教えてくれたのは……船見敏子さん
株式会社ハピネスワーキング代表取締役。公認心理師。産業カウンセラー。
大手出版社で雑誌編集に携わっているときにカウンセリングを学び始め、2005年よりカウンセラーに転向。全国の企業などでの研修・講演などを含め、約1000社・約10万人のメンタルケアに携わっている。
『言い返せない人の聴き方・伝え方』
著者:船見敏子
価格:1,815円(税込)
発行所:日本能率協会マネジメントセンター
理不尽な思いをしたとき、すぐに言い返せますか?
全国の企業でメンタルケアについての研修・講演を行っている公認心理師の船見敏子さん。カウンセリングでさまざまな悩みを聞くなかで、「ダントツに多いのが、職場の人間関係に関する悩み」なのだとおっしゃいます。
職場をはじめ、子どもの学校のPTA活動やご近所付き合いなど、波長の合わない人とも日々顔を合わせる場面は、saita世代のみなさんにもよくあることだと思います。
もし苦手だと感じる人からきつい口調で責められたり、理不尽な思いをさせられたりしたら……。驚いたり、勇気が出なかったりして、ズバッと言い返せない方もいるのではないでしょうか。
「理不尽な目に遭っても言い返せないのは、あなただけではありません」と船見さん。言い返せないことには理由があるとおっしゃいます。その「言い返せない8つの理由」に、あなたも共感できるでしょうか。
あなたはどれに当てはまる?言い返せない「8つの理由」
1.立場が弱い
相手は、職場の上司や先輩、お客様など、「自分よりも何らかの点で立場が強い人」ではありませんか? こうした人に言い返すのは、とても難しいものです。
2.自分が悪いと思っている
「自分が悪いから厳しいことを言われても仕方ない」「自分に能力がないから叱られて当然だ」と考えることで、問題を処理して、ひとり耐えてしまうケースもあります。謙虚な人、自己肯定感が低い人は、この傾向が強いのだそうです。
3.人と争いたくない、人を傷つけたくない
平和主義で、人と争うことを避ける傾向が強い人も、言い返せない傾向があります。誰も傷つけたくないという思いは、自分が傷つきたくないという思いの裏返しでもあります。
4.嫌われたくない
常にニコニコしていて、ことば遣いもやわらかく、まわりから「いい人」と思われているタイプの人は、嫌われることを恐れ、叱ること・注意することが苦手な場合があります。また、やんわりとしか言えず、うまく伝わらない場合もあります。
5.自分の気持ちがわからない
過度なストレスにさらされ続けていると、自分を守るために感情を感じないようになることがあります。また、パソコンやスマホから情報の取り込みすぎることで脳が疲労し、感情が鈍ってしまうこともあります。
6.あきらめている
「この人は何を言っても変わらない」と思っていたり、相手や環境に期待していなかったりする場合、「言っても仕方がないから言わない」という選択をすることがあります。
7.傷ついてエネルギーがない
ストレスを受け続けると、心身のエネルギーが枯渇してしまいます。言い返すことはもちろん、人に相談する気力もなく、ひとりで悩みを抱え込んでしまうことも。
8.言い方がわからない
言い返すことができる環境でも、適切な言い方がわからずに言い返せない場合もあります。これに該当するケースは、意外と多いと船見さんは指摘しています。
戦わなくても、言いにくいことは伝えられる
船見さんは、「言い返せないこと」をネガティブにはとらえていません。むしろ、「言い返さないことで、あなたは自分を守ってきた」と肯定しています。
「言い返さないというのは、相手と同じ土俵に立たないということ。言い返して関係性が悪くなったり、時間をムダにしたり、ストレスを感じることがありません。これ以上のストレスを自分に与えないという方法で、これまであなたは自分を守ってきました。言い返さないことが最大の防衛手段だったのです」
そのうえで、「言いにくいことを伝えると、人間関係が変わる」とも船見さんはおっしゃっています。
「言い返すことには、“戦う”というイメージがあります。
しかし、戦わなくても言いたいこと、言いにくいことは伝えられます」
「理不尽なことに対する思いやあなたの大切な意見など、言いたいこと、言うべきことは言いにくくても言っていいのです」
では、具体的にどのように思いや意見を相手に伝えたらいいのでしょうか? 次回、船見さんがおすすめする「言いにくいことを伝える3つのステップ」をご紹介します!