教えてくれたのは……中野信子さん
『まんがでわかる 正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)
監修:中野信子
作画:川井いね子
シナリオ:サイドランチ
価格:1,320円(税込)
正義中毒ってどんな状態?
脳科学者の中野信子さんが名付けた言葉「正義中毒」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
「間違ったことが許せない」
「間違っている人を徹底的に罰しなければならない」
「私は正しく相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」
この3つの思考パターンが止められなくなると、正義中毒になっている状態だと、監修者の中野さんはいいます。
他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが放出されます。
この快楽にはまってしまうと、常に罰する対象を探し求め、決して人を許せないようになってしまいます。こうなってしまうと、依存症とほとんど同じ構造のため、なかなか抜け出せなくなってしまう危険性も。
SNSが普及し、誰もが簡単に情報発信できるネット社会が進む昨今、特に正義中毒が増えており、誰もが陥る可能性があるといいます。
正義中毒を乗り越えるカギは「メタ認知」
では、どうしたら正義中毒を乗り越えられるのでしょうか。
中野さんは、脳の前頭前野の状態に関係するといいます。前頭前野とは大脳の前方部に位置し、記憶や感情といった精神活動の中枢として重要な役割を果たしている部分。
この前頭前野の重要な機能「メタ認知」によって、自分自身を客観的に認知できるといいます。正義中毒に陥らないためには、常に自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です。
「メタ認知」能力を高めるためには?
メタ認知能力に最も大きく影響するのは「環境要因」、つまり「関わる人」です。
環境要因は、遺伝的な要素よりも大きくメタ認知能力の高低に影響をもたらします。メタ認知能力は、小学校低学年頃から育ち、30歳頃に完成。この期間は、周囲からの影響を受けながら成長を遂げていきます。
だからこそ、幼少期から30歳頃までの時期にどんな人と出会い、どんな影響を受けるのかがとても重要です。
子どもにとって身近な存在である「親」は、子どものメタ認知に影響を与える可能性が大きいので、親自身は「メタ認知できているか?」と、自分を見直すと良さそうですね。
でも30歳過ぎてるし、もうメタ認知能力は高められないんでしょ……。と思われる方がいるかもしれません。
安心してください!「老けない脳」をつくるトレーニングがあるんです。
脳を老化させないために
個人差はあるものの、脳の前頭前野は30歳頃をピークに衰えてきます。日常生活の中で、前頭前野を鍛えるためにできることを4つご紹介します。
新しい体験に挑戦する
いつも通る道とは別の道を通ってみるなど、普段慣れている行動を少し変えてみるだけでも前頭前野を活発にさせます。また不安定な環境に身を置いてみることも、脳にいい刺激をもたらします。
安易に決めつけない
物事を安易に「〇〇は~~だから」とすぐに決めつける癖を続けていては、脳が働きません。簡単にレッテルを貼ってしまうのではなく、物事の本質を見極めてみるように意識してみましょう。
余裕を大切に
寝不足や精神的に追い詰められていると、前頭前野が働きにくくなります。忙しい毎日の中にも余裕を感じられるようにしましょう。
オメガ3脂肪酸の摂取を
食事にオメガ3脂肪酸(不飽和脂肪酸)を積極的に摂取すると、前頭前野の働きを良くします。
青魚の油や、貝類、ナッツ類、えごま油、亜麻仁油などにオメガ3脂肪酸が含まれています。意識的に普段の食生活に取り入れてみましょう。
正義中毒に陥らないために
正義中毒に陥らないためには「他人を攻撃して、ほんのひととき痛快な気持ちになったところで何も変わらない」「人は皆、不完全である」という意識を持ち続けることがとても大切です。
あなた自身や、子ども、身近な人のなかに「正義中毒」の人はいますか?本人は自分で気づいていないかもしれません。もし頭の中に「この人そうかも…」と浮かんで来たら、ぜひ今回ご紹介した内容を伝えてほしいです。