教えてくれたのは……御堂直樹(みどうなおき)さん
東京医療保健大学教授。1965年生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業。東北大学博士 (農学)、CSCS(アメリカに本部を置く国際的な教育団体であるNSCAが認定するアスリート指導に特化した資格)。専門分野は、食品学、食品加工学、食品機能学。競技として、アメリカンフットボール、ボディビルディングを経験。ボディビルディングでは、2002年日本社会人大会優勝した経歴をもつ。
ダイエット中は“たんぱく質”の摂取量を増やすことがポイント
前回の記事では「食べないダイエットをすることで起こる3つのデメリット」について、ご紹介しました。
極端に食事量を減らすと、必要な栄養素が摂取できずに逆に太りやすくなってしまったり、健康障害や精神的ストレスを抱えてしまったりと、身体はもちろん、心にも悪影響を及ぼします。
ストレスを抱えながらのダイエットはなかなか続かないもの。ストレスを感じることなくダイエットを成功させるには、どうしたらいいのでしょうか?
御堂さんによると、たんぱく質の摂取量を増やすことが、ダイエットを継続するためにポイントになるとのこと。たんぱく質の摂取量を増やすと、うれしいメリットがあるのだそうですよ!
ダイエットのときにたんぱく質を摂りたい3つの理由
メリット1.ボディラインの崩れを防げる
御堂さん「ダイエットでは、食べる量を減らすことでエネルギー摂取量を減らすことになります。しかしこのようなダイエットをすることで筋肉が失われ、それに伴ってエネルギー消費量も減少します。その結果として、ボディラインの崩れや太りやすい体質への変化が起こるのですが、たんぱく質の摂取量を増やすことによって、これらの変化をある程度抑えられることが報告されています(1)。」
メリット2.空腹感を弱められる
御堂さん「たんぱく質は脂質や炭水化物に比べて満腹感が高い(1)、ということもポイントのひとつ。完全ではありませんが、ダイエット時の空腹感を弱めることもできます。」
メリット3.体脂肪として蓄積されにくい
御堂さん「たんぱく質は食後に熱として消費されやすく、体脂肪として蓄積されにくいと考えられています(2)。」
たんぱく質の摂取量を増やすことは、ダイエットを継続するうえで多くのメリットが得られるのですね!
とはいえ、たんぱく質を過剰に摂取するとカロリーオーバーにつながることも。たんぱく質の摂取量を増やしつつ、エネルギー摂取量を減らすにはどうしたらよいのでしょうか?
エネルギー摂取量を減らすときに注意したいこと
御堂さん「たんぱく質の摂取量を増やしつつ、エネルギー摂取量を減らすためには、脂質や炭水化物を減らす必要があります。脂質と炭水化物、どちらを減らしても効果があるため(3)、体質、好み、普段の食習慣などにより、何をどのように減らすかを決めればよいと思います。
しかし、いずれも健康のために重要な栄養素なので、片方だけを極端に減らすことはおすすめできません。
個人的な考え方かもしれませんが、日本人の場合は炭水化物の多い食品を好む方が多いので、脂質で減らす割合を多くしたほうがラクだと考えています。
炭水化物の摂取源の穀物は、食物繊維の摂取源としても重要な役割をもっています(4)。腸内環境を整えるためにも、炭水化物は極端に減らさないほうがよいでしょう。」
ダイエットを継続するために、体重減少のペースを考えよう
ダイエットを始めると、つい一生懸命になりすぎて短期間で体重を落とそうする方も多いのではないでしょうか?
御堂さんによると、体重減少のペースを考えることも継続するためのポイントになるとのこと。
御堂さん「ダイエット時に、どの程度のエネルギー摂取量を減らせばよいのかというと、一般的には理想的な体重減少のペースは、1週間に体重の1%以内だと言われています。
これは、ダイエット時に起きる筋肉の減少をできるだけ起こさないようにするためです。
たとえば、体重60kgの人であれば、1週間に0.6kg減らすのが理想的。この数字を達成するためには、普段の食事から1日あたり約620kcal減らす計算になります。
現実的には、この半分程度(上記の場合でいうと、1日あたり約310kca減らす計算)に抑えたほうが、ダイエットを継続しやすくなると思います。
極端な炭水化物制限をおこなうと、急速に体重が1~2kg減りますが、これは身体に貯蔵されていた炭水化物のグリコーゲンと、共存する約3倍量の水が減少するためです。体脂肪が減っているわけではないので、勘違いしないようにしましょう。」
短期間で無理に痩せようとするのではなく、健康的にダイエットをおこなうのが大切なのですね。まずは、たんぱく質を上手に食事に取り入れることから意識してみませんか?
次回の記事では「ダイエットに効果的なたんぱく質の摂り方」についてご紹介します。どうぞお楽しみに!
参考文献:
(1) Abete I et al., Nutrition Reviews, 68, 214-231, 2010.
(2) Tappy L, Reprod Nutr Dev, 36, 391-397, 1996.
(3) Ge L et al., BMJ, 369, m696, 2020.
(4) 青江誠一郎, 日本調理科学会誌, 49, 297-302, 2016.