということは贅沢品ということではなく、食肉の残った牛皮をも大切に使うということから始まっています。
牛革を使って鞄を作るということは、家畜として飼育されていた牛の残った材料、命あるものの材料を今一度生き返らせるということに通ずるのです。私共は、この考えに基づいて牛革で鞄を作りお客様へご提供しています。
ランドセルは、孫の成長を願うおじいちゃんおばあちゃん、子どもにすくすくと成長してほしいと願うお父さんお母さん、夢いっぱいでこれから新しい小学校生活をおくるお子さんの3世代の夢が込められたものです。そのお手伝いができればと、私たちはランドセルを1つ1つ心を込めて作り販売しています。
家族みんなが子ども達の成長を祈り、購入するランドセル。黒川社長を始め職人の方々が、ランドセルを背負う子どもやその家族のことを考え、大切に作ってくださっている想いを伺うことができました。ランドセルの始まりは、今とは異なり一部の人々が使うものだったとは驚きでしたね! 興味深いお話をありがとうございました。
黒川鞄では、2023年4月入学用のランドセルラインナップ発表会が開催予定。また、カタログ請求も受付中です。小学校入学を控えるお子さんが身近にいらっしゃる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。