“きょうだいゲンカの仲裁に疲れた親”が取り入れるとラクになる「5つのサイクル」

家族・人間関係

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2023.06.15

「もういい加減にして! 離れたらいいでしょ!」と毎日くり広げられる、きょうだいゲンカの仲裁にクタクタ……。上の子と下の子それぞれどのように対応するのがよいのか、悩んでいる方も多いのでは? 今回は、多くの自治体や民間団体が取り入れる子育て練習講座「ちはっさく」を実施してきた伊藤徳馬さんに、きょうだいゲンカの対応方法についてお話を伺いました。

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教えてくれたのは……伊藤徳馬さん

伊藤徳馬さん

茅ヶ崎市役所にて子育て相談・児童虐待担当になり、子どもへの対応方法を練習する講座を事業化。「市町村の児童虐待対応」や「簡易なペアレンティングの講座展開」など多くの講座・研修講師をするようになる。
 現在は、福祉の総合相談や計画を担当する部署に所属。プライベートの活動で、子育てを練習する講座「ちはっさく」を一般向けに実施。十数か所の自治体・民間団体が「ちはっさく」を事業化しており、今後も増加する予定。 著書に『子どもも自分もラクになる どならない練習』があり、この5月に最新刊『子どもも自分もラクになる どならない「叱り方」』を刊行した。

子どもも自分もラクになるどならない叱り方

子どもも自分もラクになる どならない「叱り方」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
著者:伊藤徳馬
価格:1,650円(税込)

きょうだいゲンカ、どうやって対応するのが正解?

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仲よく遊んでいて微笑ましい光景だなと眺めていたら、ささいなことをきっかけに勃発するきょうだいゲンカ。毎日のように続くと、とくに長期休みは親が参ってしまいますよね……。

筆者の家でも、兄が弟にちょっかいを出すことから始まり、弟が「やめて」と言ってもやめず、きょうだいで口げんかに。そのうち弟が泣いて、最後に私が「またやってるの!」と爆発することが大体のオチです。そこで伊藤さんに、上手に対応する方法を教えていただきました。

伊藤さん「子どもたちが何を思っているのか、よくわからないこともありますよね。子どもも一人格として捉えて、まずは単純に気持ちを聞くのがいいのかなと思います。

お兄ちゃんを呼んで『どうして弟に触りたいのかな?』と、いやみな言い方ではなくて単純に素朴な疑問として聞いてみて、そのちょっかいに意図があるのかを確認します。

次に『お母さんは、弟が楽しそうにしているところまではいいと思って見ているけれど、最後は泣いちゃってるよね。それについては、お兄ちゃんはどう思う?』と、お兄ちゃんなりの考えを聞いたら『そうなんだね。わかった』で、お兄ちゃんは一旦終わりです。

そのうえで、今度は弟にも同じように『どういう経緯で口げんかになるの?』『弟的には、どこまではアリで、どこからが嫌なの?』『お兄ちゃんに直してもらいたいところは、どこかな?』と聞いてみます。」

練習することがポイント

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伊藤さんによると、きょうだいそれぞれに話を聞いた後には練習して、次回に備えておくことがポイントだそうです。

伊藤さん「そこで、お母さんとお兄ちゃんと弟と3人で『これからみんなが楽しく過ごすためにどうしたらいいのか、一緒に考えようね』で話し合います。
次に、『今度からは、じゃれ合うところまではいいけれど、弟が本当に嫌だと思ったらやめてって言うから、そうしたらもうお互いに手は出さずに何もしないで終わりにするよ』など、具体的な行動を決めます。

ここからが大事なポイントになるのですが、『じゃあ、練習しようか』で、練習をしてみますみんなで考えたことを練習して実践してみるんです。

1回やっても、そんなにうまく解決することはないかもしれません。ですが、うまくいかなかった場合でも1回チャレンジしたことをほめて、『次からどうしたらいいのか、また3人で考えてみよう』と、一緒に考えます。このくり返しです。

今の流れのように、
1.聞く
2.一緒に考える
3.具体的な行動を決める
4.実際に練習してみる
5.ほめる

というサイクルが効果的だと思います。

とはいえ、解決策をいつまで経っても親のほうから提示し続けるのは大変ですよね。子どもが自分で考えて解決して、その行動を継続できるようにするためには、少しでもできたところやチャレンジしようとしたところを親御さんがほめていくことが大切です。

即効性はないかもしれませんが、中高生になってさまざまな問題が起きたとしても、“このサイクルを回していく”ことを意識できたら、親御さんもお子さんもみんながラクになれるのではないでしょうか。」

いつでも子育てはリカバリーはできる

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子どもが大きくなるにつれて、「自分の子育ては間違っていたのかな」と不安に思っている声を耳にすることもあります。リカバリーできる方法はあるのでしょうか?

伊藤さん「リカバリーはいつだってできると思いますよ。劇的に変わることはなくても、よい方向に変えていくことはできるんです。

もちろん小さなころから肯定的なコミュニケーションを取っていたほうが、そもそも親子でそのやりとりに慣れているので、お子さんが中高生になって反抗期を迎えたときに対応はしやすいと思います。

一方で、そういった対応をせずにお子さんの反抗期を迎えて、コミュニケーションがうまくいかなくなって困っている親御さんもいますよね。
それでも、前述のサイクルのような対応を始めてからは、中高生のお子さんが『なんかお母さんが急に変わっておかしい』みたいなことを言いながらも、結局ほめられたらうれしそうな顔をしていたという声や、『青カード(伊藤さんが子育て練習講座で使用する子どもに伝わりやすい言葉・行動を指すカード)でなるべく話すようにしたら、トラブルは起き続けはするけど少し減りました』という声もあります。

亀裂が入った親子関係を修復する、子どもが曲がって育ってしまったから正す、という考えではなくて、“日ごろのコミュニケーションをちょっと良質なものにする”と捉えるなら、いつでも始められるし、その影響は返ってくるのではないかと思いますよ。」

今できているところに目を向けて

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最後に、saita世代の子育て中の親御さんに向けて、メッセージを伺いました。

伊藤さん「皆さん真面目に育児されているので、できていないところに注目してしまいがちかもしれませんが、意外とうまくいっているはずなんです。少なくとも、お子さんは成長していますし、生意気な口をきくようにもなっていますよね。

『自分は、これができていない』『もっと早いうちから、こういったコミュニケーションをとっておきかった』と反省する方も多いのですが、反省するよりかはできているところを見たほうがよいと思います。おそらく、これまでも結構できていたはずですし、今もうまくいっている部分もたくさんあるはずです。

すでにできているところに目を向けながら、親子のコミュニケーションも練習することで、よりよいものに変えていけるということを心に留めておくとよいと思いますよ。」

3回にわたって、伊藤徳馬さんへのインタビューをお届けしました。
伊藤さんがおっしゃるように、自分ができていることを認めてあげながら子どもと向き合い、少しずつでも親子のやりとりがプラスの方向に変化していけるといいですね。

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著者

shukana

shukana

小学生、幼稚園児の男の子のママ。出産前まで紳士服業界に携わり、TES(繊維製品品質管理士)の資格を取得。 暮らしをより楽しく、よりラクに過ごすための方法を日々模索中です。

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