お話を伺ったのは……沼田晶弘先生
1975年生、東京都出身。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。
子どものやる気を引き出すユニークな取り組みが話題となり、多くのメディアで取り上げられる。『もう「反抗期」で悩まない!親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』(集英社)など著書も多数。
『もう「反抗期」で悩まない!親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』
著者:沼田 晶弘
価格:1,540円(税込)
「反抗」ではない。子どもは「自己主張」しているだけ
「ゲームばっかり! 宿題はしたの?」と言えば、無視。
「お風呂に入って!」と言えば「あとで」と返ってくる。
「早くしなさいっ」と叱れば「いちいちうるせぇな」と逆切れ……。
「昔はあんなに素直に言うことを聞いてくれたのに……。うちの子もいよいよ反抗期!?」と、お子さんにファイティングポーズを取っている親御さんも多いのではないでしょうか。
しかし、そのお子さんの対応は、本当に反抗期でしょうか?
「お子さんは自己主張しているだけ。反抗なんてしていません。そもそも『反抗期』なんてないんです」
と、ぬまっち先生は言います。たしかに、思春期を迎えたわが子が少しでも抵抗するような態度をとったら「反抗期だ」と私たち親は考えますが、続けてぬまっち先生はこう言います。
「今まで素直に親の言うことを聞いていたお子さんから『イヤだ!』なんて答えが返ってきたら、びっくりするのは当然です。でも、それは反抗しているわけではなく、『自己主張』しているだけです。やりたくないと思ったから『イヤだ!』と言っているに過ぎません。その答えの裏には、その子なりの理由があることをまずは考えてあげてください」
タイムスリップを間違っていませんか?
親が子どもにやってほしいと思うことを伝えるとき、「〜しなさい」などの言葉とともに『お母さんがあなたと同じ年のときは、これくらいできていたよ』や『お父さんが〇〇と同じ4年生のころは、もっとちゃんとしていた』など、過去の自分とわが子を比べるような発言をしていませんか? この声かけも実は、問題のある言葉なのだそうです。
「これは親御さんがよくしてしまうことなのですが、この場合タイムスリップする年代を間違えていることが多いです。
たとえば、お子さんは現在、小学4年生なのに自分の小学6年生のときと比べてしまうということです。親もわざとではありません。しかし、曖昧な記憶をもとに『たぶん、自分はできていた』という自信のもとに発言してしまうのです。
しかし、『お父さんやお母さんのほうがよくできていた』と言われても、何も言い返せません。勝手に比べられるお子さんが気の毒です」
子どもは「血のつながった他人」という視点をもつ
「親というものはわが子に非常に期待をするものです。自分のお腹から出てきたから、または、自分の遺伝子が……と自分の分身のような扱いをしてしまうものです。
例えば保護者会でお子さんのいいところをお伝えすると『私に似たのね』と納得するように大きくうなずくお母さんがいます。しかし、ここはもう少し頑張って欲しいな、という部分をお伝えすると、急に『夫にそっくりなんです』と、私には関係ないんですよと言わんばかりのお母さんがいます。
そんなとき私は、『間違いなく、お母さんのお腹から生まれてきましたが、まったくの他人を生んだと思ってください』とお伝えしています。
親はどうしてもお子さんにまつわる出来事を『自分事』として受け止めがちです。そして、自分の思い通りに行動しないとイライラします。
でも、お子さんは遺伝子を受け継いではいますが、まったく同じ人間ではありません。ですから、子どもは『血のつながった他人』という視点を常に持っていると冷静でいられて、むしろ、その子のことを尊重できるようになります」
わが子は自分の分身という意識が強いと、つい言ってしまう言葉も多いもの。
そのためにも「子どもは血のつながった他人」という考えを持っていれば、そもそも過去の自分と比べることはしないのかもしれません。
子どもとよく意見が衝突してイライラする……という場合は、まずは自分の考え方を見直す必要がありそうです。