「痩せたいからお米を食べない」は間違いだった…。炭水化物を抜いて体に起こる“3つの悪いコト”

心と体

2023.02.23

体重が気になり、痩せるためにお米やパンなど炭水化物は食べない! という方はいませんか? 一切食べないと体重が減りそうですが、実は炭水化物を食べないリスクはとても大きいと大妻女子大学家政学部教授の青江誠一郎先生は言います。炭水化物を摂らないことで何が起こるのか、詳しく教えていただきました。

広告

教えてくれたのは……青江誠一郎(あおえ せいいちろう)先生

青江先生

大妻女子大学・家政学部食物学科・教授。農学博士日本食物繊維学会 理事長。一般社団法人日本食物繊維学会副理事長。大麦の食物繊維とメタボリックシンドローム予防に関する論文にて、平成22年度日本食物繊維学会の学会賞を受賞。

糖質制限でこんな問題が起きている

1出典:stock.adobe.com

ダイエットや美容の問題から、炭水化物を抜いた食事をする方も多いかもしれません。炭水化物を抜くことで、血糖値が上がらず痩せられそうな気がしますが、こんな問題も出てくると青江先生は言います。

青江先生「糖質を制限してスタイルキープするつもりが、筋肉が減って、脂肪の行き場がなくなり隠れ肥満になったり、腸内環境が乱れて肌荒れしたり、血糖値はコントロールできても、腎臓や筋肉への影響が起きて、新生活習慣病になったりするなど、炭水化物を制限すると新たな生活習慣病の問題が出てきました。」

痩せると思っていたのに実は隠れ肥満や肌荒れ、腎臓や筋肉への影響が起こるとは驚きです。なぜ肥満になってしまうのでしょうか。

青江先生「炭水化物というのは、糖質と食物繊維の2つを含んだものになります。炭水化物が不足すると、糖質のエネルギーが不足しますから、体内のエネルギーが不足してきます。そうすると特に脳はグルコースが必要になりますから、筋肉を分解してグルコースを供給します。その結果筋肉が失われていくのです。
体重は減りますが、脂肪もしくは糖質の行き場がなくなって、それが筋肉の失われたところに蓄積します。これが隠れ肥満です。」

また炭水化物を摂らないことで、腸内環境も悪化するのだそう。

青江先生「炭水化物を摂らないと食物繊維の不足が起きますので、腸内細菌の餌になるものが不足します。そうすると腸内環境が悪化し、いわゆる善玉菌と呼ばれる菌が激減します。そうすると悪玉菌が増え、腸内毒素が増えて腎臓病や高血圧に繋がります。またインドールという腐敗物質が肝臓でインドキシル硫酸と呼ばれる物質に変わり、筋肉を分解して筋肉の萎縮も起きることがあります。」

炭水化物の代わりにたんぱく質を多く摂ることも問題があるのだそう。

青江先生「炭水化物を減らしてたんぱく質を過剰に摂ろうとしますと、より慢性腎臓病や高血圧、筋萎縮の問題が起きることがあります。」

食物繊維はどれくらい摂ればいいの?

2出典:stock.adobe.com

炭水化物を抜くことで食物繊維も不足することがわかりました。では日本人は食物繊維をどれくらい摂ればいいのでしょうか。青江先生によると、成人の場合は男性が21g、女性の場合は18g以上が目標値とのこと。

日本人の食物繊維摂取量の変遷

青江先生「1955年の日本人の食物摂取量は、22.5gもありました。ところが2018年を見るとかなり減っていて15gです。
減ったものの大部分は穀類です。以前は総食物繊維の44%を穀類が占めていましたが、現在は20%まで激減しています。日本人の食物繊維摂取量が減ったのは、まさに穀物の摂取量が減ったからです。」

日本人はどの食材から食物繊維を摂っているか

青江先生「日本人は総食物繊維摂取量のうち、寄与率が高いのはお米です。それほど高くはありませんが、お米を食べることで食物繊維を摂取できます。
日本人が食物繊維を増やそうと思ったら、米や穀物から取るのが有効だと考えます。」

青江先生によると、朝食に穀物を摂ることは、動脈硬化、糖尿病、腸の健康に対して有効であることは世界的に認められているとのこと。

青江先生「全粒穀物で絞って死亡率を見てみると、驚くべきことに、1日1食だけ全粒穀物を16gほど摂取することで、総死亡率が7%も下がることがわかっています。1日3食48gとると、16%も低下することがわかっています。」

発酵性食物繊維を摂ることが大切

3出典:stock.adobe.com

自分の腸内にいるいい菌を増やし、腸内細菌のバランスを整える発酵性食物繊維。

発酵食品と発酵性食物繊維は似ているように聞こえますが、発酵食品は微生物によって食物が発酵したもの。発酵性食物繊維とは腸の中で発酵するものを言い、短鎖脂肪酸などの人にとって有益な物質を作り出します。

発酵性食物繊維の発酵速度

青江先生「発酵性食物繊維には種類があり、発酵するスピードが違いますので、腸のさまざまなところで働きます。
ごぼうなど根菜に含まれるイヌリンは腸の手前の方で働き、じゃがいもや全粒小麦に含まれるレジスタントスターチは発酵時間が長いので、腸の奥の方で働きます。
腸の全体を発酵させることが大事なので、1種類ではなく、数種類の食物繊維を摂ることが重要です。」

通常の食生活で摂取できる発酵性食物繊維

青江先生「通常の食生活で摂取できる発酵性食物繊維を見てみると、押麦や大麦などに含まれているβ-グルカンはオートミールよりも多く含まれています。発芽玄米や全粒小麦などにも、アラビノキシランという発酵性食物繊維が含まれます。忘れてはいけないのが海藻類にもかなりの発酵性食物繊維が入っています。
また大麦に関しては、アラビノキシランやβ-グルカンの2種類の発酵性食物繊維を含んでいます。

大麦は日本でも米とともに非常に古くから作られ、庶民の食として定着していました。現在では炊きやすく加工された大麦の一種である「押麦」や「もち麦」を目にする機会もありますね。

この大麦には、肥満を防止する、排便を促し便秘を改善・予防する、血糖値の急激な上昇を抑える、コレステロール値を正常化する、腸内環境を整えるなどの優れた機能性があるのだそう。

大麦を1日に1食でも摂ると1日中血糖をコントロールできるとのことで、毎日食べるご飯の3割から5割ほど大麦にするといいそうですよ。

穀物を中心に食物繊維を摂ろう

青江先生によると、雑穀類、根菜類、豆類、海藻類の4種類の発酵性食物繊維を摂ることが重要とのことで、いつもの白米をもち麦ご飯や雑穀ご飯に変え、ごぼうなどの根菜類、豆類、海藻類を副菜に追加すると、発酵性食物繊維をしっかり摂ることができるとのこと。

炭水化物を一切摂らないのではなく、適度に摂ることが健康的に痩せるコツです。スーパーなどには白米に混ぜて炊くとおいしく食べられる大麦や雑穀米なども売られていますね。そういったものも食事に取り入れながら、食生活を見直してみてくださいね。

広告
saitaとは
広告

人気記事ランキング

ランキングをもっと見る