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精神科入院、離婚…元芸人おかもとまりが語る「人生のどん底」からの這い上がり方と見えた世界

カルチャー

 精神科入院、離婚…元芸人おかもとまりが語る「人生のどん底」からの這い上がり方と見えた世界

2021.01.07

10代で芸能界に入り、「可愛すぎる女芸人」として大ブレイクしたおかもとまりさん。 人気絶頂の25歳で結婚、出産、そして28歳で精神科へ入院、離婚、芸人引退……。
そんな大変なできごとが続いた彼女が「今が一番幸せ」とキラキラした笑顔を見せてくれました。 自力で苦難を乗り越えてきた人から溢れ出る美しさというものがあります。今、おかもとまりさんを輝かせているのは、そのパワーを身につけたからではないでしょうか。
自分の人生と向き合ったときに見えてきた「本当に大切なもの」。それがわかれば、人生はより良い方向へと開けていく。そんなお話を聞きました。

笑顔でいるためには、自分自身を好きでいてあげないと

――20代後半に、離婚、精神科への入院、お笑い芸人引退と、かなりヘビーな出来事が続いたと思うのですが、その経験は今のおかもとさんにどのような変化をもたらしましたか?

おかもとさん(以下敬称略):本当にいろんなことを経験したおかげで、自分らしく生きる方法がわかったんです。今は、良い感じに力を抜いて過ごせています。若い頃は「いつか幸せになるために今頑張る」とか、「今、無理をすれば未来はラクになる!」とかそんな風に考えてばかりで、「今の自分」を全然ケアできていなかったんです。だから、体と心のバランスを崩してしまったんだろうなって思います。

――自分らしく生きる方法というのは、具体的にどのようなことですか?

おかもと: 「今の自分」を大切にするということが、未来の自分の幸せにつながるということに気づけたんです。
昔は、耐えることが当たり前、我慢することが当然! と思いこんでいたけど、今は、辛かったら無理はしません。「今日は、こんなに頑張ったんだから、残りは明日やったっていい」と思うんです。
若い頃って、自分の人生もどこか人任せというか、幸せにしてくれる誰かを待ったり、期待したりするけど、結局自分の人生がどういう人生になるかは自分次第なんですよね。この人生の運転手は私だから、フォルムも欠点すらも好きになって、この人生を愛そうと思えたことが、自分らしく生きられるようになったきっかけだと思います。

――まだ芸人を引退する前と比べると、今のおかもとさんは内側からポジティブなパワーが溢れていると感じます。そして、すごくキラキラしていますね。

おかもと: ありがとうございます(笑)。私、今幸せなんです。それが出ているんだとしたら嬉しいですね。悩みまくっていた頃の私は、31歳の自分が「幸せです」と言う自分の姿なんて想像もできなかった。元々明るい性格なので、20代の頃も笑顔でいることは多かったと思うんですけど、あの頃は自分のことが嫌いだったし、自己肯定感も低かったんです。
今は、とにかく自分のことを褒めるようにしています。それは、自分のためでもあるし、息子のためでもあります。ママが笑顔でいることが、息子にとって一番なはずだから。笑顔のママでいるためには、自分自身を好きでいてあげないとダメですよね。

――やはり、いろんなことを乗り越えられたのは、息子さんの存在が大きいですか?

おかもと: 息子の存在は私の全てです。離婚のタイミングで精神科に入院して、芸人も引退しました。「仕事と家庭、一気に全てを失くしてしまった……」と、心に大きな穴が開きました。そしてそれ以上に、入院生活中に息子と会えないということが何よりも辛かったんです。全てを失ったと思っていたけど、私は一番大切なものをまだ失っていなかった。何を失っても、息子がいてくれたら私は幸せなんだということに救われました。何かを決断するときには、息子の幸せを一番に考えて、答えを出すようにしています。

人生に失敗したわけじゃない。ちょっと、がんばりすぎちゃっただけ

おかもとまりさん

――「離婚」という決断をするまでには、さまざまな葛藤があったと思います。「離婚」という決断をした一番大きな要因をお聞きしてもいいですか?

おかもと: 今だからそう思えるというのはあるんですが、恋愛と結婚って全く違うんですよね。家族になって一緒に生きていくということは、自分の気持ちばかり押し付けていてはダメだし、お互いを尊重するということがすごく大切。これは、私の悪い部分だったんですけど、相手に期待しすぎていたのが良くなかったなと思います。夫婦と言っても所詮は他人なので、自分の気持ちが100%伝わるなんてことはないし、求めたものが返ってこないのは当たり前なんですよね。でもそれがわかっていなかった。元パートナーからの子育てに関する意見にしても「なんで? どうして?」ばかりになっていました。そのうちに少しずつ、うまくいかないことの全てが自分のせいみたいな気持ちになってしまっていたんです。

――その状況を改善するために取り組んだことや、挑戦したことはありますか?

おかもと: 第三者の意見が必要だと思い、夫婦カウンセリングに通いました。ずっと、自分が間違っているんだと思い込んでいたけど、「こんなに頑張っていたら、体調を崩して当たり前だよ」と先生が言ってくれて、あ、私の辛い気持ちを理解してくれる人がいた! って思えました。と同時に、やっぱりこのままじゃいけないと思ったんです。カウンセリングは、離婚のきっかけになったかもしれません。でもあのときカウンセリングを受けていなかったら、我慢することが当たり前の中でもっと私はボロボロになっていたと思います。私がボロボロになるということは家族にも負の影響がどんどん出るということです。なので「離婚」はけして悪いことではなく、幸せになるための方法だったんです。

子どもにはパパがいないことで寂しい気持ちにさせてしまいますが、私が全力で子どもを幸せにすると決めています。

まだ日本ではカウンセリングが一般的になっておらず、行きにくいというイメージを持つ方もいるかもしれません。でも第三者にしっかり話を聞いてもらうのは息詰まった事態を動かすいいカードです。まずは話を聞いてもらうということだけでも暗闇に光が射すのでおすすめしたいですね。

――離婚をするかしないかということやタイミング、きっかけは夫婦によって違うと思いますが、おかもとさんが「離婚」を決めたタイミングはご自身にとってはベストなタイミングだったということですね。

おかもと: 離婚を決めたというよりは、「もうダメだ。死んでラクになりたい」と思ったというほうが正しいかもしれません。私、離婚届けを置いて家を出て、そのまま命を絶とうとしていたんです。精神科に入院したのはそれが原因なんです。私、若い頃から芸能界にいて、それなりに大変なことはあったけど、それでも死ぬことを意識するようなことはなかった。当時はそのくらい追い込まれていたんですね。だから、あのタイミングがベストだったと思います。

――そんなギリギリの状態から、どのように回復していったんですか?

おかもと: 私の場合は入院中に離婚届が受理されたことを聞いて、だんだんと冷静さを取り戻していきました。入院中って、すごく時間があるんです。時間薬じゃないですけど、決まった時間に寝て、起きて、ご飯を食べるというルーチンの中で考える時間がたくさんありました。
そのときに「なんで自分がこんなところにいるんだろう」と思うんじゃなくて、「私は今、執筆活動のために熱海の旅館で缶詰になっている」と気持ちを切り替えて、楽しむことにしたんです。

――そう思えるってすごくないですか? メンタルの強さを取り戻していますよね(笑)。

おかもと: もともとの性格はそのくらい明るいんですよ(笑)。それに、息子に会えない時間を無駄にしたくないと思ったんです。

息子と会えない日々の中で「私にとって一番つらいのは子どもに会えないことだ」とわかりました。息子が幸せならそれでいい。そう思ったら心が癒えていくのを感じました。
以前原案を書いた「青の帰り道」という映画の中に「生きる道はひとつじゃない」という言葉があるんですが、それを実感しましたね。離婚をして、芸人を引退して、私が歩んできた道は変わるけど、それ以外の道がたくさんあるはずって思えました。それで入院中にずっとやりたいと思っていたことをひとつずつ始めてみたんです。
離婚をするまでは「離婚は人生に失敗すること」みたいな気持ちがあって抵抗があった。でも「生きる道はひとつじゃない」を心から実感したときに「私、頑張りすぎちゃってたなぁ」って気持ちで力を抜くことができました。

――その入院生活中に、昨年末12月20日にYouTubeで公開されたアニメ「ウシガエルはもうカエル」も書かれたんですよね。

おかもと: そうです。作品にすると決めて、仕上げに取り組んだのは入院中です。あと、いつか講演会をやりたいので、そのための台本を書いたりしました。入院中に「やりたい」と思ったことがどんどん形になりました。昨年末にはたくさんの方の協力を得て、「ウシガエルはもうカエル」を公開できたことも、私にとって大きな出来事だったし、自信にもつながりました。心に余裕を持つってすごく大事なことなんですね。仕事もスムーズに進むし、関わる人への言葉の伝え方も変わるんです。

――20代の後半、大変なことがたくさんありましたが、その経験はおかもとさんにとって必要な経験だったと思いますか?

おかもと: 今の自分がいるのは、いろいろなことを経験したからこそだと思っています。人生の筋トレをしたような感じです(笑)。人生のどん底を味わったので、今はもう怖いものもありません。
入院中に、これから自分が生きていく意味をしっかり理解していないといけないと思え、すごく良い感じに生まれ変われたなと思っています。私、今の自分が大好きなんです。いろんなことを乗り越えて、自分の人生が大好きになりました。

「生きる道はひとつじゃない」手放したことで見えること

「私、今幸せなんです」。そう言うおかもとさんは、本当にキラキラと輝いていた。

そう言いきれる「今」を手にしたのは、自分の人生に責任を持つという覚悟ができたからだということは、今回の話の中からも伝わってくるだろう。
相手に期待ばかりしていた頃よりも、自分の足で立っている今のほうが満たされているという彼女は、本物の強さを手に入れたのだ。

現在、YouTubeで配信中のアニメ「ウシガエルはもうカエル」のテーマでもある「愛は捧げるだけのもの」というのは、この様々な経験からおかもとさんが見つけ出した、幸せになるための答えなのかもしれない。

おかもとまりさん原作のYouTubeアニメ『ウシガエルは、もうカエル。』

『ウシガエルは、もうカエル』公式YouTubeチャンネルにて配信中!

子どもには挨拶の大切さを、大人には"愛は捧げるだけ"の意味を、15年後の子どもに"愛"を受け取るキッカケを……

  • キャスト:中川翔子・恋香楼(こころ)・冨田佳輔・斎藤工  他
  • 脚本:石田明 (NON STYLE)
  • 原案・企画:おかもとまり 

 

interview&text:上原かほり
photo:落合隆仁(Gran)

著者

上原かほり

上原かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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