自己肯定感の低さは幼少期の体験がキッカケに。自己肯定感が高まる「すべてうそ」の考え方

家族・人間関係

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 自己肯定感の低さは幼少期の体験がキッカケに。自己肯定感が高まる「すべてうそ」の考え方

2023.11.11

自己肯定感が低い、自分を好きになれないという悩みを持つ人の中には、どうしてそう感じてしまうのか、原因がわからない場合もあるかもしれません。これまで6千人もの相談を受けてきた心理カウンセラー古宮昇先生によると、その原因の一つは幼少期の出来事にあるそうです。詳しくお話を伺いました。

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教えてくれたのは……古宮昇(こみやのぼる)さん

古宮昇先生

神戸市にあるカウンセリング・ルーム輝(かがやき)代表。心理学博士・臨床心理士・公認心理師。
前大阪経済大学 人間科学部教授。前ニュージーランド国立オークランド工科大学心理療法学大学院客員教授。
カウンセラー歴は、日・米・ニュージーランド通算28年間以上。来談者数はのべ約6000名を超える。
著書は『プロカウンセラーがやさしく教える 人間関係に役立つ傾聴』など多数。

子どもの頃に信じてしまった間違った信念

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――前回のお話で、人と自分を比べて達成不可能な目標を自分に課している人が多いということを伺いました。できない自分を否定するのではなく、今のままの自分を認めて、自分に優しくすることがまずは大事だと教えていただきましたが、自分自身に優しくしても自己肯定感が上がらないという場合は、他にも原因があるのでしょうか。

私たちが、自分を認めることができない、自己肯定感が低い、自分が好きになれないということの原因には、子どものころに親やまわりの大人から受けたネガティブなメッセージを信じ込んでいるということがあります。辛く苦しい思いをしたときに決めた信念を、未だに信じ続けてしまっている方が非常に多いのです。

――子どもの頃のネガティブな経験が原因になっているということですか?

私のクライアントさんのお話です。そのクライアントさんは、子どもの頃、文章を書く趣味があるお父さんから、「これ、どう思う?」と作品を見せられたそうです。お父さんのためになにか良いことを言わなくてはと思い、がんばって感想を言いました。するとお父さんは、「その程度のことしか言えないのか」と言いました。

そのクライアントさんは、50代になってもそのことを引きずっていて、「私は、どんなときも人から期待されることを言わなければならない。変なことを言ってはならない。相手をがっかりさせてはならない。怒らせることを言ってはならない」という思いを強く持っていました。

――子どもの頃の、お父さんのたった一言が50代になるまで影響するんですか?

過去に受け取ったメッセージや自分が感じたことをずっと信じている人が多いので、その方は、50代になるまで人付き合いがしんどくて生きづらいままだったんです。どんな方にも、「内なる傷ついた子ども」がいるんです。

自分を否定するメッセージは“すべてうそ”

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――どうしたらいいのでしょうか。

ここからが大切です。そのときのお父さんにとっては、確かに「その程度のこと」だったのかもしれません。でもそれは、そのときのお父さんの気持ちということだけなんです。クライアントさんがその瞬間に受け取ったメッセージは、今はもう本当ではありません。そして、今まわりにいる人たちは、それを言ったお父さんではない、ということを理解してください。

――信じたメッセージが、全ての人からという受け取り方になってしまうんですね。

過去に受け取った自分を否定するメッセージは、全てうそなんです。「私はダメな子だ」とか、「そのままの自分ではダメだ」というメッセ―ジは、そのときのあなたが信じてしまったことで、すべて勘違いです。みなさんに、まずそれをわかってほしいなと思います。

――子どもの頃に親に怒られたり、否定されたりした経験は誰にでもあると思います。でも、その瞬間に自分がダメだと信じ込み、その後もとらわれてしまうというのはかなり衝撃的です。

悲しいことですが、虐待を受けて命を落とすお子さんのニュースを目にします。実際にあったニュースでは、虐待を受けていながら、「お母ちゃん許して、良い子にするから」と言っていた子の話を聞き、私たちは胸を痛めます。常識的に考えれば、その子が悪い子だから虐待されたわけではないですよね。親のほうが問題を抱えていたということがわかります。でも、その子が生き延びていたとしたら……。「私が悪い子だから、お母ちゃんはごはんをくれないんだ」と信じ続けていくのです。

大事な子どもに接するように自分に接する

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――子どもは親から言われるとそう感じてしまうものなんですね。

このニュースを見て、「あの子が殺されたのは当然だ」と思う人はいません。ところが、これが自分のことになると、「私がだめな子だから、お母さんは愛してくれなかったんだ。こうなったのは当然だ」と本気で信じるんです。
しかし自分が悪い子だから愛されなかったという考えは勘違いです。もし、親がそのままのあなたを愛してくれなかったとしたら、それはあなたの問題ではなく、親の問題です。あなたは何も悪くないんです。

――多くの人は、その傷を抱えて大人になっていくのですね。過去のネガティブなメッセージに未だにとらわれている人は、どのように考えたらいいでしょうか。

誰もが、大なり小なりの傷を抱えています。その自分自身に対して、ぜひ、大事な子どもに接するように接してあげてほしいんです。あなたが受けた自己否定の全メッセージは、全部相手の問題です。あなたの問題ではないのです。そのことをわかって、自分に優しくしてください。そこが非常に大事なスタートとなります。

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自分の中に傷ついた子どもがいるというお話、いかがでしたか? 幼少期に持ってしまった間違った信念が、大人になってからも人間関係や生き方に関係しているとしたら……。その根本の原因をケアすることで、今感じている生きにくさからの解放につながるのではないでしょうか。次回も、自己肯定感を高めていくお話です。

【心理学博士 古宮先生さんインタビュー連載】

第1回多くの人が勘違いしている「幸せな人生」とは【心理学博士から学ぶ幸せな生き方】
第2回
“自己肯定感を下げるもの”で溢れる世の中で人と比べず生きる方法【心理学博士から学ぶ幸せな生き方】
第3回
:(当記事)自己肯定感の低さは幼少期の体験がキッカケに。自己肯定感が高まる「すべてうそ」の考え方
第4回
【11月15日公開予定】:「人に与えたものは返ってくる」のべ6千人の相談を受けた心理学博士が語る“自分を好きになる2つの方法”
第5回
【11月19日公開予定】:「あなたが幸せならまわりも幸せになる」6千人の相談を受けたカウンセラーが“40代女性に伝えたいこと”

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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