教えてくれたのは……原邦雄さん
コンサルタント、一般財団法人の代表として、企業の職場環境を改善するための研修や、小中学生への講演、学習塾の教員への研修などを行っており、アメリカ、インド、中国、オーストラリア、シンガポールなど世界18ヵ国で自身が開発した教育メソッド「ほめ育」を伝える活動を展開している。
『ほめコミュニケーション』
著者:原邦雄
定価:1,540円(税込)
こじれた人間関係の原因は「過去の記憶」だった
職場やママ友同士など、人間関係の悩みがある方は多いと思います。
でも実は、今目の前にあるこじれた人間関係の原因は、相手ではなく「あなたの過去の記憶」が作り出している可能性が高い、と原さんは言います。
相手から以前言われたイヤな言動や、イヤだった振る舞いが、自分の中で「イヤな思い出」として記憶され、相手への否定的な感情が定着しているとのこと。
みなさんも過去に起きたイヤな思いによって、相手への苦手意識が芽生えていませんか? でも相手はそんな出来事を覚えていない、なんてことがよくあります。
多くの人は「明日あの人と会うのがイヤだな……」と悩みの種が「未来」にあると勘違いしてしまいますが、実は悩みの種は、自分の「過去の記憶」にあるだけ。そう考え方を変えることで、少し気持ちが軽くなりますよね。
自分回りの人間関係を作ることがカギ
人間関係の悩みは「過去の記憶」にあるため、まずはこの記憶を上書きし、相手との無理のない自然なアプローチをしていくことが必要、と原さんはおっしゃいます。
そのためには、自分が人間関係の主導権を握り、自分のペースでコミュニケーションをはかる「自分周りの人間関係」を作ることが必要なのだそう。
この自分回りの人間関係を作るためには、どうしたらいいのでしょうか? 複数人でのコミュニケーションの中では、自分自身の「持論」を持ち、「本来の目的」を見失わずに、本質をきちんと把握したうえで自分の意見をしっかりと語ることが重要だと原さんは言います。
特に会議などでは、話し合ううちに本来の目的を見失いがちですが、「そもそもの目的はこれでしたよね」と本質に立ち返り、自分の意見をセットで語ることができると、相手も「この人の話を聞いてみたい」「なかなかやるなぁ」と一目置き、自分回りの状態を作ることができるのだそう。
普通の会話の中でも、ビジネスの場でも「言わない方がいいこと」はあるものですが、特にビジネスでは「言うべきことを言わない」方が弊害が大きいと原さん。あなたの気づきは、他の誰も気づいていない貴重な意見かもしれません。議題の本質を見失わなければ、躊躇なく自分の意見や気づきを発言してみてください。
人間関係の距離感は自分でコントロールできる
すべての人と同じ距離感で接するのが普通だと思いがちですが、実はこれはバランスが悪い状態だと原さんは言います。
積極的にコミュニケーションを取りたい人とは近い距離で、逆に苦手だけどいい関係は維持しなければいけない人とは、ある程度の距離を保って付き合うのが理想的とのこと。
そこで、今あなたが悩んでいる人間関係の相関図を書いてみましょう。その中で、自分が誰とどういう距離感で接していきたいのかを可視化していきます。
限られた人数の職場、コミュニティの中でその組織をコントロールすることはできないかもしれませんが、相手との会話の量や質、話題の選択、かかわり方は自分でコントロールできる部分です。
一度、相関図で周囲との関係や距離感を整理して、自分のできる範囲で人間関係をラクにとらえてみましょう。
苦手な人がいるからと憂鬱になるのは、過去の自分の記憶に囚われていた、というのが驚きでしたね。自分の中だけで苦手意識が膨らんで、憂鬱になっているケースも多いかもしれません。それにすべての人と平等な距離で人付き合いをする必要はなく、それぞれに見合った距離を保つことも、自分回りの人間関係を構築するうえで大切なことだそう。人間関係に悩んでいたら、まずは相関図を作ってみてはいかがでしょうか。