教えてくれたのは……船見敏子さん
株式会社ハピネスワーキング代表取締役。公認心理師。産業カウンセラー。
大手出版社で雑誌編集に携わっているときにカウンセリングを学び始め、2005年よりカウンセラーに転向。全国の企業などでの研修・講演などを含め、約1000社・約10万人のメンタルケアに携わっている。
『言い返せない人の聴き方・伝え方』
著者:船見敏子
価格:1,815円(税込)
発行所:日本能率協会マネジメントセンター
会話をリードしているのは「聴き手」
出版社で経営者や俳優、ミュージシャンなどの著名人を取材したのち、働く人のさまざまな悩みを聴く公認心理師として活躍している船見敏子さん。
およそ10万人のメンタルケアに携わっている「聴き手のプロ」船見さんによると、会話をリードしているのは、じつは話し手ではなく、「聴き手」なのだそうです。
「インタビューに限らず、普段の会話でも、『聴く』側がどうリアクションし、どういうメッセージを相手に送るかによって、方向性ががらりと変わります。
苦手な相手ほど『聴く』スキルを積極的に使うことで、会話の方向性も関係性も変化していくことが期待できるのです」
とはいえ、話を聴くのは簡単なようで、意外と奥が深いもの。受け身で聞いていても、相手との関係性がよくなることはほとんどないでしょう。
そこで船見さんがおすすめしているのが、「うなずき」の使い分けです。
「うなずきは承諾や同意を示すサインですが、それ以外にもさまざまな意味を持ちます。どううなずくかによって会話の展開が変わるほど、重要な行為でもあるのです」
今回は、会話が劇的に変化する「4つのうなずき」についてご紹介します。
カウンセラー直伝!話を聴くときの「4つのうなずき」
「、」のうなずき
相手の話の区切りで軽く首を縦に振るのが「、」のうなずきです。「一生懸命あなたの話を聞いてますよ」というメッセージをうなずきを通じて伝えることで、相手は安心して話しやすくなります。相手の話のペースに合わせて、ゆっくり話す人にはゆっくりと、早口の人なら早く首を動かすと、会話にリズムが生まれます。
「。」のうなずき
相手の話がひと通り終わったところで打つうなずきです。天井を見上げて、床まで視線を落とすくらいのイメージで、大きくうなずいてみましょう。「納得しました」「承知しました」「とても共感しました」という思いを伝えられます。オーバーアクションだ、恥ずかしいと感じるかもしれませんが、意外と相手からは不自然に見えていないそうなので、トライしてみましょう。
「!」のうなずき
文字通り、驚きを表すうなずきです。のけぞったり、前のめりになったりと、本当に驚いたときと同じようにリアクションしましょう。相手の話したいことを受け止めたというサインになり、話が広がるチャンスにもなります。
「?」のうなずき
会話の中で意味がわかりにくいことがあったら、すかさず行いましょう。小首をかしげたり、眉間に軽くしわを寄せたりすることで、話の腰を折ることなく、「ちょっとわかりにくいので、もう少し詳しく説明してほしい」というメッセージを伝えられます。
また、「?」のうなずきは、保留というニュアンスも伝えられます。たとえば、「私ってダメな母親ね」とママ友にいわれて、肯定も否定もしづらいようなときに「?」のうなずきをすると、「そんなふうに思っているんだね」とニュートラルに受け止めていることを伝えられます。
「話の聴き方」が人間関係を好転させる
船見さんは、「4つのうなずき」に加えて、次のようなコツも紹介しています。
- あいづちを打つ
- 相手が言ったことばをそのままそっくり「伝え返し」する
- 相手の要求や思いを「要約する」
「『聴く』ことは、相手のためだけでなく、結局は自分のためになります。自分がストレスを溜め込まないためにも役に立つのです。さらに、苦手な人との関係性に変化が現れるだけでなく、すでに良好な関係ができている人との仲も深まることでしょう」
人間関係を改善させるために必要なのは、なめらかなトークスキルではなく、「話を聴くこと」だったのですね。口下手な人も、「うなずく」というリアクションならきっと実行しやすいはず。ぜひ「4つのうなずき」を試してみましょう!