お話を伺ったのは……竹内和雄先生
兵庫県立大学准教授。教育学博士。公立中学校で20年、生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。2005年に起きた大阪府寝屋川市の事件をきっかけに携帯、ゲーム、ネット対策に取り組み、ネット問題を中心に教職員や保護者向け講演を年間80回以上こなす。
『こどもスマホルール 賢く使って、トラブル回避! 』(時事通信社)
著者:竹内和雄
価格:1,980円(税込)
ルールを守ったときはしっかり褒める「シール作戦」
――子どもにスマホを購入する前に、親子でルールを決めることが大切だと前回伺いました。しかし親子で話し合ってルールを決めたつもりでも、子どもが守れなくなってきた場合はどうしたらいいでしょうか?
竹内和雄先生(以下、竹内先生):「最初はルールを守れていたけれど、徐々に守れなくなってきた」という相談はよく受けます。すでにおわかりの通り、大人でもネットの誘惑に負けてしまうこともありますよね。これは早い段階で対処しないと、子どもがネット依存になりかねません。
わが子のスマホの見過ぎが心配で、購入前に決めたルールをしっかり守らせたいと思っているなら、ルールを守れた日にカレンダーにシールを貼っていく“シール作戦”をおすすめします。
そんな子どもだましな方法で効果はあるの? と半信半疑かもしれませんが、これは依存症対策でも使われている方法です。
【シール作戦のやり方】
- 家族全員が見える場所にカレンダーを貼る
- そこにできるだけわかりやすく具体的な目標を書く(たとえば、「動画は1日1時間まで」など)
- 達成できた日にはシールを貼る
- 達成できたら大げさに褒める
ここで大事なことは自分の状況が目視できることです。
そして週の半分達成できたら褒め、できなかった日には「×」をつけないこと。また、ご褒美を決めないことも大事です。ご褒美をあげてしまうと、ご褒美がないと守らなくなってしまいます。ただし、家族でケーキを食べるなどささやかなことがあるのは効果的です。その際も「しっかりルールを守れているね。すごいね」という声かけも忘れずに。
親子がwin-winの関係になれる「鬼ババ作戦」
――中・高生になると友だちと付き合いの中で、どうしても電話やメールの時間が増えてしまいます。テスト前や受験など他にすべきことがあるのに、スマホがやめられないときの対処法があれば教えてください。
竹内先生:子どもにも子どもの付き合いがあるので、あまりガミガミ言いたくない親御さんがほとんどでしょうが、言わないと勉強にも支障がでてしまいます。子どもによっては「友だちとの付き合いを上手に絶ちたいけれど、やり方がわからない」と悩んでいる子もいるのです。
そこで効果的なのが“鬼ババ作戦”です。お母さんにあえて「鬼ババ」になってもらうというものです。
たとえば、友だちとの電話中やビデオ通話中に「何時まで話してるのっ!」と横で大きな声を出してもらえば、友だちもそこで電話を切るでしょう。メールやチャットの場合は「最悪! お母さん怒ってるからごめん、そろそろ切るね」と中断します。これで大抵の友だちは、〇〇ちゃんのお母さんは厳しいと認識するでしょう。
――これは親子双方に得のある作戦ですね。
竹内先生:昔は帰宅後、友だちと連絡を取る方法は家の電話で話すしかありませんでした。しかし、今はSNSやアプリの普及により、親の知らないところで連絡がとれてしまいます。それも放っておけば無制限。子どもによっては「自宅では自分の時間を大切にしたい」という子もいるので、その思いに協力するには鬼ババ作戦はうってつけです。
他にも「フロリダ作戦」という方法もあります。これは「風呂で離脱=フロリダ」です。LINEなどのグループチャットを抜けるタイミングがわからないというときは、「お風呂に入るからそろそろ切るね」と言えば切り上げやすくなりますよ。親も「いつまでやってるの!」と思った際には「そろそろお風呂に入ったら」という声かけだけでも効果的です。
1週間に一度、親子の話し合う時間を作る「サザエさん作戦」
――スマホを子どもに持たせたあと、一度決めたルールは簡単に変えていいのでしょうか?
竹内先生:子ども自身も実際にスマホを使い始めると、塾や習い事があって曜日によって使える時間が違うことがわかってきますよね。子どもとルールを決めても、定期的に見直す機会は必ず必要ですよ。スマホを持ち始めた頃は、1週間に一度くらい見直して修正するとうまくいきます。
私は幼いころ、本ばかり読んでいる子どもでした。親から「目が悪くなるから」と何度注意されても隠れて読んでいるような子だったので、わが家では日曜の夜の『サザエさん』を終わった後は、親子で話し合う時間になっていました。
このように1週間に一度、スマホのルールなどについて、親子で向き合う時間を作ることが大切です。何もトラブルがなければ雑談でもいいのです。とにかく「サザエさんの後」ようにわかりやすい時間を親子で設定し、話し合う時間を設けておくとトラブル回避にもつながります。
ルールを見直す際には、子どもの言い分も聞いて一緒に文章化する。親として譲れないことも理由とともに伝える。そうやって毎週丁寧に話し合うことで、その子に合ったルールができますよ。
スマホを持ってからのトラブル回避に役立つさまざまな作戦を教えていただきました。どれもすぐに実行できそうな作戦ばかりでしたが、大切なのは親子で丁寧に話し合うことだと感じました。子どもと向き合い、話し合いを重ねることは根気のいることですが、子どもがトラブルを回避しスマホとうまく付き合っていくために、これらの作戦はぜひ取り入れたいですね。