国際交流協会に週イチで通っています。
自宅から徒歩圏内に吹田市国際交流協会があるため、数年前から断続的に英会話を習っています。一般の英会話スクールに比べると授業料が安く(1回1時間、人数は5人程度のレッスンが教材費込みで1600円ほど)地域在住の外国人の方が講師なので「公園の北側の紅葉がキレイ」「駅前のパン屋さんはおいしいね」などと地域の情報交換ができる楽しみもありました。
この協会でお友だちが外国人に日本語を教えるボランティアをしていたり、地域に住む外国人主婦の方から韓国やインドネシアの料理を習う機会があり、日本に住む外国人の方々の「悩み」「孤独感」に気づくことができました。「何か私にできる支援があれば…」と、思ったのがきっかけで調べたところ「プレスクールボランティア」なら、外国語力や日本語講師の資格が無くても活動できることがわかりました。
外国にルーツを持つ・外国につながる子どものためのプレスクール
私が参加したのは、(公財)大阪国際交流センターが大阪市教育委員会との共催で行った「外国にルーツを持つ・外国につながる子どものためのプレスクール」で活動するボランティアになるための「養成講座」です。
具体的に言うと…子どもたちやその家族が日本の小学校について理解を深め、学校生活に必要な簡単な日本語を学び、入学準備のお手伝いをする、というもの。講師の先生の言葉をお借りすると「入学式が楽しみだなぁ」と子どもたちが思えるような授業をするのが目標です。
まだ日本語がわからない親子に寄り添う
(公財)大阪国際交流センター国際交流課事業担当の植松夕紀子さんにお話を伺いました。
--このプレスクールには、どのような子どもたちが参加していますか?
植松さん:昨年度は約80名の子どもたちが参加しました。すでに幼稚園や保育所に通っている子や日本に来て日にちが経っている子の中には日本語が少し話せる子もいますが、日本に来て間もない、まだ日本語があまりわからない子どもや親御さんもおられます。
--ボランティア養成講座では、給食やそうじの説明をするロールプレイをしました。給食が無い国があることは知っていましたが、教室のそうじを子どもたちがするのは日本独特と聞いて驚きました。
植松さん:そうですね。例えば困るのが、ぞうきんを入学時や転入時に「学校に持ってきなさい」と言われても、いったい何をするものなのか…日本の小学校を卒業していなければ、大人でもわかりません。タオルを畳んでミシンをかけたあのスタイルのぞうきんを準備するのは外国人にとって実は大変なことです。
また、日本では「みんなで使う場所を自分達できれいにする」という教育的目的でそうじの時間がありますが、国によっては「そうじをするのは身分の低い者の仕事」とされている国もあるので、保護者に対してもそうじの意義を説明する必要があります。
--給食や掃除以外で、他にも学校生活の中で見られる日本独特な習慣はありますか?
植松さん:まずは「持ち物に全て名前を書く」ということですね。1年生に配られる、算数セットの中の細かいお道具ひとつひとつに名前を書いたり、あとは給食です。宗教上やアレルギーで食べられないものがあれば、学校に伝えなくてはいけませんし、そもそも日本の食事に慣れていなかったり、クラス全員で配膳をしたり「いただきます」の挨拶、そしてお箸の使い方など、一度も体験しないで入学してしまうと戸惑うばかりでしんどいと思うんです。なので、プレスクールでは日本語を学ぶことを主としているわけではなく、とにかく子どもたちが「これはやったことがある!」と思える程度の経験値を与えることができれば…と思っています。
--確かに日本に来て間がない親御さんがひらがなで子どもの名前を書くことは、大変な苦労になりますね。…ということは、近所に外国人の小学1年生の親御さんがいたら「名前は書けましたか?」とか「ぞうきん、わかりますか?」と聞いてみるといいですね。
植松さん:はい、充分です。外国人家庭にとっては、ママ友が大切なキーパーソンになります。ひとりでも近くに日本のことを良く知る人がいてくれたら、持ち物や行事の相談もできますし、それぞれの国での習慣の違いから周りに誤解を生むようなことも防げるので、本当にママ友は外国人支援において、ありがたい存在です。
ー-ボランティア養成講座に参加して「こんなにたくさんの人たちが、外国人の子どもたちに心を寄せているんだ」と思うと、とても心強く思えました。
植松さん:このボランティア活動をすることで、それぞれが自分の住む地域の外国人親子に関心を持って接してもらえるようになれば…と思います。外国人家族と学校や地域とのパイプ役になってもらえるとありがたいです。そして、ゆくゆくは地域で自らプレスクールを企画してくれる人が育ってくれるとうれしいですね。
ー-地域でプレスクールが開催されると、家から近くて子どもたちも通いやすくなりますよね。
植松さん:今は大阪市内で拠点校4校での開催になっているので、どうしても「遠いから」という理由で来られない子もいます。親子での参加になるので、赤ちゃんがいる家庭などは参加しにくいようです。近くで開催されたら、参加できる子どもたちも増えるでしょうし、何より近くの外国人同士や日本人とつながる場、居場所になります。地域でのプレスクール開催が理想ですね。
プレスクールを必要とする外国人親子にもっと情報を届けたい
--昨年度は多くの子どもたちがプレスクールに参加したようですが、まだ全ての子どもたちが参加できているわけではなさそうですね。
植松さん:案内はしていますが、来られない理由の多くはやはり開催場所が遠いというのがひとつ、あとは開催日である土日に働いておられるご家庭の方が送り迎えがしづらい、という実情もあるようです。そのような境遇の子どもたちが孤立してしまわないか、心配しています。地域で気になる親子を見かけたら「何年生ですか?」から始まって「連絡帳とかわかりますか?大丈夫?」などの声掛けをしていただけたら…と思いますね。
資格が無くても始められるボランティア
一見、ハードルが高く思える「外国人の子どもたちのための支援」ですが、外国語ができなくても、教員や塾の講師などの経験が無くても、日本語教師の資格が無くても、養成講座を受ければ活動することができます。植松さんは「特に資格は必要ありません。ただ子どもが好きな方なら歓迎です。」と言葉に力を込められました。日本の小学校の「当たり前」は、当然ながら世界のスタンダードではないため、母国との差を埋めるためには、日本の学校を良く知る人の手助けが必要です。
これを読んでくださった方がひとりでも「そう言えばうちの子のクラスに外国人の子がいたな。」とか「このボランティアなら私にもできそう!」と気づいて、声掛けをしたり、ご自身の活動をスタートさせてくださればうれしく思います。
次回は国際交流協会のさまざまな活動について、お伝えします。